【介護経営の裏側】なぜ赤字でも「ケアマネ事業所」を併設するのか?
介護サービスを運営する法人の多くが、実は「居宅介護支援事業所(ケアマネ事業所)」を併設しています。しかし、その経営実態は決して楽なものではありません。
なぜ多くの法人は、単体での収益化が難しいとされるケアマネ事業所をあえて設置し続けるのでしょうか。そこには、介護保険制度のルールと、民間ビジネスとしての生存戦略という、切実な背景があります。
takuma
生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)
デイサービスとショートステイで、利用者・家族・職員の“間”に立ちながら日々奮闘しています。
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「デイ」と「ケアマネ」にある圧倒的な収益格差
まず、介護報酬における収益構造の差を整理してみます。
| サービス種別 | 収益の目安(介護報酬ベース) |
| デイサービス | 利用者1人・1日あたり 約10,000円 |
| ケアマネ事業所 | 利用者1人・1ヶ月あたり 約10,000円強 |
デイサービスであれば、1日40人の利用者がいれば、その日だけで40万円の収益が発生します。対してケアマネジャーは、1人で40人のプランを担当し、1ヶ月奔走してようやく約40万円の報酬です。
ここから人件費や通信費、事務経費を差し引けば、居宅部門単体では「赤字、もしくは利益がほとんど出ない」というのが業界の常識となっています。
併設を維持する最大の理由は「自社への動線確保」
赤字リスクを負ってでも併設を続ける理由。表向きは「多職種連携の強化」などが挙げられますが、経営面での本音は「自社メインサービスへの顧客導入」にあります。
多くの経営者は、自社のケアマネジャーが窓口となり、自社のデイサービスやショートステイ、訪問介護などの利用に繋げることで、法人全体の稼働率と収益を安定させる構造を狙っているのです。
「公正中立」というルールと資本主義のジレンマ
介護保険法において、ケアマネジャーには「公正中立」な立場が義務付けられています。特定の事業所に偏りすぎないよう「集中減算」というペナルティも設けられていますが、これには大きな矛盾も感じます。
一般的なビジネスの世界を考えてみてください。
住宅メーカーの営業が、自社の住宅を勧める。自動車販売店が、自社のメーカー車を勧める。これは至極当然の姿です。
自社のサービスに自信を持ち、それを顧客に提案することは、本来プロとして健全な行為のはずです。介護業界だけが「自社のサービスを勧めてはいけない」という強い規制に縛られている現状は、ビジネスの原理原則から見れば不自然な側面もあります。
法人の存続がなければ支援も成立しない
もし、公正中立を過度に意識しすぎて自社サービスの稼働が下がり、法人が経営破綻してしまったらどうなるでしょうか。
事業所が閉鎖されれば、そこに所属するケアマネジャーも職を失い、担当していた利用者さんの支援も途切れてしまいます。自分たちの生活の基盤が崩れる状況下で、建前としての公正中立を貫き通すことは現実的ではありません。
介護が民間ビジネスとして成り立っている以上、資本主義の論理に片足を踏み入れているのは事実です。経営を維持し、職員の雇用を守るための「自社サービスへの誘導」は、ひとつの生存戦略と言わざるを得ません。
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まとめ
利用者や家族の多くも、「この事業所のケアマネジャーなのだから、当然自社のサービスを勧めるだろう」という一定の理解を持っています。
大切なのは、無理な囲い込みではなく、自社サービスの強みを正しく理解し、自信を持って提案すること。そして利用者がそれに納得し、満足してサービスを利用することです。ですが、現行の法令ではそれすら許されていません。
制度上のルールと経営のリアリティ。このバランスをどう取るかという課題は、今後も介護経営における永遠のテーマと言えるでしょう。
