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認知症と診断された、あるいはその疑いがあるご家族の「車の運転」をどう止めるか——。これは介護現場でも非常に多く寄せられる、切実で正解の出しにくい課題です。

「事故を起こす前に鍵を隠したけれど、本人が激怒して収拾がつかない」

「説得しようとすればするほど関係が悪化してしまう」

このように身内だけで解決しようと試行錯誤し、疲弊してしまうご家族は少なくありません。しかし、道路交通法上の手続き(警察・公安委員会の介入)を活用することで、家族間での衝突を避けつつ、安全に運転をやめてもらうルートが存在します。

今回は、認知症に伴う免許返納・取消の手続きと、根拠となる法的な仕組みについてわかりやすく解説します。

この記事を書いた人

takuma

生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)

デイサービスとショートステイで、利用者・家族・職員の“間”に立ちながら日々奮闘しています。
現場で感じた違和感や気づきを言葉にし、「学び続ける相談員」を目指して情報発信中。

・kindle出版で『対人援助一年目の教科書』『学び続ける生活相談員』発売中。

・職業情報サイトへ生活相談員に関する記事提供実績あります。その他介護情報サイトへ記事提供実績もあり。

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認知症と道路交通法

まず前提として、道路交通法では「認知症」と診断された場合の運転免許について明確な規定を設けています。

  • 道路交通法 第103条(免許の取り消し・停止等)

    公安委員会は、免許を受けた者が「認知症」であることが判明した場合、その者の免許を取り消し、または期間を定めて効力を停止することができると定められています。

つまり、認知症診断を受けた状態での運転継続は、本人の意志にかかわらず法的に「免許取消・停止の対象」となります。

警察・公安委員会を活用した具体的な解決の流れ

身内での説得が難航する場合、行政機関(警察・公安委員会)の介入を得ることで、本人が納得せざるを得ない状況(または法的処分)へ進めることができます。

1. 診断書の取得と警察窓口(安全運転相談)への相談

まず主治医に「認知症」の診断書(臨時適性検査用、または指定形式の診断書)を作成してもらいます。

都道府県の警察本部に設置されている「安全運転相談窓口(#8080)」や、最寄りの警察署の運転免許課に相談し、診断書を提出します。

2. 公安委員会による臨時適性検査・聴聞の実施

診断書が提出されると、公安委員会は専門医による臨時適性検査を実施するか、主治医の診断をもとに判断を行います。

処分(免許取消等)を進めるにあたり、公安委員会から本人へ呼び出し(意見の聴取等)がかかります。行政の「しかるべき機関からの通知や呼び出し」という客観的なプレッシャーが、本人の意識を変える大きな契機になる場合もあります。

3. 返納または行政処分(取消)の決定

公安委員会からの呼び出しや面接を受ける過程で、第三者である専門職や担当官から「運転の危険性」を告げられることで、本人が自主返納に応じるケースもあります。

仮に本人が最後まで返納を拒否した場合でも、診断書に基づき公安委員会から正式に「免許取消処分」が下されます。

家族の負担を減らすためのポイント

手続きの開始から実際の返納・取消に至るまでには、数週間〜2ヶ月程度の期間がかかるのが一般的です。その期間を乗り切るためのポイントをまとめました。

物理的な安全確保を並行する

手続きの最中に事故を起こしては元も子もありません。「車の整備理由で預ける」「鍵の保管場所を変える」「車を一時的に移動させる」など、物理的に運転できない環境を整えておくことが不可欠です。

家族が悪者にならない構図を作る

「家族が辞めさせた」のではなく、「警察や公安委員会という制度の決まりで運転できなくなった」という形にすることで、家族に対する本人の怒りや摩擦を最小限に抑えられます。

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制度や外部のサポートを有効に頼ろう

認知症の方の説得は、家族の心理的・身体的負担が極めて大きいものです。説得に限界を感じたときは、身内だけで抱え込まず、法律で定められた警察や公安委員会の相談体制、そして地域包括支援センターなどを頼ってください。

法的な手段や外部機関をカードとして持っておくことも、大切な家族と周囲の安全を守る確実な一歩となります。