ショートステイ・デイサービスの「忘れ物対応」の裏側と業務への影響
こんにちは。わたしは介護・福祉の現場で生活相談員として働いています。
デイサービスやショートステイの現場において、どうしてもゼロにできない悩みのタネの一つが「利用者の忘れ物」です。
「またお薬の返し忘れがあった…」「お部屋の隅からメガネが出てきた」というのは、介護現場の“あるある”ですよね。しかし、この忘れ物をケアする裏側には、現場スタッフの時間を奪う「地味に重い業務負担」と、見過ごされがちな「労務リスク」が隠れています。
今回は、わたし自身の実体験をもとに、忘れ物対応がもたらす現場へのリアルな影響と、事業所として考えるべき対策についてお話しします。
takuma
生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)
デイサービスとショートステイで、利用者・家族・職員の“間”に立ちながら日々奮闘しています。
現場で感じた違和感や気づきを言葉にし、「学び続ける相談員」を目指して情報発信中。
・kindle出版で『対人援助一年目の教科書』『学び続ける生活相談員』発売中。
・職業情報サイトへ生活相談員に関する記事提供実績あります。その他介護情報サイトへ記事提供実績もあり。
・Xでも発信しています。
詳しい自己紹介はこちら。

書籍第2弾!『学び続ける生活相談員』が Kindleにて発売中です!

学び続ける生活相談員: キャリアを腐らせない福祉職の思考習慣
380円。ちょうど「カフェのコーヒー1杯分」のお値段です。その1杯を、あなたの10年後のキャリアを守る知識に変えませんか?
Kindle Unlimited会員なら、今すぐ「0円」で読み放題。
忘れ物対応の「裏側」:現場で実際によくあるケース
デイサービスは日帰りかつお部屋(居室)を持たないため、荷物は比較的少なく、忘れ物があっても歯ブラシや巾着袋程度で済むことが多いです。
一方で、深刻になりやすいのがショートステイです。最低でも1泊2日、長ければ数週間を施設で過ごされるため、持ち込まれるお荷物の量は格段に増えます。
現場で特によくある忘れ物は、次のようなものです。
-
看護師が預かっていた処置道具(インスリンなど)
-
毎日服用するお薬
-
髭剃り、メガネ
-
他の方の荷物との入れ替わりによる衣類
実は昨日も、退所された方の処置道具をお返しし忘れてしまい、わたしがご自宅までお届けに行ってきました。今回は往復20分ほどの距離でしたが、過去には送迎実施範囲外の遠方(隣の市)から来られていた方の元へ、「片道1時間、往復2時間以上」かけてお薬を届けに行ったこともあります。
忘れ物がもたらす「業務への深刻な影響」
「忘れたものを届けるだけ」に見えるこの業務ですが、蓄積すると現場には以下のような悪影響を及ぼします。
1. イレギュラーな移動による「時間的損失」
忘れ物のお届けは、当然ながらあらかじめ組まれている一日のスケジュールには入っていません。突発的にスタッフが外出しなければならなくなるため、本来やるべきだった書類作成や他の利用者対応が後回しになり、業務全体のタイムラインが圧迫されます。
2. 「誰が返しに行くか」という押し付け合いと負担
多くの事業所では、こういったイレギュラー対応は生活相談員や管理者が担うことが多いですが、人員に余裕がないと「誰がいつ行くか」で現場がギスギスする原因になります。
3. 「ついでに届けて」が孕む、危険な労務リスク
一番問題だと感じているのは、「スタッフの仕事帰りに、ルートが同じだからとついでに利用者宅へ寄って返してもらう」という対応です。効率的に思えるかもしれませんが、これは非常にグレーな労務管理です。
もし退勤途中に忘れ物を届ける場合「その時間の残業代はどうなるのか」という労基上の問題が発生します。 万が一交通事故が起きた場合、責任問題にも発展しかねません。業務とプライベートの境界線を曖昧にすることは、管理者にとっても大きなリスクです。
業務への影響を最小限に抑えるための3つの対策
仕方のないイレギュラーだからこそ、個人の善意やサービス残業でカバーするのではなく、事業所としての「仕組み」で解決する必要があります。
① お届けは「勤務時間内に社用車で」を徹底
スタッフの家からどれだけ近くても、原則として勤務時間内に、事業所の業務として対応するシステムを徹底します。これにより労務の境界線をハッキリさせ、スタッフを守ることができます。
② 退所・退席時の「ダブルチェック」の仕組み化
お薬や処置道具など、絶対に忘れてはならない重要物品については、「誰が」「いつ」最終確認して手渡すのかのチェックフローを明確にします。送迎車に乗る前の「お部屋・ロッカーの最終確認」を徹底することが、最大の予防策です。
③ 緊急性の低いものは「次回利用時」または「郵送」にする
衣類や予備のメガネなど、生活に直ちに関わらないものであれば、ご家族に確認の上で「次回のショート・デイ利用時にお渡しする」か「着払いで郵送する」といった運用をあらかじめ重要事項説明の段階などで握っておくことも、現場を救う一手になります。
◆ 生活相談員の基礎知識はこちら
◆ おすすめ書籍はこちら![]()
◆ さらに深く学ぶなら
◆ 介護の資格・転職なら
まとめ
「忘れ物を届けるくらい、大したことじゃない」
そうやって見過ごされがちな業務の裏側には、現場の時間を奪う負担と、管理上のリスクが確実に存在しています。
イレギュラーな業務だからこそ、明確なラインを引いて対応すること。それが結果として、スタッフが安心して、効率的に働ける環境づくりにつながるのではないでしょうか。
全国の生活相談員・介護スタッフの皆さん、今日もお届け業務や現場の対応、本当にお疲れ様でした!
