生活相談員のベッドコントロールと葛藤。利用者を「数字」で見ないために
ショートステイなどの生活相談員として働いていると、毎日のように上層部から言われるのが「稼働率を上げろ」という言葉ですよね。
特にショートステイの相談員にとって、日々の「ベッドコントロール」は大きな役割であり、最大のプレッシャーでもあります。空床を埋めるために調整に奔走する毎日…。
でも、ふと立ち止まったときに、こんな葛藤を抱くことはありませんか?
わたしは今、目の前の利用者を「一人の人間」として見ているだろうか。それとも、ただの「数字」として見ていないだろうか
今回は、日々のベッドコントロールに追われる中で、わたしが改めてハッとさせられた、対人援助の本質と心のあり方についてお話ししたいと思います。
takuma
生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)
デイサービスとショートステイで、利用者・家族・職員の“間”に立ちながら日々奮闘しています。
現場で感じた違和感や気づきを言葉にし、「学び続ける相談員」を目指して情報発信中。
・kindle出版で『対人援助一年目の教科書』『学び続ける生活相談員』発売中。
・職業情報サイトへ生活相談員に関する記事提供実績あります。その他介護情報サイトへ記事提供実績もあり。
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医療ソーシャルワーカー時代に言われた、忘れられない一言
わたしは今の仕事に就く前、数年間、医療ソーシャルワーカー(MSW)をしていた時期があります。その当時、別の療養型病院で働くワーカーの方と情報交換をした際、今でも時折思い出す「忘れられない言葉」を言われました。
「医療ソーシャルワーカーが、患者さんを『数字』で見るようになってしまったら、もうダメだよ」
人間誰しもバイオリズムや波があります。仕事に忙殺されていると、どうしても相手を数字や効率で見てしまう瞬間はあるかもしれません。
しかし、その先輩ワーカーは「患者さんが数字(=お金)に見えてしまうのは、自分自身の状態が良くないという危険信号なんだよ」と教えてくれました。
日々のベッドコントロールから逃れられない立場だからこそ、当時のわたしにはその言葉が深く刺さり、今でも定期的に自分の胸に手を当てて振り返るきっかけになっています。
稼働率の波に一喜一憂する「カウント1」の世界線
実際、相談員の仕事をしていると、頭の中が「数字の損得勘定」ばかりになってしまうことがあります。
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新規の申し込みが来て、利用者が1人増えたら「やった!稼働率が上がった!」
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急な入院や退所があって、利用者が1人減ったら「しまった、ベッドが空いてしまう……」
気がつけば、相手を「〇〇さん」という人間ではなく、「カウント1」として処理してしまうような感覚です。
でも、わたしたちはそんな数字の増減だけで戦っているわけではないはずです。
たとえば、人気のラーメン屋さんを想像してみてください。 店主がお客さんの顔を一切見ず、「客単価〇〇円」「今日は何人来たから儲かった」と数字だけを追って作ったラーメンは、きっとどこか味気ないものです。
そうではなく、「今日来てくれたお客さんは、何が好きなんだろう?」「どうすれば喜んでくれるだろう?」と、相手の顔をしっかり見て提供するからこそファンが増え、結果として商売が繁盛していくのではないでしょうか。介護の仕事も、根本はまったく同じだと思うのです。
綺麗事かもしれない。けれど、基本は「人として関わること」
「数字を意識しなければ経営が成り立たない。綺麗事だけでは現場は回らない」という意見もあるでしょう。
たしかにその通りです。経営の視点は絶対に無視できません。 しかし、マインドとしてどちらを大切にしているかで、結果は大きく変わるとわたしは肌感覚で感じています。
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「今日来てくれたこの人は、何が好きでここを選んでくれたんだろう?」
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「この人がショートステイに来るのは、どんな楽しみがあるからだろう?」
そうやって相手を「1人の人間」として深く見つめ、その人が喜ぶサービスを愚直に提供していくこと。その積み重ねの先にしか、本当の意味での「利用率の向上」や「選ばれる施設づくり」はないと思うのです。
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まとめ
日々の業務やベッドコントロールに忙殺されていると、どうしても視野が狭くなり、数字という分かりやすい指標に心を奪われがちになります。
もし、あなたも今、目の前の利用者が「数字」や「タスク」に見えてしまっているとしたら、それは「少し心が疲れているよ」「原点に戻ろう」というサインかもしれません。
効率や数字を追い求める手が止まらなくなったときこそ、一歩引いて、目の前の「人」としての関わりを再認識していく。
そんな優しさを持った生活相談員でありたいと、改めて思いました。 皆さんは最近、目の前の利用者の「顔」、しっかり見られていますか?
