介護の現場で働く生活相談員にとって、「契約時の説明」は単なる事務作業ではありません。
それは、利用者とご家族が安心してショートステイを利用できるかどうかの“第一関門”です。
特にショートステイは、在宅生活の合間に利用する一時的なサービスであるため、「契約=短期間の信頼構築」とも言える場面です。
わずかな説明不足が、のちのトラブルや不信感につながることもあるため、最初の対応が非常に重要になります。
今回は、生活相談員としてショートステイ契約時に必ず伝えておきたい7つのポイントを詳しくご紹介します。
takuma
生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)
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利用料金の目安と自己負担額
ショートステイの料金体系は、想像以上に複雑です。
利用日数、要介護度、所得段階、負担限度額認定証の有無、加算の種類など、さまざまな要素が絡み合います。
具体的には以下の項目で費用が発生します:
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介護サービス費(基本単位+加算)
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食費・居住費(ホテルコスト)
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日用品などの実費
また、負担限度額認定証があるかどうかで、1日あたりの食費・居住費が数倍変わるケースもあり、家計に与える影響は小さくありません。
ショートステイの料金が高い?介護保険負担限度額認定証を使えば安くなる理由
そのため、「1日あたりの総額目安」や「月○日利用で△円程度」といった、イメージしやすい金額の提示が喜ばれます。
説明後は、書面での見積書や料金一覧表を必ず手渡すようにしましょう。
緊急時の対応と連絡体制
施設を利用するうえで、ご家族が最も気にするのが「もしものときの対応」です。
ショートステイ利用時に緊急連絡先がないと起こるトラブルとは?
特に夜間や休日に利用者が体調不良となった場合に、
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誰が判断し、どの病院に連絡を入れるのか
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救急搬送の判断はどうするのか
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家族にはどのタイミングで、どの手段で連絡がいくのか
といった流れは、契約時にしっかり説明しておく必要があります。
また、「連絡がつかない場合の対応」についても、事前に話し合っておくと安心です。
例:「救急搬送が必要な場合、連絡がつかないときは、施設の判断で搬送してよいか」など。できることとできないことを、事前に申し合わせておきましょう。
家族からすれば、“留守中の代理人”として施設がどこまで動いてくれるのか、具体的なイメージを持てるように伝えることが信頼につながります。
医療・服薬管理についての取り決め
ショートステイでは、持参薬の管理や医療的処置の対応についての説明も欠かせません。
施設によって対応できる範囲は異なりますが、以下の点は必ず確認しておくべきです。
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服薬の管理方法(内服薬の内容、服薬回数、服薬方法)
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インスリン注射や点眼、処置などの有無
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嘱託医や主治医との連携、緊急受診の対応方針
特に医療的ケアが必要な方については、看護職員の配置状況によって受け入れ可否が分かれることもあるため、あらかじめ説明し、ご家族と情報を共有しておくことが重要です。
持ち物と禁止物の案内
ショートステイの持ち物準備は、家族にとって地味に負担の大きい作業です。
準備の不備や忘れ物がトラブルにつながることもあるため、持ち物リストを紙で渡すのが鉄則です。
一般的には以下のようなものが必要です:
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着替え(日数分・予備も含めて)
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洗面道具(歯ブラシ、コップ、タオル)
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薬と薬の説明書
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保険証類
同時に、多額の現金や貴重品、高価な衣類などの持ち込みは禁止であることも明示しましょう。
「万が一の紛失・破損については補償できない」と事前に伝えておくことが、後々の誤解防止になります。
キャンセル時のルールとキャンセル料の有無
契約時に見落とされがちなのが、「キャンセルに関する取り決め」です。
特に、以下の点はトラブルの原因になりやすいため、しっかり説明しておきましょう。
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何日前までにキャンセルすれば料金がかからないか
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発熱や入院など、急な体調不良の場合の取り扱い
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実際に発生するキャンセル料の金額と請求方法
施設によっては、「当日キャンセルの場合、食費のみ負担」「前日からキャンセル料が発生する」など細かいルールがあるため、書面で渡し、口頭でも補足説明を行うと親切です。
加算の算定やサービス内容の違い
加算とは、一定の条件を満たしたサービスに対して、介護報酬が上乗せされる制度です。
ショートステイでは、以下のような加算が代表的です:
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個別機能訓練加算
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看護体制加算
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緊急短期入所受入加算
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サービス提供体制強化加算
これらの加算について、契約時に「内容は何か」「なぜ必要なのか」を簡単でも説明しておくと、明細への納得感が大きく変わります。
特に、「加算が多い=不明瞭な請求」と誤解されることもあるため、透明性を意識した対応が重要です。
利用日数の上限
介護保険制度では、ショートステイの利用には上限があります。
まず知っておきたいのが俗に言う「30日ルール」。これは、介護保険で連続して利用できるショートステイの日数が原則30日までというルールです。
30日を超えての利用は、保険給付の対象外となり、全額自己負担が発生する可能性があります。
このあたりはケアマネジャーが調整することが多いですが、契約時点で一言伝えておくと、「後から説明されなかった」といったトラブルの防止になります。
特に、長期利用や繰り返し利用が想定される方には、具体的なスケジュールや影響を一緒に確認する姿勢が大切です。
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信頼関係は“最初の説明”で決まる
ショートステイ契約の場は、単なる手続きではなく、「この施設に安心して預けられるかどうか」を見極めるタイミングでもあります。
生活相談員として、制度やルールを押しつけるのではなく、
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なぜこの説明が必要なのか
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どんなことが利用者や家族にとってリスクになり得るのか
といった視点を持って、わかりやすく、丁寧に伝えることが大切です。
最初の説明がしっかりできていれば、信頼関係はグッと深まります。
ぜひ、この記事をチェックリスト代わりに活用して、安心できる契約対応を目指していきましょう。

