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介護や福祉の現場で日々業務にあたっていると、時として「これって業務範囲を超えているのでは?」とヒヤリとする場面に出くわすことがあります。

先日、わたしが働く現場で非常にヒヤリとする事例がありました。

それは、「ケアマネジャーが利用者の代わりにショートステイの利用料金を預かり、直接支払いにやってきた」という出来事です。

一見すると「困っている利用者のための親切な対応」に見えるかもしれません。しかし、これは相談援助職として絶対に越えてはならない一線(越権行為)であり、大きなリスクをはらんでいます。

今回は、この事例を通して見えてきた「親切と越権行為の違い」や、事業所側・ケアマネ側の双方におけるリスクについて考えてみたいと思います。

この記事を書いた人

takuma

生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)

デイサービスとショートステイで、利用者・家族・職員の“間”に立ちながら日々奮闘しています。
現場で感じた違和感や気づきを言葉にし、「学び続ける相談員」を目指して情報発信中。

・kindle出版で『対人援助一年目の教科書』『学び続ける生活相談員』発売中。

職業情報サイトへ生活相談員に関する記事提供実績あります。その他介護情報サイトへ記事提供実績もあり。

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「自分が動いた方が早い」という思考の罠

今回のケースでは、キーパーソンであるご家族も高齢になり、支払い方法についてケアマネジャーへ相談されたことがきっかけでした。

本来であれば、

  • 事業所とご家族が直接やり取りし、訪問集金や口座振替等の方法を調整する

  • 金銭管理自体が難しい場合は、成年後見制度や日常金銭管理事業(社会福祉協議会)などの活用を検討・調整する

といった段取りを踏むのが正規のルートです。

しかし、そのケアマネジャーは「言ってもらって調整するより、自分が直接お金を預かって支払いに来た方が早いし楽だ」と判断し、手続きを丸ごと飛ばして自分で動いてしまいました。

「善意」や「効率優先」の気持ちがあったのかもしれません。ですが、個人の判断でお金を預かって支払いを代行することは、あきらかにケアマネジャーの業務範囲を超えています。

ケアマネが「お金の預かり・代行」を行う3つのリスク

個人による金銭の直接授受には、現場を脅かす重大なリスクが潜んでいます。

1. 紛失・盗難・トラブル時の責任問題

万が一、移動中にお金を紛失したり、「預けた金額と違う」といった水掛け論になった場合、ケアマネジャー個人だけでなく所属する居宅介護支援事業所全体が責任を問われます。個人間での金銭管理は、証明する仕組みがないため極めて危険です。

2. 受領する事業所側の領収書発行トラブル

ショートステイ側の事業所としても、ケアマネジャーからお金を受け取った際に「誰宛ての領収書を、誰に手渡せばよいのか」という問題が発生します。代理権を持たないケアマネジャーに領収書を渡すことは、受け取る側の事業所にとってもコンプライアンス上の大きなリスクとなります。

3. 本来必要な権利擁護制度への接続阻害

金銭管理が困難になっているサインが出ているにもかかわらず、ケアマネジャーがうやむやに代行してしまうことで、本来必要であった「成年後見制度」や「日常生活自立支援事業」へつなぐ機会を奪ってしまうことになります。制度上でどこまで対応できるかを見極め、適切につなぐことこそがケアマネジャーの本来の役割です。

 

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相談援助の「一線(境界線)」を超えないために

現場で忙しく働いていると、「わたしがちょっと動いて解決するなら…」と思ってしまう瞬間はあるかもしれません。

しかし、福祉の現場における境界線を守ることは、利用者を守るためだけでなく、自分自身や事業所を守るためにも絶対に必要なことです。

  • 業務範囲を明確に認識する:金銭管理や支払いの代行はケアマネジャーの業務外であることを再確認する。

  • 安易に代行せず、制度へつなぐ:キーパーソンの高齢化や判断能力の低下が見られたら、権利擁護の視点を持って専門機関(地域包括支援センターや社会福祉協議会など)と連携する。

  • 事業者間でリスクを共有する:違和感のある対応には「その対応は相互にリスクがあります」と適切に伝え合える関係性をつくる。

「手軽で楽な方法」に逃げず、制度の枠組みの中でいかに利用者を支えていくか。生活相談員として、改めて日々の相談援助のあり方やリスクマネジメントの大切さを考えさせられた出来事でした。

みなさんの現場では、こうした金銭授受や「業務の境界線」に関するルールはどのように共有されていますか?