「今の職場、いつまで全員マスクを続けますか?」
新型コロナウイルスが5類に移行してから、かなりの月日が経ちました。街に出れば素顔で笑い合う人々が増え、かつての日常が戻ってきた実感が湧きます。しかし、一歩「介護現場」に足を踏み入れるとどうでしょう。そこだけは時が止まったかのように、全員が一律で白いマスクを着用している……そんな光景が今も「スタンダード」ではないでしょうか。
「高齢者施設だから、感染対策は絶対。仕方ないよね」 そう自分に言い聞かせつつも、対人援助のプロとして「これで本当にいいんだっけ?」というモヤモヤを抱えている方も多いはずです。今日は、この「介護現場のマスク問題」に隠されたリアルな葛藤を深掘りしてみたいと思います。
takuma
生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)
デイサービスとショートステイで、利用者・家族・職員の“間”に立ちながら日々奮闘しています。
現場で感じた違和感や気づきを言葉にし、「学び続ける相談員」を目指して情報発信中。
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なぜ介護現場だけ「脱マスク」が進まないのか
わたしの住む地域の施設を見渡しても、マスク着用を「任意」に切り替えたところは、ほんの一部。依然として圧倒的なマイノリティ(少数派)です。
もちろん、医療的・科学的な視点での感染予防は重要です。しかし、今の状況は科学的な根拠を超えて、介護業界特有の「保守的な空気」が支配しているように感じてなりません。
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「もしクラスターが発生したとき、マスクをしていなかったらどう責任を取るんだ」
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「近隣の施設もまだつけている。うちだけ外して目立ちたくない」
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「家族からのクレームが怖い」
こうした「右へ倣え」のリスク回避の姿勢が、マスクを単なる衛生用品から「組織を守るための盾」に変えてしまいました。わたし自身、プライベートではほぼマスクをしません。しかし、職場では個人の意思に関係なく「ルールだから」と着用を余儀なくされる。この「日常」と「職場」の強烈なギャップに、現場の人間は日々、言いようのない息苦しさを感じているのです。
「言葉」が届かない。マスクが奪うコミュニケーションの質
わたしがもっとも危機感を抱いているのは、物理的な息苦しさではありません。高齢者の方とのコミュニケーションの質が、明らかに低下していることです。
コロナ禍以前、私たちは「言葉」だけで会話をしていたわけではありませんでした。 特に耳の遠い高齢者の方にとって、わたしたちの顔は情報の宝庫だったはずです。
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口の動き: 音が聞き取りにくくても、口の形で言葉を補完してもらう。
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笑顔の力: 緊張している利用者さんに、口角を上げた笑顔で安心感を届ける。
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微細な表情: 相手の口元の震えや、頬の緩みから、言葉にできない「真意」を読み取る。
これらは、長年の経験で培ってきた立派な「援助技術」のひとつでした。しかし、マスクによって顔の下半分が遮断された今、その大切な技術の半分以上が封印されています。 「声が聞き取りにくい」「誰が話しているのかわからない」「何を考えているのか見えない」 こうした状況で、本当の意味での「信頼関係」を築くことは、かつてより何倍も難しくなっているのが現実です。
「安心」の正体は、清潔さだけではないはず
もちろん、感染症から命を守ることは、介護職としての最優先事項です。施設が「清潔」で「安全」であることは欠かせません。 しかし、わたしたちが提供すべき「安心」の正体は、それだけなのでしょうか。
無機質な白いマスクで顔を覆い、目元だけを鋭く動かして淡々とルーチンワークをこなす職員たち。そんな姿は、利用者さんの目にどう映っているのでしょうか。まるで感情を失ったロボットのように見えてはいないでしょうか。
「何かあったら困るから」という守りの姿勢。それは裏を返せば、施設側の都合です。 その都合のために、わたしたちが本来大切にしていた「表情を通じた心の交流」や「人としての温もり」を二の次にしてしまうのは、対人援助職としてあまりに寂しく、また不健全なことだと思えてしまいます。
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おわりに
今はちょうど花粉症の季節でもあり、わたし自身もアレルギー対策としてマスクに助けられている面はあります。だから「今すぐ全員が外すべきだ!」と極論を言いたいわけではありません。
しかし、「なんとなく続いているルール」や「同調圧力」に対して、一度立ち止まって考えてみる時期に来ているのは確かです。
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利用者さんとの1対1の深い対話のとき、少しだけ距離を取ってマスクを外してみる。
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外気の下で散歩をする間だけでも、素顔で風を感じてみる。
そんな小さな試行錯誤から、少しずつ「表情の見えるケア」を取り戻していく。 「安全」と「心の豊かさ」を天秤にかけるのではなく、どちらも大切にするための議論が、現場から湧き上がってくることを切に願っています。

