これから生活相談員として働く方の中には、サービス担当者会議(担当者会議)という言葉を初めて耳にする方もいらっしゃるのではないのでしょうか?
私はデイサービスとショートステイの生活相談員として10年近く働いています。初めて担当者会議に参加したときは、何をしたらよいのかわからずただその場にいるだけ、という状態でした。今考えると、何となくその場をやり過ごしていたように思います。何の価値提供もできていませんでしたね…。
そこでこの記事では、ただ出席しているだけの担当者会議にならないように、担当者会議を価値あるものにするためのポイントを3つに絞ってご紹介したいと思います。
takuma(@takuma3104 )
生活相談員(社会福祉士・介護支援専門員)。
デイサービスとショートステイの「生活相談員」という仕事を10年以上続けています。
このサイト「生活相談員ラボ」では、「現役の強みを生かした、現場感覚のある情報発信」をコンセプトに、生活相談員をはじめたばかりの人やこれから生活相談員になる人の役に立つ記事を書いています。
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サービス担当者会議って何?
サービス担当者会議(担当者会議)とは、ケアマネジャーがケアプランを新規作成したとき、ケアプランを変更するとき、介護保険の更新認定を受けたとき、要介護認定の区分変更をするときに行われる会議のことです。
利用者、家族、担当ケアマネジャー、サービス事業者などの関係者が集まって、ケアの方針について話し合います。
サービス担当者会議の3つのポイント
下準備をしよう
担当者会議で生活相談員は、「利用者のサービス利用中の様子を聞かせてほしい」とケアマネから尋ねられることが多いです。
このとき、何も準備をしないでいくと何も答えられなかったり、その場を取り繕おうと適当なことを言ってしまう恐れもあります。(←絶対ダメ!)
ですので、利用者についてわからないことがあればあらかじめ確認しておきましょう。
実際にケアを提供している介護スタッフや看護師から、あらかじめ話を聞いておきましょう。
利用者のADLや日常の様子は、生活相談員よりも直接ケアに関わっている介護スタッフの方が把握していますので、事前に確認をしておきましょう。
このとき、支援経過記録やモニタリングシートなどといった書面でADLや日常の様子が確認できるものがあるとしても、それはそれとして、相生活談員が直接介護スタッフから話を聞くことが重要です。
なぜなら、記録だけでは利用者の様子がわからないからです。
記録はしょせん記録です。
それ以上を求めてはいけません。
必要以上に丁寧な記録を求めてしまうと、その分時間を費やす必要が出てきます。そうすると、その分利用者の直接ケアに費やす時間が減ってしまいます。
なので、記録は必要最低限に。
その分、介護スタッフとコミュニケーションをとって、血の通った情報をもらいましょう。
しかし、介護スタッフからの情報をそのまま鵜呑みにするのも、それはそれで注意が必要です。
介護スタッフから聞いた内容を、そっくりそのまま担当者会議で伝えるのはNGです。
言われたことをただ伝えるだけなら、担当者会議に生活相談員が出席することの意味がなくなってしまいますよね。
生活相談員はただのメッセンジャーではありません。
その情報が正しいのか客観的に吟味して、持っていきましょう。
例えば、介護スタッフから利用者のAさんについて「最近食べこぼしが多くなってきた」という情報を得たとします。そして、スタッフから加えて「エプロンを持ってくるようにしてください」と言われたとしましょう。
この場合、「最近食べこぼしが多くなってきた」という事実は必要な情報ですが、「エプロンを持ってくるようにしてください」はスタッフの主観です。
スタッフはAさんのためを思って言ってくれているのかもしれませんが、Aさんは「エプロンなんてしたくない」と思っているかもしれません。またAさんの家族は、「大のおとななのにエプロンをつけてほしいだなんて」と嫌な気持ちになるかもしれません。
得た情報に対して、生活相談員の視点というフィルターを通して、必要な情報と不必要な情報の取捨選択をしましょう。
リスクを伝えよう
担当者会議は、普段なかなかお会いできない利用者の家族と話のできる絶好のチャンスです。
普段会えない家族とはコミュニケーションがおろそかになり、利用中に何かあったときに誤解が生じやすいもの。誤解からクレームに発展することもしばしば起きます。
そこで担当者会議の場を活用して、利用中に起きる可能性のある様々なリスクについて説明しておくことをおすすめします。
具体的には、利用中の転倒・ケガのリスクについて、きちんと説明をしておきましょう。
家族は、「サービス利用中はスタッフが見ていてくれるのだから、きっと安全に過ごせるだろう」と考えがちです。
「そんなことはない」ということを、担当者会議できちんと伝えておきましょう。
人は必ず転びます。「サービス利用中は絶対に転ばないし、ケガもしない」なんて安全神話はあり得ません。このことをあらかじめ伝えておきましょう。
転倒・ケガを100%防ぐ方法は、動かないようにガチガチに拘束しておくことしかありません。(もちろん、そんなことはしませんが…)
そうでもしない限り、転倒・ケガのリスクは誰しもあるということを理解してもらいましょう。
クレーム対応って本当しんどいんです。できることなら避けたいですよね。
クレームの予防策として、生活相談員はリスクマネジメントの視点を常に頭に入れておきましょう。
担当者会議の機会を利用して利用者の家族とリスクについて共通認識を作っておくことは、クレーム予防にとても効果がありますので、ぜひ意識してみてください。
提案をしよう
わたしたちは、ケアマネジャーの作成したケアプランに基づいてケアをしています。しかし、このケアプランで、利用者のニーズがどれだけ把握できるでしょうか?
ぶっちゃけ、わたしは把握できません。
わたしは、「ケアプランって形だけのアリバイ文書に過ぎない」と思っています。
それを作成しているケアマネジャーだって、毎月1回の訪問だけでどこまで利用者を理解してニーズを把握しているのか、怪しいものです。
なので、ケアマネやケアプランからニーズを把握しようなんて、思わない方がいいです。
月に1回自宅を訪問しているケアマネより、毎週顔を合わせているデイサービスのスタッフ方が、よっぽど利用者のことを把握しています。
そうはいっても、ケアプランがないことには利用者を支援することができませんので、ケアマネに利用者のことを把握してもらう必要があります。
ですので担当者会議では、利用者のことをケアマネにたくさん教えてあげてください。
家族も同席していれば、家族にも教えてあげてください。
そして自分の事業所で、利用者のニーズに対して何を提供できるかを提案しましょう。
例えば、『週に1回デイサービスに通っているBさん。家では物静かで家族とはほとんど話をしない。でも、デイサービスに来ると顔なじみになった方ととても楽しそうに話をしている。先日の帰り際、スタッフにBさんから「もう帰る時間。今度来るのはまた1週間後か。長いね」とボソッと言葉がこぼれることがあった。』
というようなことを、担当者会議のときに伝えてあげてください。
利用者の気持ちを代弁して、こうしたらもっとよくなりますよ、ということを家族やケアマネに提案しましょう。
この場合、デイサービスの利用日の追加を提案できますね。
関係者が集まる担当者会議の場を有効に活用して、自分の事業所で何ができるかを提案することで、利用者にとっての新しい価値を作ることができます。
まとめ
生活相談員の役割は、自社サービスと利用者、家族、ケアマネをつなぐことです。つなぐことで、価値を生み出します。どうつなぐかが腕の見せ所です。
担当者会議は、ケアの方向性を確認、共有する場であると同時に、生活相談員にとってはリスクマネジメントの場であり、提案の場です。
有効に活用して、よりよくサービスを利用してもらえるようにしたいですね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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