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厚生労働省の検討会において、住宅型有料老人ホーム等における「サービスの囲い込み対策」の具体策が議論されています。

老人ホームの「囲い込み」対策で方向性 厚労省 入居者の選択権やケアマネの独立性を重視 (joint)

具体的には、住宅型ホームの登録基準に以下のような取り組みを明確に位置づける方針が提案されました。

  • 入居契約・ケアプラン作成の手順書ガイドラインの策定

  • 重要事項説明書でのガイドライン等の明示

  • 施設長・管理者への研修や、相談担当者の設置

一見すると、利用者の自立的な選択を守り、ケアマネジメントの独立性を高めるための適切な対策に思えます。

しかし、現場で働く立場からこのニュースを見ると、「この対策だけで本当に囲い込み問題は解決するのだろうか?」という強い疑問が残ります。

今回は、厚労省が提案する囲い込み対策の概要を整理したうえで、なぜそれが根本解決にならないのか、業界の構造問題から考察します。

この記事を書いた人

takuma

生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)

デイサービスとショートステイで、利用者・家族・職員の“間”に立ちながら日々奮闘しています。
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厚労省が示す「住宅型ホームの囲い込み対策」の概要

今回提案された対策の核心は、「住宅への入居契約」と「ケアマネジメント契約」の独立性を担保することです。

本来、住まい(住宅)と介護サービス(ケアマネジメント)は別々の契約であり、ケアマネジャーは公正中立な立場でケアプランを作成しなければなりません。

しかし、住宅型有料老人ホームでは、併設または同一法人の居宅介護支援事業所や訪問介護・デイサービスが、利用者を自社のサービスに囲い込むケースが以前から問題視されていました。

これに対し行政側は、ガイドラインの策定や重要事項説明での明示、管理者研修などを義務づけることで、独立性を保たせようとしています。

なぜガイドライン策定や研修では「根本解決」にならないのか?

理屈の上では「ケアマネジャーは公正中立であるべき」というのは当然のことです。

しかし、現場のリアルな経営・資本主義の構造に目を向けると、この対策には大きな壁が存在します。

1. 同一法人である以上、利益の方向性が一致する

ケアマネジャーと老人ホームが同一法人(同一グループ)である以上、事業所の経営状態はケアマネジャー自身の雇用や給与、働く環境に直結します。

施設や自社サービスが定員割れを起こして赤字になれば、最終的には事業所の閉鎖や倒産につながり、ケアマネジャー自身も生活できなくなってしまいます。どれだけ独立性をうたっても、「自社のサービスを使ってもらわなければ生きていけない」という構造的プレッシャーが存在するのです。

2. 「生き残るための条件」が満たされていない

自社サービスに囲い込まなくても健全な事業経営ができるという前提があって初めて、ケアマネジャーは真の意味で公正中立なケアプランを作成できます。

現行の介護報酬体系では、囲い込まずに単体で運営しようとしても十分な収益を上げることが難しく、自社サービスの稼働率を上げることでようやく採算が取れている事業所も少なくありません。

生き残るために囲い込まざるを得ない現状を無視して、「ガイドラインを作りなさい」「研修を受けなさい」と求めるのは、現場からすれば前提条件が成り立っていない対策と言わざるを得ません。

根本的な解決に必要なのは介護報酬・構造問題への着手

ルールやガイドラインによる小手先の規制をどれだけ重ねても、それは表面上の手続きを整えた「絵に描いた餅」にしかなりません。

本当に囲い込み問題を解決したいのであれば、目を向けるべきは介護報酬の仕組みそのものです。

  • 囲い込みに頼らなくても、居宅介護支援や施設運営が独立して成り立つ介護報酬の設定

  • 現場の経営実態に即した報酬・基準の見直し

事業者が過度な囲い込みをしなくても十分に存続していける仕組みを作ることこそが、結果としてケアマネジメントの独立性を守り、利用者の不利益を防ぐ最善策となります。

 

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まとめ

今回の囲い込み対策案は、手続きやルールの整備としては一歩前進かもしれませんが、現場の事業構造や経営の現実からはズレが生じています。

制度を設計する側には、表面的な規制にとどまらず、「なぜ囲い込みが発生してしまうのか」という根本原因(介護報酬や経営の構造問題)に切り込んだ議論を期待したいところです。