この記事では、逓減性の緩和が居宅介護支援に及ぼす効果について解説していきます。
結論から言うと、逓減性の緩和が居宅介護支援に及ぼす影響は限定的で、ほとんど効果がありません。
いったいなぜでしょう?
その理由についても詳しく解説していきたいと思います。
takuma(@takuma3104 )
生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)。 デイサービスとショートステイの「生活相談員」という仕事を10年以上続けています。
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逓減性とは?
ひとりのケアマネジャーの利用者担当件数が一定数を超えると基本報酬が引き下げられる仕組みのことを、逓減性と言います。
ケアマネジャーの担当件数が40名以上になると、この逓減性により基本報酬が減額されていました。
2021年の介護保険制度改正により、この担当件数が40名以上から45名以上へ緩和されています。
逓減性の緩和によって、ケアマネジャーはより多くの利用者を担当することができ、より多くの介護報酬を得られるというメリットが生まれました。
一方で、多くの利用者を担当するため、これまでより業務負担が増加するというデメリットが発生しています。
逓減性緩和のための条件
逓減性を緩和したのにもかかわらず、ケアマネジャーの負担が増えてしまっては制度改正の意味がありません。
そこでこのケアマネジャーの業務負担を少なくするために、逓減制限の緩和には条件が定められています。
その条件とは、「ICTを導入すること」または「事務員の配置をすること」です。
どちらかの条件を満たしたうえで保険者に届け出ます。
そうすることで、逓減性を緩和してケースを持てるようになるというわけです。
では、実際に逓減性を緩和してケアマネジメントを行っている事業所はどのくらいあるのでしょうか?
逓減性の緩和の実施状況
「居宅介護支援および介護予防支援における 令和3年度介護報酬改定の影響に関する調査研究事業報告書」によりますと、逓減性の緩和を実際に運用している事業所は全体の1割以下とのことです。
この結果は、逓減性を緩和したことによる効果がほとんどないことを示しています。
制度改正したのにもかかわらず、それを運用する事業所がなければ意味がありません。
では、なぜ多くの事業所が逓減性の緩和に取り組まないのでしょう?
その原因のひとつに、逓減性を緩和する必要性を感じないことが挙げられます。
居宅介護支援が逓減性の緩和をしない理由
「令和4年度介護事業経営概況調査結果」によりますと、令和4年度のケアマネジャーの平均担当件数は、36.9人です。
このデータを見る限り、実際のケアマネジャーの担当件数は40名すら届いていません。
40名に届いていないこの状況で逓減性を40名から45名以上に緩和したところで、何の効果もないのは明らかです。
効果がないのであれば、わざわざ逓減性を緩和する必要はありません。
また、ICTや事務職員にケアマネジャーの業務を効率化する力があるのかどうかも疑問です。
もちろん、ある程度効率化することはできるでしょう。
しかし、それによって担当ケースを増やせるくらいの効果があるとは思えません。
さらに、ICTにしても事務職員にしても導入するには一定の費用がかかるため、特に小規模の事業所では導入のハードルが高いと言えるでしょう。
逓減性緩和の効果は限定的
事業所の経営の安定化を狙いとしたこの逓減性の緩和ですが、その恩恵を受けることができるのは、多くのケースを抱える能力のあるケアマネジャーやICTに投資する体力のある事業所などです。
以上の理由により、逓減性の緩和が居宅介護支援に及ぼす影響は限定的で、ほとんど効果がないと言えます。
最後までお読みいただきありがとうございました。