生活相談員の仕事のひとつに、家族への電話連絡というものがあります。
電話での会話は、直接会って話す会話と違って、表情や身振りといったコミュニケーションがとれず、言葉だけのコミュニケーションになります。
“言葉だけ”という制約を受けるため、電話でのコミュニケーションは対面でのコミュニケーションに比べて難易度が高くなります。たとえ相談員といえども「会って話すのは得意だけど、電話連絡は苦手だ」という人もいると思います。
特に、「利用中のケガの報告」というような悪い報告をするときには、相手にどう伝えたらよいものか、思い悩んでしまいますよね。
「気持ちが焦ってしまい、うまく伝えられない」
「話がまとまらず、何から伝えていいかわからない」
といった悩みを抱える相談員も多いのではないでしょうか。
こんなとき、あるコツを覚えておけば、電話でもわかりやすく説明をすることができます。
ここでは、相談員のスキルとして身につけておきたい、電話での話の仕方についてご説明します。
相談員が身につけておきたい電話での話し方のコツ、そのコツとは
「結論を先に言う」
です。
冒頭にも上げた、「利用中のケガの報告」を例に挙げて説明しますね。
あなたは、デイサービスの生活相談員です。
〇〇さんという人がデイサービスに来ています。
その〇〇さんが、先ほど転んでしまいました。
床に尻もちをついてしまいましたが、幸いにもケガはありませんでした。
これから、このことを家族へ電話で報告しなければなりません。
このとき、次のA相談員とB相談員の説明は、どちらが相手に伝わるでしょうか。
「〇〇さんですが、先ほど食事を召し上がった後にトイレに行こうとして席を立とうとした際、イスの脚につまづいてしまいまして、近くにいた職員が支えようとしたのですが、間に合わずに転んでしまいました。おケガがないか確認し、異常は見られませんでした。ご迷惑をおかけしてしまって申し訳ございませんでした。」
「〇〇さんが先ほど転んでしまいました。確認したところ、おケガはなさそうです。ご迷惑をおかけしてしまい申し訳ございません。先ほど食事を召し上がった後にトイレに行こうとして席を立とうとした際、イスの脚につまづかれてしまいました。近くにいた職員が支えようとしたのですが、間に合いませんでした。本当に申し訳ございませんでした。」
どうでしょうか?
A相談員とB相談員のどちらがわかりやすく伝わるでしょう?
B相談員のほうがわかりやすく感じますね。
B相談員のほうがA相談員よりも話が伝わりやすい理由は、B相談員がまず結論を先に伝えているからです。
電話を受けた家族の身になって考えてみるとよいでしょう。
突然デイサービスから電話がかかってきた。このときの家族からしてみれば、「何か起きたのではないか?!」という気持ちになります。普段デイサービスから電話がかかってくることなんてそうそうないですから、不安になるはずです。当然、はやく結論を教えてほしいのです。
このとき、A相談員のように結論を先に伝えずダラダラと時系列に沿って報告をすると、相手はどう思うでしょうか?
わたしなら、「何かあったの?結局何が言いたいの?」と、電話口でモヤモヤしてしまいます。A相談員は、「はやく結論が知りたい」という家族の気持ちに応えられていませんね。
B相談員のように、最初に「転んだけれどもケガはしていない」という、話の着地点をあらかじめ伝えていれば、家族はその後も不安なく話を聞くことができます。詳細は、結論を伝えた後に話しても遅くありません。
「先に結論を伝える」こと。これが電話で話をするときのコツです。
利用者の家族へ電話をするとき、結論から先に伝えるよう心がけています
家族からしてみれば、普段施設から電話がくることなんてありません
先に結論を伝えないと「何かあったの?!」とモヤモヤした気持ちのまま話を聞くことになってしまいます
先に結論を伝えることで、安心して話を聞いてもらえます— takuma@生活相談員 (@takuma3104) July 13, 2020
ここで、話をちょっと深堀りしてみたいと思います。
先ほどのシチュエーションにおいて、相談員Aはなぜ結論を先に言わず、起きたことをダラダラと相手に伝えてしまうのでしょう?
わたしは、A相談員が「相手の気持ちよりも自分の欲求を優先しているため」だと考えます。
ただ事実を伝えるだけなら、時系列に沿って起きたことをダラダラと伝えたほうが、伝える側にとっては楽です。しかし、受け取る側の気持ちとしては、先に述べた通り、まず結論が知りたいのです。
A相談員は、「相手に伝わりやすい方法」よりも「自分が伝えやすい方法」を優先してしまっている、と言えます。
ただ事実を伝えるだけが、相談員の仕事ではありません。相手が何を求めてるかを考えなければならない相談員は、事実を伝える際にも、相手のことを思って、伝え方にひと手間加える気配りが大切になるのです。ベクトルは自分ではなくて、相手に向けましょう。
ここでは、電話での話し方のコツについてお伝えしてきました。
ちなみにこのコツは、電話のときだけでなく、他のコミュニケーションにおいても広く使えるものです。たとえば、上司に報告をするときにも活用できます。
わたしの上司は報告に厳しい人なので、ダラダラと伝えると「で、結論は?」とばっさり切られることがあります。そのおかげで、伝え方に気を遣う習慣が身につきました。
「結論を先に言って、細かい内容はそのあとに伝える」
明日からぜひ意識してやってみてくださいね。