在宅介護をしている家族にとってショートステイは、介護負担を軽減するのに非常に有効なサービスです。しかしながら、ショートステイに預けたからといって、家族は完全に「安心」とは言い切れません。この記事では、家族がショートステイへ預けた後に抱える主な不安について掘り下げてみたいと思います。
takuma
生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)
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施設内の様子がわからない
利用者がショートステイに宿泊している間、家族は利用者がショートステイでどのように過ごしているか、どんなケアを受けているかを見ることができません。特に認知症のある方を預ける場合、ショートステイでどんな様子だったのかがわからず、家族は不安を感じてしまいます。
認知症のある方がショートステイから家に戻った後に「何も食べさせてもらえなかった」「放っておかれた」と言ったとします。この本人の言葉をそのまま鵜呑みにするのはNG。まずはショートステイの事業所に事実確認をしてみましょう。
とはいえ、施設のスタッフもすべてを把握しているとは限りません。特に、利用者間でのトラブルや居室内で過ごしているときなど、スタッフの目の届かない部分もあります。ショートステイ中の出来事を施設側がすべて把握できないことを、利用する側も理解しておく必要があるでしょう。
利用中にケガをする可能性がある
ショートステイでは利用者の安全管理に気を配っていますが、利用者のケガを完全に防ぐことはできません。ショートステイのスタッフは、利用者ひとりひとりにマンツーマンでついているわけではないからです。そのため、トイレや居室で過ごしているときなどスタッフの目の届かないときに、転んだりベッドから落ちたりなど思わぬケガをしてしまう可能性があります。
どれだけ注意をしていても、介護の現場では予期せぬ事故が起こることがあります。スタッフは「ケガをさせたくない」という思いで対応していますが、高齢者はわずかにバランスを崩すだけで転倒したり、骨折したりすることがあるため、ケガを完全に防ぐのは難しいのが現実です。
特養などの入所施設と違ってショートステイは、日によって入所者の顔ぶれが変わります。利用者ははじめての場所だと環境の変化により心身が不安定になることもありますし、スタッフもよく知らない人をケアすることになるため、お互いが慣れていないなかで予期せぬ事故が起こることがあります。そのため、ショートステイを定期的に利用することで施設の環境に慣れておくことが、利用中のケガのリスクを減らすひとつの方法として考えられるでしょう。
緊急時には対応が必要
ショートステイを利用している間であっても、利用者に何かあったときには家族の対応が求められます。たとえば、利用者の体調が急変した場合や転倒・骨折、発熱などの緊急時には、家族が直接対応しなければなりません。
ショートステイの利用中に、家族が旅行や出張に出かけることがあります。しかし、その間に利用者の体調が急変すると、すぐに帰れない場合は対応が難しくなります。他の家族が代わりに対応できれば問題ありませんが、病院の受診や入院の手続きなど、家族の判断や立ち合いが必要になるケースもあるため注意が必要です。
また、病院と違ってショートステイは医療機関ではないため、こうした緊急時には利用の継続が困難となります。そのため、家族は急遽予定を変更したり、仕事を休んだりしなければならないこともあります。そのことをあらかじめ把握しておき、他の家族と役割分担を決めておくなど事前に考えておくことが大切です。
まとめ
ショートステイは家族の介護負担を軽減できる便利なサービスですが、「預けたら完全に安心」というわけではありません。施設の様子が見えにくいことや、利用中のケガ、体調不良による急な退所など、家族が対応しなければならない場面もあります。
そのため、こうしたリスクをあらかじめ想定し、どのように対応するかを考えておくことが大切です。施設との連携を密にしたり、いざというときの対応について家族内で話し合っておいたりすることで、こうした不安を軽減することができるでしょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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