「入所が決まったけれど、本人にどう伝えればいいのか……」
「もし伝えてパニックになったら、入所自体できなくなるかも」
ショートステイの相談員をしていると、このようなご家族の切実な悩みに立ち会うことがよくあります。 中には「当日まで本人には内緒にしておいて、ショートステイからそのまま施設へ連れて行きたい」と希望されるケースも少なくありません。
今回は、教科書通りの「自己決定の原則」だけでは解決できない、現場のリアルな葛藤と向き合い方についてお話しします。
takuma
生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)
デイサービスとショートステイで、利用者・家族・職員の“間”に立ちながら日々奮闘しています。
現場で感じた違和感や気づきを言葉にし、「学び続ける相談員」を目指して情報発信中。
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・職業情報サイトへ生活相談員に関する記事提供実績あります。その他介護情報サイトへ記事提供実績もあり。
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「自己決定」という理想と、現場のジレンマ
福祉の基本には「自己決定の原則」があります。 自分の生活の場をどこにするか、本人が納得して決めることが一番の理想であることは間違いありません。
しかし、現実はそう簡単ではありません。
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認知症による理解の難しさ: 説明しても数分後には忘れてしまい、不安だけが募ってしまう。
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不穏や拒絶の懸念: 伝えた瞬間から食事が摂れなくなったり、眠れなくなったりする。
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家族の精神的な限界: 告知することで本人から責められるのが怖くて、家族が倒れてしまいそう。
こうした状況があるとき、「絶対に伝えるべきだ」と正論を押し通すことが、果たして誰の幸せになるのでしょうか。
「伝えない」選択をする際のリスク
一方で、伝えないまま入所を迎えることには、以下のようなリスクもあります。
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不信感の増大: 施設に着いた後、「騙された」という思いが不穏を強くさせてしまう。
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適応の遅れ: 自分がなぜここにいるか納得できないため、生活に馴染むまで時間がかかる。
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スタッフとの関係: 理由を知らされていない本人が「帰りたい」と訴える際、現場のスタッフも対応に苦慮することがある。
相談員が考える「納得」の形
わたしは、100%の納得が難しくても、その方に合わせた「ソフトな着地点」を探ることが大切だと考えています。
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段階的に伝える: 「ちょっと体調を整えるために長めに泊まろうか」など、本人が受け入れやすい言葉を選ぶ。
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「役割」を作る: 「お父さんの知恵を貸してほしい場所がある」など、本人のプライドを傷つけない理由を添える。
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家族と専門職の連携: 相談員やケアマネジャーと事前に打ち合わせ、本人の性格に合わせた「ストーリー」を一緒に作る。
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まとめ
施設入所の告知に「これが正解」という答えはありません。伝えないことを選んだご家族を、誰が責めることができるでしょうか。
大切なのは、「本人が穏やかに過ごせるためには、今どうするのが最善か」を、ご家族だけで抱え込まず、相談員やケアマネジャーに相談していただくことです。
支援者たちは、ご家族の「心苦しさ」も含めてサポートするのが仕事です。理想と現実の間で揺れ動くのは、それだけご本人のことを大切に思っている証拠なのですから。

