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なぜ「入浴介助加算」は引き下げられたのか?【2021年度改定】

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こんにちは。生活相談員のtakuma@takuma3104 です。

2021年度の介護報酬改定により、デイサービスの基本報酬はアップしたものの、デイサービスにおける「入浴介助加算」の単価が引き下げられてしまいました。

新たな入浴介助加算の算定要件については、こちらをご覧ください。

【2021年度報酬改定】デイサービス入浴介助加算の算定要件とは?1月18日に2021年度介護報酬の改定事項が発表となりました。 生活相談員として、このあたりの報酬改定情報は見逃せないところです。次年...

通所介護のおよそ9割が算定しているこの「入浴介助加算」の単価引き下げは、私を含め多くのデイサービス事業所に大きな影響を及ぼすことになります。ここでは、「なぜ入浴介助加算が引き下げられてしまったのか?」ということについて考察していきたいと思います。

基本報酬は増えたが入浴加算は減った

冒頭に申し上げました通り、今回の介護報酬改定でデイサービスの基本報酬は増加しています。

一見しますとプラス改定になっているので、事業者にとっては喜ばしいように見て取ることができます。

しかし、ここで問題になってきますのが「入浴介助加算」です。

今回の改定で、通所介護のおよそ9割が算定している入浴介助加算の単価が引き下げとなり、(入浴介助加算Ⅰ)その上位加算として「入浴介助加算Ⅱ」が新設されました。

この入浴介助加算Ⅱの中身をみると、実質ほとんどの事業所が算定できそうにないため(加算が算定できない理由は※コチラで解説しています。)、ほとんどのデイサービスが入浴介助加算Ⅰ(40単位)を算定することになると思われます。

デイサービスの基本報酬はだいたい10単位前後引き上げられていますが、入浴介助加算が10単位引き下げられるため、この引き上げ分が完全に食われてしまっています。

介護報酬が増えたように見せかけておきながら、実際のところは報酬に変化がないというのがデイサービスの現状です。

入浴介助加算に対する国と現場とのギャップ

そもそもこの「入浴介助加算」、わたしは作り手側の考えと受け手側の考え方にかなりのギャップがあると感じています。

作り手側である国は、「重度化を予防して自立を支援したい」という考えかたをしています。デイサービスでお風呂に入るのは当たり前で、それ以上に「結果を出してほしい」いう思いが感じ取れます。ですから、「家でお風呂に入れるようになる」という結果にこだわった加算を作っています。

しかし、受け手である現場の感覚は違います。現場は「利用者は家でお風呂に入れないからデイサービスで入浴する」という感覚でいます。

家でお風呂に入れるようになることを目的として、デイサービスに通っている利用者はまずいません。また、事業所側もそれを主な目的としていません。あくまでも、家でお風呂に入ることができないから、デイサービスでそれを補うことにより自立を支援しているのです。つまり、デイサービスにおける入浴介助の目的は「利用者が入浴できること」です。単純にそれ自体が目的です。繰り返しになりますが、「家でお風呂に入れるようになること」が目的ではありません。

ですから、今回の入浴介助加算Ⅱの概要をみていると、現場と国との感覚差を感じずにはいられません。

「言い訳づくり」のための入浴介助加算

社保審の人たちだってバカじゃありません。国と現場の温度差くらい、百も承知でしょう。それでもあえて入浴介助加算の引き下げを断行したのには、きっとわけがあります。

国としては「介護保険の制度維持」という大義名分のために、可能な限り介護報酬を抑えたいと考えていま。ですから、あの手この手で介護報酬を下げにきています。

今回はコロナウイルスの影響もありデイサービスの基本報酬はアップとなりましたが、国としては報酬を上げてばかりだと制度維持ができないので、どうにかして報酬を下げる必要がありました。そこで、今回は「入浴介助加算」が槍玉に挙げられたというわけです。

「重度化を予防して自立を支援したい」、そのために「自宅での入浴の自立を促す」という国の考えも、結局は介護報酬減算という結果ありきの論理なわけです。つまり、報酬を下げられそうな加算を見つけて、もっともらしい言い訳を後付けしたのでしょう。入浴介助加算は、そのこじつけのために利用されたと考えることができます。

露骨に報酬を減らしたらバッシングが来ますから、何かもっともらしい口実を作らなければなりません。そこで着目されたのが、「自立支援」を目的とした新しい「入浴介助加算」の創設です。だって、考えてみてください。デイサービスでの入浴の目的が「家でお風呂に入れるようになること」だなんて、賢い社保審の人たちが本当にそう思っているはずないじゃないですか。どうしたら報酬を下げられるかを真剣に考えた結果、自立支援と入浴介助をこじつけてもっともらしくみせた苦渋の策である、と読んだほうが自然です。

入浴介助加算引き下げの理由

介護保険制度を持続させるために、もっともらしい言い訳をつくることができた入浴介助加算を引き下げることにした。

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