なぜ要支援のデイサービスは断られる?事業所の経営事情と今後の見通し
介護保険制度における「要支援」と「要介護」。この2つの区分は、利用者さまの身体状況だけでなく、介護事業所の経営やサービス提供の現場にも大きな影響を与えています。
制度上、要支援は介護予防を目指す区分とされていますが、現場では「単価の低さ」や「国の総合事業化(いわゆる要支援外し)」に起因するさまざまな葛藤が生じています。
今回は、要支援制度の仕組みと事業所側のリアルな視点、そして数字だけでは測れない現場の課題について考えていきます。
takuma
生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)
デイサービスとショートステイで、利用者・家族・職員の“間”に立ちながら日々奮闘しています。
現場で感じた違和感や気づきを言葉にし、「学び続ける相談員」を目指して情報発信中。
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要支援制度の成り立ちと目的
元々、介護保険制度が始まった当初は「要介護1〜5」という区分のみでした。しかし、制度見直しの中で「介護が必要になる前の予防(介護予防)」に重点を置くため、新たに設けられたのが「要支援1・2」です。
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目的: 要介護状態への進行を防ぎ、自立した生活を維持・支援する
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サービス: 状態維持や運動機能向上を目的とした予防サービスを中心とする
区分を細分化したこと自体は「予防意識を高める」という意図があったものの、制度設計の側面からは、1人あたりの介護給付費(単価)を抑えるという目的も含まれていました。
介護事業所が直面する「定額制(丸め)」と経営のリアル
要支援者へのサービス提供において、現場が頭を悩ませるのが「介護報酬の低さ」です。
デイサービス(通所介護)を例に挙げると、要介護者の利用料が1回ごとの出来高払いであるのに対し、要支援者の利用料は「月額定額制(いわゆる丸め・サブスク型)」となっています。
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要支援1: 週1回ペースの利用(月額定額)
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要支援2: 週2回ペースの利用(月額定額)
1日単位に換算すると、要支援者の単価は要介護1の1回あたりの利用料よりも大幅に低く設定されています。
人件費や送迎コスト、感染症対策などの固定費を考慮すると、要支援者を受け入れるほど事業所としては厳しい収支状況になります。そのため地域によっては、「要支援者の受け入れ人数を制限する」「事業所ルールとして原則受け入れを行わない」といった判断を迫られるケースも少なくありません。
福祉の視点としては「必要としているすべての人を受け入れたい」という想いがあっても、事業所自体が倒産してしまっては支援そのものが届かなくなってしまうため、経営的判断との間で強いジレンマが発生します。
「要支援外し」の動きと制度の限界
現在、国は社会保障費の膨張を抑える対策として、要支援者のデイサービスや訪問介護を介護保険給付から外し、市区町村が主導する「総合事業(地域支援事業)」へと移行を進めています。
しかし、ここで考えなければならないのは「要支援だからといって、困っていないわけではない」という現実です。
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年齢による変化: 80代・90代の方が「予防」に取り組んでも、加齢に伴い少しずつ身体機能は低下していく
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数値に表れない生きづらさ: 区分上は「要支援」であっても、認知機能の低下や家族関係の課題など、手厚い見守りが必要なケースが存在する
数字や区分だけで機械的に線を引いてしまうと、本当に支援を必要としている方に適切なサービスが行き届かなくなる恐れがあります。
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おわりに
介護保険制度が経済や予算のバランスの上で成り立っている以上、経営や制度のルールを無視することはできません。
だからこそ、現場で働くわたしたちは「制度の数字」だけにとらわれず、その奥にいるご利用者ひとりひとりの生活や状態にしっかりと目を向けていく必要があります。
予防の重要性を理解しつつも、手助けが必要な部分にはしっかりと手を差し伸べられる柔軟な支援体制や地域の関わりが、今後ますます求められていくのではないでしょうか。
