「車の運転をやめさせたい」認知症家族の葛藤にどう向き合うか?
「高齢の親や配偶者の認知面が低下してきたけれど、車の運転をやめさせられない」
介護の現場や身近な会話の中でも、非常に多く寄せられるテーマです。家族としては「もし事故を起こして人を傷つけてしまったら……」という強い不安があり、一刻も早く運転をやめてほしいのが本音でしょう。
しかし、長年運転を続けてきた本人にとってみれば、車は単なる移動手段ではなく「生活の一部」であり「自分自身の尊厳」そのものであることも少なくありません。
今回は、認知症の症状が見られる方の運転をめぐる家族の葛藤と、それに対する現実的なアプローチについて、わたし自身の考えを整理してみたいと思います。
takuma
生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)
デイサービスとショートステイで、利用者・家族・職員の“間”に立ちながら日々奮闘しています。
現場で感じた違和感や気づきを言葉にし、「学び続ける相談員」を目指して情報発信中。
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話し合いがうまくいかない理由:認知機能低下と「説得」の限界
運転をやめさせようとする際、「本人としっかり話し合って納得してもらいたい」「運転しないという約束を取り交わしたい」と考えるご家族は多くいらっしゃいます。
もちろん、本人の気持ちに配慮し、納得感を得るプロセス自体はとても大切です。しかし、認知機能(特に判断力や記憶力)の低下が進んでいる場合、どれだけ熱心に話し合って約束を交わしても、時間が経つと忘れてしまったり、「自分はまだ大丈夫だ」と判断してしまうケースが珍しくありません。
つまり、「説得する」「話し合いで本人に納得してもらう」というアプローチだけでは限界を迎えてしまうという現実が存在します。
安全を最優先にする「仕組みづくり」という選択肢
万が一事故が起きてからでは、ご本人にとってもご家族にとっても取り返しのつかない事態になってしまいます。そのため、本人の納得感を追求することと並行して考えたいのが、「物理的に運転できない仕組み」をつくることです。
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鍵の管理: 家族が鍵を預かる、あるいは置く場所を変更する
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車の移動: 車を手放すか、本人の目につかない場所へ移動させる
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バッテリー外し: 「故障中」ということにして物理的に動かない状態にする
これらは最終手段であり、本人の不満や怒りを買うリスクもあります。しかし、「人の命に関わる事故を防ぐ」という観点においては、最も確実に安全を確保できる選択肢となります。
相談の現場で浮き彫りになる「支援者」とのギャップ
高齢者の運転問題をめぐっては、地域包括支援センターなどの専門機関に相談したものの、「最終的には家族内で話し合って決めてください」と言われてしまい、途方に暮れてしまうご家族もいらっしゃいます。
「どう話し合えばいいのか分からないからこそ相談しているのに……」という家族の落胆や孤立感は、非常に切実なものです。
制度やアドバイスだけでは割り切れない「家族としての情」や「現実的な対応策」の間で悩むご家族に対し、もっと具体的で実行しやすい提案や、気持ちを汲んだ関わりが求められていると感じます。
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まとめ
高齢や認知症に伴う運転の断念は、家族だけで抱え込むにはあまりにも負担が大きい問題です。
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本人の尊厳を守るアプローチ
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事故を防ぐための物理的な制限
この2つのバランスをどう取るか、葛藤が尽きることはありません。完璧な正解はありませんが、「本人の気持ちに配慮しつつも、最後は家族が安全を守る決断と仕組みづくりを行う」という姿勢が必要になる場面もあります。
同じような悩みを抱えるご家族が少しでも孤立感を減らし、現実的な一歩を踏み出せるよう、わたしも現場の視点から発信を続けていきたいと思います。
