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【2024年度介護報酬改定】ショートステイの60日ルールについて解説

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2024年度の介護報酬改定で、ショートステイでは新たに60日ルールというものができました。

ここでは、そのショートステイ60日ルールについて解説していきます。

この記事を書いた人

takuma@takuma3104

生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)。

デイサービスとショートステイの「生活相談員」という仕事を10年以上続けています。

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ショートステイの60日ルールとは?

ショートステイの60日ルールとは、2024年度介護報酬改定で新たにできたルールのことです。

今までのショートステイでは、連続利用が30日を超えると介護報酬から1日30単位減算されるというルールでした。このルールを30日ルールといいます。

それが2024年度からは、新たに60日を超えた時点でさらに減算されるというルールへ変更されています。

ショートステイの30日ルールとは?

先ほど出てきたショートステイの30日ルールについて、解説を補足します。

ショートステイに連泊する場合、最長で30日間泊まることができます。逆を言えば、ショートステイは最長30日間しか連泊できないということです。

ですが、どうしても長く泊まりたいってこともありますよね。そういった場合はどうすればいいのでしょうか?

基本的にショートステイの連続利用は30日までですが、特例として30日を超えて利用することができるようになっています。

たとえば、特養などの施設入所待ちのためにショートステイを利用しているという場合は、その旨を役所へ伝えることにより、特例として認めてもらうというような仕組みです。

連続30日を超えてショートステイを利用する場合、31日目の利用は介護保険を通さずに自費での利用となります(通常1〜3割負担のところを10割負担)。

32日目以降はまた介護保険を通して利用することができますが、連続30日を超えての利用のため30単位/日 の減算となるわけです。

利用する側としては1日30単位安くなるのでいいですが、ショートステイ事業所側としては基本報酬が下がってしまうので、できることなら30日以内の利用に抑えたいところですね。

60日ルールの減算額は?

60日ルールでは連続利用が60日を超えると、30日ルールによる30単位/日 の減算に加え、さらに減算されてしまいます。

たとえば、単独型というショートステイのタイプで要介護3の利用者の場合、61日目からは30日ルールでの30単位/日 減算に加えて、さらに15単位/日 が減算されます。

合計すると、基本報酬から1日につき45単位も引き下げられてしまうわけですね。

60日ルールができた理由

ではなぜ60日ルールはできたのでしょう?

60日ルールは、ショートステイの長期利用を適正化するためにできました。

厚生労働省の調査によりますと、ショートステイ事業所のおよそ72%が30日以上の長期利用者を受け入れているそうです。

厚生労働省はショートステイを、利用者が一時的にお泊まりをすることによって自宅での生活を続けられるようにするためのサービスであると捉えています。

ショートステイを長く利用するという方法は、厚生労働省が本来意図している利用方法ではありません。ですから、長期利用については介護報酬を減算し利用しにくくすることで、本来の利用方法をすすめていきたいというわけです。

では、この60日ルールによって本当に長期利用は適正化されていくのでしょうか?

60日ルールで長期利用が適正化されない2つの理由

残念ながら、この60日ルールによってショートステイの長期利用が適正化されることはありません。

その理由は2つあります。ひとつはショートステイ以外の代替サービスがないこと、もうひとつはショートステイへの減算は長期利用の抑止力にならないことです。

ひとつずつ解説していきます。

ショートステイ以外の代替サービスがない

30日ルールによってショートステイの長期利用が適正化されない理由、ひとつめはショートステイ以外の代替サービスがないことです。

ショートステイを長期利用している人は、ショートステイを積極的に利用したくてしているわけではありません。他に方法がないため、やむを得ずショートステイを長期利用しています。つまり、ショートステイ以外にサービスの受け皿があれば、ショートステイを長期利用しなくても済むわけです。

ショートステイを長期利用する理由として多いのは、特養入所までの待機場所として利用するケースです。ということは、特養の入所待ち問題が解決されれば、おのずとショートステイの長期利用も適正化されます。

特養に限らず、老健やサ高住などといった入所施設が受け皿となることも考えられるでしょう。ですが、実際はそういったショートステイ以外のサービスが受け皿とならないため、やむを得ずショートステイが受け皿として機能しているというわけです。

ですから、ショートステイの長期利用の介護報酬を減算しても、それにより長期利用が適正化されることはありません。それよりも、本来受け皿となるべき施設サービスをしっかり機能させるようにすべきでしょう。

ショートステイへの減算は長期利用の抑止力にならない

30日ルールによってショートステイの長期利用が適正化されない理由、ふたつめはショートステイへの減算は長期利用の抑止力にならないことです。

ショートステイの事業所は、長期利用者を好き好んで受け入れているわけではありません。ショートステイの事業所は、あくまでもケアプランに基づいてサービスを提供しているだけです。ですから、長期利用を抑制したければショートステイ側ではなく、ケアマネ側に何かしらのペナルティを作る必要があります。

ですが、ショートステイ長期利用のケアプランを作成してもケアマネにペナルティはありません。長期利用を計画する側にペナルティはないのに、受け入れる側であるショートステイにはなぜか減算というペナルティがあるわけです。

いくらショートステイにペナルティを課したところで、それとは無関係に長期利用プランは作られていくわけですから、ショートステイへの減算は抑止力になりませんよね。

さらに言及すると、ケアマネが長期利用のケアプランを作るためには、その旨を役所へ報告することになっているわけです。そして、役所の承認を得てケアプランが作成されます。つまり、ショートステイの長期利用に関しては、保険者である役所も認めているということです。

それなのにペナルティを受けるのはショートステイだけというのは、仕組みとして不十分であると言わざるを得ないでしょう。

いくらショートステイの介護報酬を減らしたところで、ショートステイの長期利用は減りません。長期利用を適正化するのなら、ショートステイにペナルティを課すのではなく、ケアマネジャーや自治体に利用抑制のためのルールを作るべきではないでしょうか。

まとめ

ショートステイが、「特養に入りたくても入れない」というような介護保険の法制度からあふれ出てしまった人たちの受け皿として長期利用を受け入れているのは、紛れもない事実です。

国はそれを本来の利用方法に適正化したいという考えのもとで、今回の改定でショートステイの60日ルールを新設しました。

たしかにショートステイの長期利用は、国が本来想定していた利用方法ではないかもしれません。ですが、ショートステイが長期利用できなければ現在の生活が成り立たなくなってしまう人は、一定数いるのではないでしょうか。

そういった人たちの受け皿にショートステイがなっているという事実を、国は逆に評価してもいいんじゃないのかなって思います。ショートステイが担っている社会のセーフティネットとしての機能を、もっと評価してほしいです。

それが今回の介護報酬改定では、減算という形での評価でした。ちょっと残念な改定だったと感じました。

今回の報酬改定を受け、介護保険制度は今後どうなっていくのでしょうか。引き続き注視していきたいですね。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

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