先日、仕事が休みだったので、実家の母のスマートフォン設定を手伝いに行ってきました。
久しぶりに両親と食事をしながら話題になったのは、「親なき後」の問題です。わたしには重度の知的障害(障害者手帳1級)を持つ弟がいます。両親も高齢になり、自分たちが亡くなった後の弟の生活、そして手続きや供養を誰が担うのかという切実な不安を口にしていました。
わたしは現在、高齢者福祉の現場で生活相談員として働いていますが、ひとりの「きょうだい児」としての視点も持っています。今日はこの両方の立場から、今わたしたちができる備えについて考えをまとめたいと思います。
takuma
生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)
デイサービスとショートステイで、利用者・家族・職員の“間”に立ちながら日々奮闘しています。
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制度だけで解決できない「空白」の不安
親亡き後の備えとして「成年後見制度」がよく挙げられます。もちろん、金銭管理や契約などの法的権利を守るためには不可欠な制度です。
しかし、現場で働く人間として、そして家族として感じるのは、制度だけでは埋められない「生活の細部」への不安です。
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誰がお葬式や主護の手続きをしてくれるのか?
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季節の変わり目に服を買い換え、好物を知ってくれている人はいるのか?
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本人の小さな体調変化や、言葉にできない「こだわり」に誰が気づくのか?
こうした「家族が当たり前にやってきた名もなきサポート」が、親がいなくなった瞬間に空白になってしまう。これこそが、多くの保護者が抱える不安の正体ではないでしょうか。
「きょうだい」がいる家庭、いない家庭
我が家の場合は、幸いにもわたしが「親の後は自分が動く」という意思を両親に伝えています。両親も将来のために金銭的な準備を進めてくれており、その点は安心しています。
しかし、世の中には兄弟がいない家庭や、兄弟がいても遠方にいたり事情があったりする場合も少なくありません。 「動ける誰かがいる」ことは、決して当たり前のことではなく、非常に恵まれた状況であると改めて実感します。だからこそ、孤独な状況にある家族を支える仕組みが、もっともっと必要だと感じています。
「どさくさに紛れて」作った、一枚のキャッシュカード
今回の帰省で、両親からある話を聞きました。重度の知的障害を持つ弟のために、キャッシュカードを作ったというのです。
本来、弟のような状況では、銀行の窓口でカード作成を断られるケースも少なくありません。しかし両親は「自分たちが動けるうちに、少しでも弟の生活の選択肢を増やしてやりたい」と、なかば強引に手続きを済ませたようです。
「どさくさに紛れて作っちゃったよ」
そう笑う両親の言葉の裏には、きれいごとでは済まされない、障害者家族の切実な思いがありました。
福祉のプロとして、家族として願うこと
わたしがこの「福祉」の仕事を目指した原点は、間違いなく弟の存在にあります。今日、両親と話をして、その初心を強く思い出しました。
今、わたしは介護の現場で働いていますが、福祉に携わる人たちがもっと報われ、余裕を持って一人ひとりに寄り添える社会になってほしいと切に願います。支援者が安心して働ける環境こそが、障害を持つ本人やその家族の「安心」に直結するからです。
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おわりに
親亡き後の問題は、非常に個別性が高く、正解はひとつではありません。 ですが、ひとりで抱え込まず、地域や専門職とつながり、ひとつずつ「安心の材料」を積み上げていくことはできます。
わたしもひとりのきょうだい児として、そして福祉の専門職として、これからもこの課題に向き合い、発信を続けていきたいと思います。

