介護保険情報

デイサービス入浴介助加算の単価引き下げ&新加算の真の目的は?

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こんにちは。生活相談員のtakuma@takuma3104 です。

ここでは、2021年度に改定が検討されている、デイサービスの入浴介助加算についてご説明します。

厚労省から発出されている資料によりますと、どうやらデイサービスの入浴介助加算に新たな加算が創設され、現行の入浴介助加算は単価が引き下げられるようです。2021年度の介護報酬改定に向けて、社保審で議論がなされています。(↓リンク参照↓)

https://www.joint-kaigo.com/articles/2020-11-18-2.html

入浴介助加算とは

入浴介助加算とは、入浴中の利用者の観察を含む介助を行った場合に算定できる加算です。

入浴1回につき、50単位を算定することができます。

新しい入浴介助加算とは

利用者が利用者宅において、自身又は家族等の介助によって入浴を行うことができるよう、利用者の身体状況や訪問により把握した利用者宅の浴室の環境をふまえた個別入浴計画を作成し、それに基づき個別の入浴介助を行うことを評価する

ー 社保審-介護給付費分科会 第193回(R2.11.16) 資料7

上記のように、新しい入浴加算では既存の入浴加算よりも加算取得のハードルがあがった内容案となっています。

具体的には、まず医師や理学療法士が利用者宅を訪問し、浴室の環境を確認します。それをふまえて事業所が個別入浴計画書を作成し、それに基づき入浴介助を行うというものです。

算定のハードルが高い

この説明を読んで一番に思ったのは

takuma
takuma
うちじゃこの加算とれないな…

ってことです。

つまり、算定のハードルが高すぎるっっ! のです。

うちのデイサービス、いえ、うちだけに限らずほとんどのデイサービスには医師や理学療法士なんていません。100歩譲ってデイサービスに勤務していたとして、利用者宅をわざわざ訪問するほどヒマではないでしょう。

最近の加算の動向として、「自事業所で有資格者が確保できなかったら外部に依頼してもいいよ」って流れがあります。新しい入浴介助加算も同様に、自事業所に医師や理学療法士がいなければ、外にお願いすることもできます。

しかし、外注にはコストが発生します。せっかく新しい入浴介助加算を算定したとしても、このコスト発生によりいいとこトントン、おそらく加算より外注コストのほうが高くなってしまうのではないでしょうか。これでは加算を取得する意味がありません。

算定することでトータル赤字になることが予想される加算なんて、うちに限らずほとんどの事業所が算定しないでしょう。これが、算定率が低くなりそうな理由です。

介護保険の理念がブレブレ

もう少し深く突っ込んでみたいと思います。

そもそも、介護保険の目的ってなんでしたっけ?

介護が必要になった人を、これまでの「家族での介護」から、「社会全体で介護」していきましょう。つまり、「介護の社会化」が大きな目的であったわけです。

自宅で家族の介護が難しい人への介護を担うのが、介護保険の役割なのです。

ところが、新しい入浴介助加算ではその役割が一変し、家族の介助による自宅での入浴をすすめてきています。これ、明らかに理念がブレてます。

そもそも、現行の入浴介助加算の算定要件には、「利用者の自立支援や日常生活動作能力などの向上のために、極力利用者自身の力で入浴し」というように、利用者自身での入浴ができるように支援することは求められていましたが、家族の支援を促すようなことはどこにも書いてありません。

今更なぜ家族の支援を求めるのか?意味がまったくわかりません。

真の目的は現行加算を減算すること

新しい入浴加算を国が推し進めたいのはなぜか?

それはこの言葉の中に隠されています。

上記の取組を促す観点から、現行の入浴介助加算については、単位数を見直してはどうか。

ー 社保審-介護給付費分科会 第193回(R2.11.16) 資料7

シンプルに、現行の入浴介助加算の減算がしたいからです。

「上記の取組」とは、新しい入浴介助加算のことです。「新しい入浴介助加算の取得を促したいから、今の入浴介助加算の単位数を下げましょう」と国は言っているわけです。

ですが、これは二枚舌です。

本当は、入浴介助加算の減算ありきで、新しい入浴介助加算は口実として作られたのでしょう。苦し紛れに作り出した言い訳だから、新しい入浴介助加算は介護保険の理念からかけ離れているのです。

要は、現行の入浴介助加算の減算が本来の目的なのです。でも、ただ「減算します」って言ったら、そりゃ不満が出ますから。飴が必要なのです。新しい入浴介助加算は、いわば飴です。ですがこの飴は甘そうに見せておきながら、その実まったく甘くない飴です。だって、ほとんどの事業所は算定できないのですから。実際は、現行の入浴介助加算の減算という鞭だけが、デイサービスに襲い掛かってくるのです。

薄く広く減算させたい

社保審の資料にも載っている通り、入浴介助加算の算定率は非常に高くなっています。単位数は1回50単位です。ここでは細かい計算は省きますが、50単位が仮に40単位となり、10単位減算となっただけでも、かなりの額の介護報酬を削減することができます。

基本利用料を下げるのと同程度の効果があるのではないでしょうか。

それに、基本利用料を下げることよりもインパクトが薄いわけですから、不満の声をそらす意味合いも含んでいるわけです。頭いいですよね、国は。

理念よりも維持が目的に

残念ですが、現在の介護保険制度はその理念よりも、制度をどうにか維持させることが目的となっていると言わざるを得ません。内情は一般市民の知るところではありませんが、この「入浴介助加算」の動向を見る限りでは、今回も制度を維持するための制度改定という意味合いが強くなりそうです。