介護保険情報

「科学的介護」はいったいどこに向かっているのか?

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「科学的介護」と聞いて、なにをイメージしますか?

AIやITを介護に取り入れることや、ロボットによる介護なんかを想像する人もいるかもしれません。

こんにちは。takuma@takuma3104 です。デイサービスとショートステイの生活相談員をしています。

2021年度の介護報酬改定では、「科学的介護」の推進が声高に叫ばれています。わたしは、この「科学的介護」に違和感があるのですが、みなさんはどうお考えでしょうか?

ここではこの「科学的介護」について、掘り下げて考えていきたいと思います。

科学的介護とは?

科学的介護を簡単に説明すると、

「たくさんのデータを集めて、それを元にいい介護を提供していきましょう」

ということです。

データに基づく介護

なんて言うとかっこよく聞こえますね。

聞こえはいいですが、果たして科学的介護を取り入れると本当にいい介護ができるようになるんでしょうか?

科学的介護によって向上するのはADL

科学的介護によって向上させようとしているのは、その人のADLです。

たとえば、国は科学的介護データベース「CHASE」(2021年度からは「LIFE」に名称変更)によって、データを集めています。しかし、そのデータの内容は、「機能訓練をしてどれだけ体が動くようになったか」や、「栄養状態がどの程度改善されたか」などの、いわゆるADLに関するものです。

ADLであれば、「よくなった」「悪くなった」というように数値化することができますからね。データに基づく介護とはつまり、数値化できるADLしか相手にすることができないということなのです。

介護の目的はQOLの向上

ADLの向上は介護にとって大切な要素のひとつですが、それが介護の目的ではありません。

介護の目的は「QOLの向上」である、とここでは定義したいと思います。

ADLの向上は、QOLを向上するための手段に過ぎません。ADLの向上によりQOLが向上する人もいますが、そうでない人もいるわけです。

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ADLが向上すればQOLも向上するというわけではないのですから、いくらデータに基づいて要介護度を下げる工夫をしたところで、本来の目的が達成できないこともあります。逆に、ADLが低下したとしても、QOLは向上させることだってできます。

ですから、本来目を向けるべきはADLではなくQOLなのです。

ADL維持等加算科学的介護推進体制加算など、最近の介護保険制度の動向をみると、評価されるのは数値化できるADLの向上を目的としたものばかりです。本来評価されるべきなのは、ADLの向上ではなく、QOLの向上であるはずなのに。

「どんな状態でも大丈夫」な社会を目指すべき

先ほど、「ADLが低下してもQOLを向上させることはできる」と書きましたが、わたしたちが取り入れていくべきは、こちらの考え方だと思います。

「頑張って予防して改善して、ADLを上げていこう」と成果を目指すのではなく、「どんな状態でも大丈夫」な社会を目指すべきです。そして、それが介護保険の本来のあり方なのではないでしょうか。

もちろん、努力して予防やリハビリをすることは大切です。でも、いくら予防したってリハビリしたって、そうなっちゃったものは仕方ないじゃないですか。人間だれしも、歳をとれば体は動かなくなるものです。そうなったとしても、「まぁそれなりに楽しく生きてるよ」って思えるように、なんとかしてくれるもの。そんなものに介護保険はなってほしいなぁって思います。