介護に関する仕事のひとつに、生活相談員という職種があります。
この生活相談員という職種は、どのようにして誕生したのでしょう?この記事では、生活相談員が生まれるまでの背景について解説します。
生活相談員は、介護保険制度の導入と同時にできた職種です。それまでは、生活指導員という名称でしたが、介護保険制度ができたことによって生活相談員と呼ばれるようになりました。
生活相談員という職種が生まれるまでの背景について詳しく知りたい方は、ぜひこの記事をチェックしてみてください。
takuma(@takuma3104 )
生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)。
デイサービスとショートステイの「生活相談員」という仕事を10年以上続けています。
このサイト「生活相談員ラボ」では、「現役の強みを生かした、現場感覚のある情報発信」をコンセプトに、生活相談員をはじめたばかりの人やこれから生活相談員になる人の役に立つ記事を書いています。
詳しい自己紹介はこちら。
介護保険制度によって生活相談員が生まれた
生活相談員は、介護保険制度が導入されたときに生まれました。
この介護保険制度とは、どんな制度なのでしょう?まずは、介護保険制度について簡単に解説します。
介護保険制度とは?
介護保険制度とは、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みのことです。1997年に介護保険法が成立し、2000年に介護保険制度が施行されています。
介護保険制度ができたことで、これまで家族が担ってきた介護を社会全体で行っていくという、「介護の社会化」が図られました。また、行政が利用者のサービスを決める「措置制度」から、利用者が自ら利用するサービスを選べる「契約制度」へと仕組みが変わっていきます。
介護保険ができる前までは、行政の決定に従って、行政が決めた介護事業所で介護を受けていました。しかし、これでは本人の意向に沿った介護とは言えません。
そこで、介護保険制度の導入によって、介護サービス利用者が自身の選択により介護サービス事業所を選べる仕組みへと変わりました。
このように、介護保険制度の導入は、この国の介護の仕組みを変える大きな転換点となったのです。
では、介護保険制度の導入によって、生活相談員はどのように位置づけられたのでしょう?次は、介護保険制度における生活相談員の立ち位置について解説します。
生活相談員の配置義務
介護保険制度ができたことにより、介護事業所へ生活相談員を配置しなければならないというルールが定められました。
特別養護老人ホームに関する基準が定められた「特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準」(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=411M50000100046)には、以下の記載があります。
(職員の配置の基準)
第12条
特別養護老人ホームには、次の各号に掲げる職員を配置しなければならない。
(中略)
3 生活相談員
(後略)
この基準により、特別養護老人ホームに生活相談員の配置義務が定められました。
また、特別養護老人ホームだけでなく、デイサービスやショートステイなどといった介護サービスにも、「指定居宅サービス等の人員、設備及び運営に関する基準」によって、生活相談員の配置基準が定められています。
生活相談員は、介護保険制度の導入により、特定の介護サービスにとって必要不可欠な職種として定められたのです。
では次に、介護保険制度が導入される前の生活相談員の立ち位置について解説します。
生活指導員から生活相談員へ名称変更
介護保険制度ができる前まで、生活相談員は「生活指導員」と呼ばれていました。
生活指導員は、1963年に制定された老人福祉法において定められていた名称です。2000年に介護保険制度が導入されたことにより、生活指導員から生活相談員へと名称変更されました。
なぜ、生活指導員から生活相談員へと名称が変わったのでしょうか?
その理由のひとつに、「指導」という言葉が介護サービスにふさわしくないということが挙げられます。
介護保険制度が導入される前の措置制度だったころは、職員が利用者の生活を指導する場面もあったのかもしれません。
しかし、介護保険制度の導入によって、介護サービス事業者と介護サービス利用者が契約を結び、介護サービスを提供、利用するという仕組みへと変わりました。
介護保険制度は、サービスを受ける利用者と、サービスを提供する事業所というそれぞれの立ち位置を明確にしたと言えるでしょう。
事業所はあくまでも介護サービスを提供するのであって、利用者へ指導をするわけではありません。ですから、「生活指導員」という名称は「生活相談員」へと変更されたのです。
まとめ
生活相談員という職種が生まれるまでの背景について解説しました。
生活相談員は、2000年に介護保険制度が導入されたことにより誕生した職種です。介護保険制度が導入される前までは、生活指導員という名称で呼ばれていました。
介護サービスの種類によっては、生活相談員の配置が義務づけられているものもあるため、介護保険制度においてなくてはならない職種といえるでしょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。