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「もう運転はやめたと聞いていたのに、実はこっそり車に乗っていた…」

デイサービスやショートステイなどの介護現場、あるいはご家庭で、こうしたヒヤリとする場面に直面したことはありませんか?

認知症が進行していても、足腰が元気で普通に歩ける方の場合、周囲が気づかないうちに車の運転を継続してしまうリスクがあります。一歩間違えれば、ご本人だけでなく第三者を巻き込む重大な事故につながりかねません。

今回は、認知症の方が運転できてしまう「手続き記憶」のメカニズムと、現場やご家族が実践できる現実的な車の手放し方・対策について詳しく解説します。

この記事を書いた人

takuma

生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)

デイサービスとショートステイで、利用者・家族・職員の“間”に立ちながら日々奮闘しています。
現場で感じた違和感や気づきを言葉にし、「学び続ける相談員」を目指して情報発信中。

・kindle出版で『対人援助一年目の教科書』『学び続ける生活相談員』発売中。

・職業情報サイトへ生活相談員に関する記事提供実績あります。その他介護情報サイトへ記事提供実績もあり。

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このブログ「生活相談員ラボ」では、「生活相談員×学び」をコンセプトに、現場のリアルと学びをつなぐヒントをお届けします。

 

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直近の記憶は忘れても運転できてしまう理由

「さっき話したことも忘れてしまうのに、なぜ車の運転ができるのか?」と疑問に思う方も多いでしょう。その鍵を握っているのが「手続き記憶」です。

手続き記憶(体が覚えている記憶)とは?

記憶にはいくつか種類がありますが、自転車の乗り方や車の運転、泳ぎ方など、体で覚えた連続的な動作の記憶を「手続き記憶」と呼びます。

手続き記憶は、認知症(特にアルツハイマー型認知症)が進行しても、エピソード記憶(最近の出来事の記憶)に比べて長期間維持されやすいという特徴があります。そのため、エンジンをかけてアクセルを踏み、ハンドルを握って車を走らせるという一連の操作自体は、意識せずともスムーズに行えてしまうのです。

「運転操作ができる=安全」ではない!認知症運転のリスク

体の動作としては運転が可能であっても、実際の道路上では高度な認知機能と判断力が求められます。認知症の進行に伴い、以下のような能力が大幅に低下します。

  • 認識力の低下: 信号の色や道路標識、目の前を走る車や歩行者を正しく認識できない。

  • 注意・予測能力の低下: 「曲がり角から人が飛び出してくるかもしれない」といった危険予測が困難になる。

  • 判断力・反射神経の低下: 危険を感じた瞬間に適切にブレーキを踏む、あるいはハンドルを切るといった咄嗟の判断が遅れる。

「体は健康で運転動作ができる」からこそ、ご本人も周囲も危険性に気づきにくく、重大な事故を引き起こすリスクが非常に高くなります。

現場で察知したい「隠れ運転」のサイン

ご家族が「もう乗っていないはず」と思っていても、実際には運転してしまっているケースがあります。以下のようなシグナルがないか確認しましょう。

  1. 車体に新しい擦り傷や凹みが増えている(自宅の車庫入れや狭い道での接触)

  2. 近所の方からの情報(「昨日も〇〇さんが車に乗っているのを見かけたよ」といった声)

  3. 車の鍵の管理が曖昧(ご本人が無意識に鍵を持ち出している、探している)

  4. 走行距離が急に伸びている・ガソリンが減っている

現実的な「車の手放し方」と事故防止対策

認知症の方に対して「危ないから運転をやめて」と口頭で説得しようとしても、理解が得られなかったり、注意されたこと自体を忘れてしまったりすることが大半です。感情的な対立を避けつつ、環境面・物理的に運転できない状態を作ることが重要です。

① 車の鍵を物理的に管理する(第一段階)

まずは本人が簡単に持ち出せないよう、鍵の保管場所を変更します。 単に隠すだけでなく、「点検中」「修理に出している」といった本人が納得しやすい理由を添えて伝えると、混乱を防ぎやすくなります。

② 車自体を物理的に遠ざける・売却する(根本解決)

自宅の駐車場に車があるだけで、「自分の車があるから乗ろう」という意欲が刺激されます。

  • 売却・廃車にする: 最も確実な方法です。査定手続きを進めて手放します。

  • 別の場所に移動させる: すぐに売却できない場合は、親族の家など本人の目につかない場所へ移動させます。

③ 運転免許証の自主返納と「運転経歴証明書」の活用

警察署や運転免許センターで自主返納の手続きを行います。 返納後に交付される「運転経歴証明書」は、公的な身分証明書として利用できるほか、自治体や協力店舗でバス・タクシー料金の割引、買い物特典などの優遇措置を受けられるメリットがあります。

④ 代替となる「移動手段」を確保する

車の運転をやめると、「買い物ができない」「病院に行けない」といった生活上の困りごとが発生します。

  • デマンドタクシーや福祉有償運送の活用

  • デイサービスの利用

  • ご家族や地域の移動支援事業の活用

「車に乗れなくなっても生活に困らない環境」をセットで整えることが、スムーズな納得につながります。

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まとめ

認知症の方から車を取り上げることは、ご本人の自尊心や自立感を傷つける場合があり、対応に悩むご家族や支援者も少なくありません。

しかし、交通事故はご本人の命だけでなく、他人やご家族の未来をも一瞬で奪ってしまう可能性がある重大な問題です。

「少しおかしいな」「危ないかもしれない」と感じたら、ご家族だけで抱え込まず、ケアマネジャー、地域包括支援センター、主治医などと連携し、早めに対策へ動き出しましょう。