ショートステイにおける緊急短期入所受入加算を算定する際のポイントについてまとめました。
takuma
生活相談員(社会福祉士・介護支援専門員)。
デイサービスとショートステイの「生活相談員」という仕事を10年以上続けています。
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うちのショートステイでも、この緊急短期入所受入加算はたまに算定することがあります。利用者を緊急で受け入れたとき、追加で算定できるのはうれしいですが、算定要件が結構ややこしいんですよね。
わたしの勤務するショートステイでは、以下のポイントを押さえて監査も問題なくクリアしていますので、その辺は信頼していただけると思います。ただ、監査員の判断は地域によって違いがありますので、注意は必要です。あくまでも“わたしの勤務先のある地域の場合”という前置きが入りますので、あしからず。ひとつの例として参考にしていただけると嬉しいです。
緊急短期入所受入加算とは?
緊急短期入所受入加算とは、「あらかじめ計画的されていないショートステイを緊急で利用した場合」に算定できる加算です。最長で連続14日、1日90単位を算定できます。
サービス提供体制強化加算などの加算と違って、あらかじめ保険者に算定の届け出を出しておく必要はありません。緊急でショートステイを利用する人がいて、事業所が一定の要件を満たせば算定してよい加算です。
加算の算定要件は以下の5つです。
居宅サービス計画に計画されていない緊急的な受け入れであること
担当ケアマネジャーが緊急の必要性及び利用を認めていること
利用の理由、期間、受け入れ後の対応を記録すること
緊急利用を希望している方の受け入れが困難な場合は、別の事業所を紹介するなど適切な対応をとること
受け入れ後の適切な介護の方策について、担当ケアマネジャーと連携し相談すること
これだけでは、ちょっと漠然としていてわかりづらいですよね。具体的に何をどうしたら算定できるのか、疑問が残ります。次は、それぞれの加算要件の中身を掘り下げて説明したいと思います。
居宅サービス計画に計画されていない緊急的な受け入れであること
“居宅サービス計画に計画されていない”とは
ここで言う“居宅サービス計画”とは、“ケアプラン第6表”、つまり、“サービス利用表(サービス提供表)”のことを意味しています。
“居宅サービス計画書の第2表”のことではありませんので、注意が必要です。
この加算は新規の利用者だけでなく、すでに利用している利用者も対象になります。もしここで言う“居宅サービス計画”が、“居宅サービス計画書第2表”のことを指しているのであれば、すでに利用している利用者は、“居宅サービス計画書第2表”に計画されているわけです。ですから、緊急の受け入れでも「あらかじめ居宅サービス計画に位置付けられているよ」となってしまい、この加算を算定することができない、という論理上おかしなことになってしまいます。ですから、この場合の“居宅サービス計画”とは、“サービス利用表(サービス提供表)”のことを指す、という解釈になります。
“緊急的な受け入れ”とは
ここで問題になってくるのが、“緊急”の解釈です。つまり、いつまでに依頼を受けたものが緊急と判断できるのか、ということです。当日か、1日前か、2日前かといったことですね。答えは、「決まってない」です。
いつからが緊急でいつからは緊急でないというような線引きはされていませんので、算定する側の判断に委ねられると解釈できます。ただし、1週間前に急きょ受けた依頼を緊急として算定するようなやり方は、やはり無理があると思います。常識の範囲内であてはめていく、といったところなのでしょう。
ちなみに、わたしのショートステイで緊急短期入所受入加算を算定したケースは、
主介護者が急に入院してしまった
急きょお葬式の予定が入った
台風などの災害のため、自宅で生活できなくなった
といったものがあります。
担当ケアマネジャーが緊急の必要性及び利用を認めていること
ケアマネジャーから急なショートステイの依頼があったときには、ショートステイの事業所側から「緊急短期入所受入加算をとりますね」と伝えればOKです。「ダメです」と言って認めてくれないケアマネはほとんどいないですね。
ケアマネの事業所がお休みの場合などで、家族がケアマネを介さず直接ショートステイの事業所へ依頼をしてきた場合には、後日その旨をケアマネへ報告して「緊急短期入所受入加算をとる」ことを伝えます。
まぁほとんどないですが、一度だけ、ケアマネに「何で勝手に(ショートステイを)受けたの?」とクレームをもらうことがありました。ケアマネの事業所がお休みだったので、家族もショートステイ事業所に連絡してきたわけなのですが…。それ以来、ショートステイの契約時には「もし急な利用の依頼をご家族様から頂いたときには、お受けしてもよろしいですか?」とケアマネに一言確認するようにしています。
利用の理由、期間、受け入れ後の対応を記録すること
急な利用となった理由、いつからいつまでの期間を算定したか、緊急受け入れをした後の経過を記録しておけばOKです。
緊急短期入所受入加算の算定日数は、原則として受け入れた日から起算して7日以内ですが、やむを得ない事情があり受け入れた日から起算して7日以内に適切な介護の方策が立てられなければ、14日を限度に算定することができます。
ですので、7日を超えて算定する場合は「ショートステイに代わる他の方法も検討したけど、他に適切な方法がなかったのでやむを得ず引き続きショートステイを利用している」という記載をしておくと、監査のときに安心です。
変更前後の居宅サービス計画を保存しておく
その人が当月にショートステイを利用していた場合、あらかじめもらっていた提供表は破棄せずにとっておきます。
そうすることで、新たにショートステイが追加になったということを証明できるからです。
緊急利用を希望している方の受け入れが困難な場合は、別の事業所を紹介するなど適切な対応をとること
これ、ほとんど無視していいです。正直言って意味不明です。なぜショートステイの事業所側が別の事業所を紹介しなければならないのでしょうか?まぁ、同一法人の別事業所とかならわからなくもないですが。いずれにしても、あまり意味のない算定要件だと思ってます。
受け入れ後の適切な介護の方策について、担当ケアマネジャーと連携し相談すること
緊急で利用者を受け入れて以降も、ショートステイの利用日数についてやショートステイを退所した後の生活に支障がないかなどについて、ケアマネジャーと連絡を取り合う機会があると思います。その内容を記録に残しておけばOKです。
その他
2020年6月1日付で、厚生労働省から介護報酬の特例ルールが算定開始となりました。
これによりショートステイは、1ヵ月のサービス提供日数を3で割った数(端数切上げ)の日数分、緊急短期入所受入加算の算定が可能となりました。
これはあくまで特例となり、利用者からの同意を得ていれば、利用の緊急性の有無を問わずに緊急短期入所受入加算が算定可能ということになります。