介護保険には「ショートステイ」という在宅介護サービスがあります。このショートステイというサービス、他の在宅介護サービスとの大きな違いがあります。それは、「自ら利用したくて利用している人がほとんどいない」ということです。実際にわたしの働くショートステイでも、自分から泊まりたくて泊まりに来ている人は限りなく少ないです。多くのご利用者は、家族に言われて渋々泊まりに来ているというのが現実です。
ここでは、そんなショートステイの実態についてご説明したいと思います。
takuma(@takuma3104 )
生活相談員(社会福祉士・介護支援専門員)。
デイサービスとショートステイの「生活相談員」という仕事を10年以上続けています。
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ショートステイとは?
ショートステイとはいったいどんなサービスなんでしょう?
ショートステイは、ご自宅で暮らしている人が一時的にお泊りすることができる介護サービスです。日中も夜間も常に介護職員がいるため、介護が必要な方でも安心して宿泊することができます。つまり、介護付きホテルのようなものといえるでしょう。
宿泊できる日数は最長で30日と決まっており、要介護認定を受けている人であれば、ショートステイに泊まることができます。ショートステイに宿泊するためには、ホテルのようにあらかじめ予約を取る必要があります。担当のケアマネジャーを通して予約を取るのが一般的です。
泊まりに行きたくなくてあたりまえ
ショートステイのご利用者は、「泊まりになんて行きたくない」と思っていてあたりまえです。その理由は、ショートステイの利用目的にあります。
介護サービスを利用するためには、ケアマネジャーの作成するケアプランにサービス利用の目的を記載する必要があります。ですから、ショートステイを利用したい場合はケアマネジャーに依頼して、サービスを利用する理由をケアプランに記載してもらいます。これまでわたしが見てきたケアプランの中で断トツで多い利用目的が、介護者の休養です。
つまりショートステイに泊まりに来る人の多くが、介護者の休養を利用目的としているわけです。ちなみに、厚生労働省もショートステイの利用目的として「家族の介護の負担軽減」を挙げています。
短期入所生活介護は、利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう、自宅にこもりきりの利用者の孤立感の解消や心身機能の維持回復だけでなく、家族の介護の負担軽減などを目的として実施します。(厚生労働省HPより引用 https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group12.html)
介護者である家族の都合に合わせて泊まりに行くわけですから、納得できていないのに泊まりに来ている人が多くいらっしゃいます。事実、わたしが働いているショートステイでも、多くのご利用者が「いつになったら帰れるのか」と、家に帰る日を気にされています。
本人としては不本意ながらも、ショートステイに泊まりに来ているわけですからね。ですから、ショートステイのご利用者は「泊まりになんて行きたくない」と思っていてあたりまえなのです。
「嫌だけどまた泊まってやるか」と思ってもらえるか
ショートステイを利用する多くの人が「泊まりになんて行きたくない」と思うわけですが、それでも泊まりに行かなければならないのには理由があります。それは、「ショートステイの利用により家族の介護負担を軽減することで、本人の自宅での生活が続けられる」という目的があるからです。嫌々ながらもショートステイを利用してもらうことで、それが自分のためになっている、というわけですね。
ショートステイの利用が楽しみになってもらうことが一番ですが、実際にサービスを提供してみていると、ショートステイを楽しみに感じてくれる人は1割もいません。嫌々ながらも通っている人が多数派です。
でも、ショートステイを楽しみに感じてもらえるのが無理だとしても、せめて
「泊まってみたら思ったほど悪くなかった。嫌だけど仕方ないからまた泊まってやるか」
くらいに思ってもらえればいいなぁと思っています。
そう思ってもらえるのもなかなか難しいんですけどね。
ショートステイには泊まりたくなくて当たり前
「嫌だけど仕方ないからまた泊まってやるか」と思ってもらえたら、そこはいいショートステイ
最後までお読みいただきありがとうございました。
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