「ショートステイに行きたくない」と嫌がる利用者の声を、支援の現場ではよく耳にします。新しい環境への不安や、慣れ親しんだ場所を離れる抵抗感など、その背景にある理由はさまざまです。
利用者のこういった気持ちに対し、支援者はどのように対応したらよいのでしょうか?
本記事では、ショートステイ利用者の「行きたくない」という声に対して、支援者が大切にすべき考え方について解説していきます。
takuma(@takuma3104 )
生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)。
デイサービスとショートステイの「生活相談員」という仕事を10年以上続けています。
このサイト「生活相談員ラボ」では、「現役の強みを生かした現場感覚のある情報発信」をコンセプトに、生活相談員をはじめたばかりの人やこれから生活相談員になる人の役に立つ記事を書いています。
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ショートステイを嫌がる理由
生活相談員として利用者の声を直接聞く中で、「泊まりたくない」「家にいたい」といった言葉をよく耳にします。
人は慣れ親しんだ場所に安心感を抱きます。家はその人にとって生活の基盤であり、安心できる場所ですから、そこから離れることを嫌だと感じるのは自然なことです。短期間とはいえショートステイは、自宅から離れて「暮らす」場所になるため、デイサービスのような日帰りのサービスと比べて抵抗感を感じやすいのだと思います。
また、ショートステイが一時的に宿泊するというサービスであることをよく理解していない場合、「施設に入所させられるのではないか」といった不安を抱くことがあります。この誤解が拒否感につながることも多くみられます。
嫌がる利用者へのアプローチ方法
ショートステイを嫌がる理由は利用者によって異なるため、すべての利用者に効果的なアプローチ方法というものは残念ながら存在しません。それぞれの利用者の思いに対し、個別的に対応していくことになります。
そのうえで、比較的効果的なアプローチのひとつとして、はじめから長く泊まるのではなく短い日数からスタートするといった方法があります。「まずは1泊2日から試してみませんか?」と提案することで、利用者の心理的ハードルを下げることができます。
また、基本的なことですが、ショートステイに泊まりに行くことを前もって本人に説明することも大事です。「行きたくない」と言われるのが怖くて、泊まることの説明をせずにショートステイを利用させることはリスクを伴います。うまく泊まってもらえる場合もありますが、わたしの経験から言えば、事前に説明しておかないとショートステイ中に本人が落ち着かなくなったり、家に帰った後に「もう二度と泊まらない!」と言われたりすることが多いです。
支援者が大切にしたい考え方
ショートステイに泊まるのが嫌という人は、実際に多くいらっしゃいます。利用者の「行きたくない」という気持ちに対応する際、支援者としてのどのようにすればよいのでしょうか?
ポイントのひとつに、「ショートステイ=嫌なところ」という先入観を支援者が持たないことがあげられます。
利用者がショートステイを嫌なところだと思ってしまうのは仕方のないことですが、支援者もその気持ちにつられてしまってはいけません。支援者として、ショートステイというサービスに対し偏りのない目線を持っておく必要があります。「ショートステイ=嫌なところ」というイメージを支援者が利用者に植え付けることは、避けるべきです。
たとえば、利用者がショートステイから帰るときに、「帰れてよかったですね」という声かけをしてしまうと、無意識に「ショートステイは嫌な場所」という支援者の気持ちを表してしまうかもしれません。代わりに、「またお待ちしていますね」といった声かけをすることで、利用者にポジティブな印象を与え、次の利用への心理的ハードルを下げることができます。
ショートステイに対し支援者がネガティブな感情を持っていないかどうか、そしてその感情が無意識のうちに利用者へ伝わっていないかどうか、一度振り返ってみると新たな気付きが見つかるかもしれませんね。
最後までお読みいただきありがとうございました。