「介護の仕事は素晴らしい、社会に欠かせない仕事だ」 そう心の底から思っています。しかし、もし自分の子どもから「将来、お父さん(お母さん)と同じ仕事がしたい」と言われたら……。
わたしは、手放しで「ぜひやりなさい」とは言えません。
現在、介護の現場で働き、小学生の2人の子どもを育てる親として、なぜこの仕事を我が子に勧められないのか。そこには、個人の努力だけではどうにもならない「介護報酬制度」という高い壁があります。
takuma
生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)
デイサービスとショートステイで、利用者・家族・職員の“間”に立ちながら日々奮闘しています。
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努力が反映されない「報酬の天井」という現実
介護業界には、他の民間企業とは決定的に違うルールがあります。それが「介護報酬制度」です。
一般のビジネスであれば、サービスの質を極め、顧客に感動を与えれば、それに見合った高い対価(価格設定)を得ることができます。しかし、介護は違います。
「最高に質の高い、心のこもったケア」を提供しても「最低限のルールを守っただけのケア」を提供しても、国から事業所に支払われる報酬は、原則として同じ金額なのです。
もちろん職場内での評価はあるでしょう。しかし、会社に入ってくるお金の「天井」が制度で決まっている以上、どれだけ個人のスキルを磨いても、それが劇的な給与アップに直結しにくい構造になっています。
物価高騰に対応できない「価格決定権」の欠如
今、世界的な物価高(インフレ)が続いています。 飲食店やメーカーなら、原材料費が上がれば商品の価格を上げて対応できます。しかし、介護サービスは自分たちで勝手に値上げをすることができません。
数年に一度の「介護報酬改定」を待つしかなく、今の急激なインフラ状況に対し、介護業界は常に後手に回らざるを得ないのです。
「どれだけ頑張っても、外部環境の変化に翻弄されてしまう」 という、この不安定な収益構造の中に、自分の子どもを送り出す勇気は、今のわたしにはありません。
「苦労が報われる環境」で戦ってほしいという親心
わたしは、子どもに「楽をしてほしい」と思っているわけではありません。 むしろ、どんな仕事に就いたとしても、壁にぶつかり、泥臭く苦労を重ねる経験は必要だと思っています。
ただ、親として願うのは、「その苦労が正当に報われる場所で戦ってほしい」ということです。
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創意工夫をすれば、収益が上がる。
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付加価値を高めれば、市場価値が上がる。
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努力した分だけ、目に見える形で還元される。
今の介護業界は、仕事の尊さ(精神的な報酬)はあっても、経済的な報酬においてはあまりに制約が多すぎます。
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まとめ
介護の仕事自体は、人の人生に深く関わり、感謝される本当に素晴らしいものです。わたし自身、この仕事に誇りを持っています。
しかし、「素晴らしい仕事であること」と「勧めたい仕事であること」は別問題です。
現在の、質を評価しきれない報酬制度や、インフレに対応しきれない業界構造が変わらない限り、親としての本音は「他により良い選択肢があるのではないか」となってしまいます。
いつか、胸を張って「この仕事は努力が報われるから、やってごらん」と言える日が来ること。それが、今現場で踏ん張っているわたしたちの共通の願いではないでしょうか。

