社会福祉士という資格は、単なる「現場で役立つ知識の集合」ではなく、専門職としての共通基盤を築くためのものである。
なぜなら、活動する領域が多岐にわたり、現場ごとに直面する課題や必要とされるスキルが異なる中でも、専門職としての一貫性を保つためには、分野を越えて共有できる専門性が欠かせないからである。
社会福祉士は、高齢・障害・児童・医療・地域など、非常に幅広い領域で活動している。活動の場が異なれば、対象となる利用者の課題や支援の方法も異なるため、一見すると分野ごとに専門性が分かれているように感じる。しかし、そこで働く専門職としての基盤を考えたとき、共通する専門性が存在しなければ、支援の質や職業的信頼性が担保されない。
まず、社会福祉士の実践は「属人性」の依存を避けるべきである。現場では、経験豊富な職員や人柄によって利用者や家族が安心できる場面が確かに存在する。しかしそれに依存すると、担当者が変わった途端に支援の質が低下したり、判断の根拠が不明確になったりする危険性がある。社会福祉士に求められるのは、個人の感覚や経験に左右されず、誰が担当しても一定の質を保証できる支援ではないだろうか。そのためにこそ、共通する専門性という「共通言語」が必要なのだと実感した。
次に、倫理と権利保障の視点が挙げられる。社会福祉士はどの領域においても、利用者の権利を守り、生活の質を高めるという使命を持つ。倫理綱領や相談援助の基本プロセスを共有しているからこそ、判断に迷う局面でも自らの行動を振り返り、根拠を持って説明できる。たとえば、介護施設の生活相談員として家族対応にあたるとき、感情的に処理してしまえばトラブルを招きかねない。共通の専門性を支えにすることで、冷静に「社会福祉士としてどう判断するか」を考えることができる。
また、共通する専門性は多職種連携においても重要である。医師や看護師、介護職、行政職などと協働する際、社会福祉士としての立場を明確に示すためには、誰もが共有する理論や方法論がなければならない。個人のやり方に依存していては、専門職としての一貫性を示せず、連携もうまく機能しない。共通性を基盤とすることで、他職種からも信頼を得られ、結果的に利用者により良い支援を届けられる。
さらに、社会福祉士同士の学び合いにおいても共通性は不可欠である。領域が異なっても、同じ専門性を土台にしているからこそ、互いの実践を比較し、新しい視点を得られる。たとえば、医療ソーシャルワーカーの実践から介護分野の相談員が学びを得る、といった交流が可能になるのは、共通の専門性を持っているからである。
このように考えると、社会福祉士に共通する専門性は単なる知識の共有にとどまらず、実践の「再現性」「公平性」「信頼性」を支える要となっている。現場で迷ったとき、頼るべきは個人の勘や経験だけでなく、社会福祉士としての共通の基盤であるべきだ。これを日々の実践にどう生かしていくかが、専門職としての成長にも直結すると感じた。
経験や人柄に頼るだけでなく、共通する専門性をより深く理解し現場で活用することで、誰が担当しても安心できる支援を実現していきたい。
