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先日、近隣の事業所のケアマネジャーとじっくりお話しする機会がありました。

「いま、担当ケースはどのくらい持っているんですか?」という話題になり、そこからお互いの事業所の運営体制についての話に発展したのですが、その中で少し驚く言葉を耳にしたのです。

その事業所(居宅介護支援だけでなく、複数の付随サービスを展開している法人)では、数値的なノルマや目標は特に設定されていないとのこと。

それだけなら「現場の裁量を尊重しているホワイトな環境」に見えるかもしれません。しかし、詳しく聞くと、居宅部門も、その他の付随サービスも、現状は「赤字」なのだそうです。

それにもかかわらず、経営陣や上層部からは特に何も言われない。 この話を聞いたとき、わたしは素直に「いい環境だな」とは思えず、むしろ強いモヤモヤを抱いてしまいました。

皆さんの周りにも、「福祉だから採算は二の次」「赤字だけど法人が潰れないから大丈夫」という空気感はありませんか?

今回は、この「数字に対する感覚」について、これからの介護業界を生き抜くために必要な視点を考えてみたいと思います。

この記事を書いた人

takuma

生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)

デイサービスとショートステイで、利用者・家族・職員の“間”に立ちながら日々奮闘しています。
現場で感じた違和感や気づきを言葉にし、「学び続ける相談員」を目指して情報発信中。

・kindle出版で『対人援助一年目の教科書』『学び続ける生活相談員』発売中。

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経営感覚のない「ノルマなし」が健全ではない理由

極端な話をすれば、営業しているのに担当ケースが1件しかなければ、当然ですが自身の給料すら賄えません。 大きな法人であれば、他の黒字部門が穴埋めをして「組織全体でプラスならいい」という判断をしているケースもあります。しかし、それは決して健全な状態とは言えません。

わたしが「赤字放置・目標なし」の体質に違和感を覚える理由は、大きく分けて2つあります。

1. 働くスタッフの立場とプライドに関わる

同じ法人内で、一生懸命に利益を出している部門がある一方で、自分たちの部門はずっと赤字のまま。働いている時間は同じなのに、片や数字を残し、片や赤字を垂れ流しているという構図は、組織としてのバランスを崩します。

「自分たちは稼げていない」という状態が続けば、社内での立場も悪くなりますし、何より誇りを持って働き続けることが難しくなってしまいます。

2. 「方針」としての説明がない

もし、法人のトップが「居宅は地域のセーフティネットであり、法人の顔だから、利益は度外視でいい。その代わり、最低限この役割を果たしてくれ」と明確なビジョンを示しているなら話は別です。それなら現場も、周囲のスタッフも納得して動けます。

しかし、何の明確な方針もないまま、ただ赤字が放置され、現場の裁量(悪く言えば丸投げ)に任されている状況は、組織の体質として危機感を持たざるを得ません。

福祉だからこそ、最低限「プラマイゼロ」を目指すべき

利益を追求しすぎて、肝心の「対人援助の質」が落ちてしまっては本末転倒です。介護や福祉は、儲けを最優先にするビジネスではありません。

しかし、「儲けを出さないこと」と「赤字でいいこと」は全く別物です。

自身の給料や経費を差し引いた上で、「プラマイゼロ(収支均衡)」を達成することは、組織として、そしてプロの労働者として最低限のラインではないでしょうか。

「福祉だから採算度外視でやっていく」という風潮は、これまでの社会通念として根強く残っているかもしれません。しかし、そのような考え方は、これからの時代においては正直「古い」と言わざるを得ません。

 

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これからの介護従事者に不可欠な「数字の意識」

どれだけ素晴らしい理念を掲げていても、法人や事業所が潰れてしまっては、目の前の利用者さんを支え続けることはできません。法人を生き延びさせ、さらに発展させていくためには、「適切に稼ぐこと」から目を背けてはならないのです。

トップの経営方針を現場から急に変えることは難しいかもしれません。 だからこそ、わたしたち個々人が「福祉だからこそ、持続可能性のために数字を見る」という意識を持つことが重要です。

  • 自分が今月、どれだけの価値(報酬)を生み出しているのか

  • 事業所を維持するために、最低限必要な件数はいくつか

こうした経営的な視点・コスト意識を持つことは、これからの介護業界を生き抜くプレイヤーにとって、間違いなく不可欠なスキルになります。

「ボランティア精神」だけに頼る福祉の時代は終わりました。 プロの対人援助職として、質の高いケアと健全な数字の意識を両立させていくこと。それが、結果として自分たちの働く環境を守り、利用者への安定した支援にも繋がるのだと、わたしは思います。