こんにちは。生活相談員のtakuma(@takuma3104 )です。
認知症フレンドリー社会 (岩波新書) [ 徳田雄人 ]
社会を認知症対応にアップデートせよ
という著者からのメッセージが、わかりやすく伝わってくる本です。
内容をサクッとまとめてみましたので、よかったらご覧ください。
認知症の何が問題か?
認知症って何が問題なのでしょうか?
そりゃ本人の記憶がなくなっちゃうことでしょ
確かにそうですが、医学的には認知機能がかなり低下した人でも、田舎で農業を続けて近所の人たちとも仲良く楽しく生活を送っている人もいます。
一方で、都会に住む人は認知機能の低下がそれほどでなくても、道に迷ってしまったり、バスの乗り方がわからなくなったり、生活に支障が出てしまうことがあります。
つまり、認知症になることによって
その人と周囲とのかかわりがうまくいかなくなること
が本質的な問題であるといえます。
誰もが認知症になり得る時代
これまでの時代は、認知症の人ってあまり存在していませんでした。
それは、日本人の平均寿命が現在に比べて短かったからです。
しかし日本が長寿国になるにつれ、認知症になる確率も高まってきました。
2018年の数字では、約500万人の日本人が認知症であるといわれています。
もし日本が100人の村だとしたら
28人が高齢者で、そのうち4人は認知症です。
100人中4人が認知症の社会。
ちなみに小学生の数は100人中5人の計算になるそうなので、いかに認知症の人が社会に多く存在するかがわかります。
そのくらい、誰しもが認知症になるリスクを抱えているのです。
認知症にならない努力より認知症でも生きやすく
誰しもが認知症になるリスクを抱える社会です。
「認知症にだけはなりたくない」と、認知症にならないことに力を注ぐこと。いわゆる認知症予防は、確かに大切かもしれません。
しかし、
一定の確率で認知症になる事実があるのに
認知症になったときの備えをしておかなくていいんですか?
と著者の徳田さんは読者に投げかけています。
それは、自分だけは交通事故に起きないと信じて自動車保険に入らずに車を運転するようなものだ、と述べています。
その通りだね
ですから、われわれが目指すべきは認知症になっても生きやすい社会である、
そんな新しい社会を作っていきましょうと話を展開しています。
認知症でも生きやすい社会とは?
じゃあ、いったいどんな社会が認知症の人にとっていい社会なんだい?
って疑問が湧きますよね。
著者は今の社会の構造を
認知症対処社会
そして、これからあるべき社会を
認知症フレンドリー社会
として区別しています。
「認知症の対応って専門家がやるもんだ」
っていう風潮がはびこっていると思いませんか?
認知症についての問題は、医師などの専門家が解決すべきだ
そして医療や介護の専門家も
「正しい医療やケアが必要だよね」
と、専門家だけで問題を解決ようとしています。
つまりは
特別な人を専門家がみてあげる
という構造の社会ですね。
これが著者のいう認知症対処社会です。
でもそれじゃ社会全体でみていくことはできません。
なぜなら、認知症者の増加により今までは特別視される対象だった認知症の人が、
現在は小学生並みにその辺にふつうに存在するようになってきたからです。
高齢者、認知症者が爆増している現在において、
今までのように社会から隔離して専門家がみていればればいい、というわけにはいかなくなってきているのです。
じゃあ、社会全体でみていくにはどうしたらいいのか?
著者は、
これから目指すべき社会は一部の専門家が頑張るのではなく、むしろそれ以外の人たち、特に生活を支える産業で働く人、福祉と直接関係ない行政で働く人、教育関係者などが頑張っていかないといけないよね。
と述べています。
例えば、バスの利用が不安で家に閉じこもりがちな人への支援として、
今までは、専門家が一緒にバス停まで行ってバスに乗るのを手伝ってあげていましたが、
これからは、バスそのもののサービスを認知症の人でも利用できるような扱いやすいサービスに、仕組みごと変えていきましょう
という発想をしていったほうがいいですよ、と言っています。
ここで重要になってくるのが、企業です。
企業の側から考えたときに、認知症の人って数的にもう十分顧客として成り立つくらい存在しているわけです。
認知症の人がふつうにお金をおろし、バスに乗り、買い物をして暮らしている時代です。
今までのように、認知症の人を異質なものとして無視するわけにはいかないのです。
今までのように専門家も頑張る
企業も認知症の人(=顧客)に対して使いやすいサービスを考える。
こういった発想で誰しもが生きやすい社会を作っていく、それが認知症フレンドリー社会であると、著者は言っています。
まとめ
わたしがこの本を読んで感じたことは
介護や医療の専門家だけで勝手に盛り上がってるだけじゃダメ
ってことです。
専門家だけが頑張っている状況が最良ではない。
もちろん専門家はその役割を果たすことが求められますが、専門家の頑張りだけでは社会を良くすることができないという考え方に、グッとくるところがありました。
そしてこれから特に重要になってくるのが
企業の力
私はこの本を読んで、国が進めている「地域包括ケアシステム」にも企業の力は必要だよなぁって思いました。
地域包括ケアシステムって、要は地域で支えあっていきましょうっていう話ですけど
そこで想定されている登場人物は
家族、近隣住民、自治会、民生委員、地域包括支援センター、病院、介護事業所、社会福祉協議会、ボランティア、、、
もちろんそこも大切だけど、
その人の日常生活を考えたとき、
お金をおろして、バスに乗って、買い物に行って
みたいなときに直接接する人って、
銀行の窓口の人やバスの運転手やスーパーの店員さんなわけです。
そういった福祉の専門じゃない人たちの力、企業の力をもっと借りていくことで、地域はうまく回るんじゃないかなぁって思いました。
認知症の人が生きやすい社会は、すべての人が生きやすい社会になる。
社会を認知症対応へアップデートしよう。
という著者のメッセージに、とても考えさせられた本でした。
takuma
生活相談員(社会福祉士・介護支援専門員)。
デイサービスとショートステイの「生活相談員」という仕事を10年以上続けています。
このサイト「生活相談員ラボ」では、「現役の強みを生かした、現場感覚のある情報発信」をコンセプトに、生活相談員をはじめたばかりの人やこれから生活相談員になる人の役に立つ記事を書いています。
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