介護現場、特にデイサービスやショートステイで生活相談員をしていると必ず向き合うのが「個別援助計画書」です。
「ケアプランがあるのに、なぜ別の計画書が必要なの?」
「書類仕事ばかりで、何のために作っているのか見失いそう……」
そんな悩みを持つ新任の相談員さんや、サービス内容を知りたいご家族に向けて、現役相談員の視点から個別援助計画書の本当の役割や、生きた書き方のコツをわかりやすく解説します。
takuma
生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)
デイサービスとショートステイで、利用者・家族・職員の“間”に立ちながら日々奮闘しています。
現場で感じた違和感や気づきを言葉にし、「学び続ける相談員」を目指して情報発信中。
・kindle出版で『対人援助一年目の教科書』『学び続ける生活相談員』発売中。
・職業情報サイトへ生活相談員に関する記事提供実績あります。その他介護情報サイトへ記事提供実績もあり。
・Xでの発信もしています。
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個別援助計画書とは?「日々の過ごし方のガイドマップ」
個別援助計画書とは、一言でいうと「その事業所で、今日一日をどう過ごしていただくか」を具体化した、現場のためのガイドマップです。
デイサービスやショートステイなどの各事業所が、利用者様一人ひとりの「やりたいこと」や「必要な助け」に合わせて作成します。
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役割: スタッフ全員が、その方に合った「最適な距離感と方法」で接するための共通ルール
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目的: ご本人やご家族に「ここではこんなふうに過ごせますよ」と具体的に示し、安心してもらう
【重要】ケアプラン(居宅サービス計画書)との違い
一番混同されやすいのが、ケアマネジャーが作成する「ケアプラン」との違いです。この2つは、「誰が・どこまで・どのように」という役割分担が明確に違います。
| 項目 | ケアプラン(居宅サービス計画書) | 個別援助計画書 |
| 作成者 | ケアマネジャー | 各事業所の担当者(生活相談員など) |
| 役割 | 生活全体の「目標と方向性」 | 現場での「具体的な過ごし方」 |
| イメージ | 目指すべき場所を示す「地図」 | 現場での歩き方を教える「ガイド」 |
ケアプランが「どんな生活を送りたいか」という大きな願い(方針)なら、個別援助計画書は「その願いを、うちのデイサービスでどう形にするか」という具体的な約束事です。
生活相談員が教える「書き方のコツ」と具体例
良い計画書を作るコツは、「現場スタッフが、読んだその瞬間から動き出せる」ように書くことです。
ケアプランの「想い」を現場の「言葉」に訳す
まずはケアマネジャーのケアプランにある「目標」を、現場のサービスに翻訳します。
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ケアプラン(目標): 「いつまでも自分の足で歩き続けたい」
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個別援助計画書(具体策): 「移動時はあえて自走を促し、スタッフは見守りに徹する。疲れが見えたら椅子を勧める」
5W1Hで、介護の「さじ加減」を伝える
「歩行介助」と一言で言っても、人によって必要な助けは違います。スタッフが迷わない「さじ加減」を記載します。
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NG例: 入浴介助を行う
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OK例: 羞恥心に配慮し、上半身をバスタオルで覆いながら洗身を補助する。お湯は39℃のぬるめを希望されている。
本人の「こうありたい」という意向を主役にする
「リハビリをする」という義務的な書き方ではなく、「また孫と買い物に行けるように、午後のレクリエーションで足腰を動かす」といった、ご本人のやる気の源泉を書き添えるのがコツです。
見直しのタイミングと運用のルール
個別援助計画書は、一度作って交付したら終わり、という書類ではありません。利用者様の生活は常に変化しているため、「今の状態」に合っているか定期的に点検する必要があります。
具体的にどのようなタイミングで見直し(再作成)が必要なのか、ポイントを整理します。
心身の状態や環境に「変化」があったとき
これが最も重要なタイミングです。計画と実態がズレたまま支援を続けると、事故や満足度の低下につながるからです。
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身体状況の変化: 「歩行が不安定になり、見守りから介助が必要になった」「認知症状が進行し、声かけの方法を変える必要がある」など。
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意向の変化: 「以前は交流を好んでいたが、最近は静かに過ごしたいと言っている」など、ご本人の希望が変わった場合。
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環境の変更: デイサービスの場合、利用曜日や回数の変更も計画書の再作成・再交付が必要になるのが一般的です。
ケアプランが更新されたとき
個別援助計画書は、ケアマネジャーが作成するケアプラン(居宅サービス計画書)に基づいている必要があります。 そのため、ケアプランの有効期間が終了し、新しく更新されたタイミング(通常 3ヶ月〜 1年ごと)に合わせて、事業所の個別援助計画書も期間を連動させて見直します。
「3泊4日」のルールとショートステイ特有の運用
ショートステイ(短期入所生活介護)においては、制度上の明確なルールがあります。
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義務の範囲: 連続して3泊4日以上利用する場合、個別援助計画書の作成・交付が義務付けられています。
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現場での実情: 1泊や2泊の短期利用であれば作成義務はありませんが、初めて利用する方や医療的ケアが必要な方の場合は、たとえ1泊でも「安全なケアの指針」として作成することが望ましいです。
署名と捺印による「同意」が不可欠
計画書を書き直した際は、必ず利用者様やご家族に説明し、署名(または捺印)をいただく必要があります。 「以前と内容はほぼ同じだから」と説明を省いてしまうのはNGです。改めて「今、わたしたちはこのような方針で支援をしています」と共有する機会と捉えましょう。
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まとめ
個別援助計画書は、決して提出するためだけの事務書類ではありません。これは、利用者様やご家族に対して「わたしたちはあなたをこのように大切に支えます」と誓う約束であると同時に、現場スタッフへ「その人らしい暮らし」を託すためのバトンでもあります。
わたしたち生活相談員の役割は、ケアプランに描かれた大きな願いを丁寧に汲み取り、現場が迷わず動けるような具体的な行動へと翻訳することです。これこそが相談員の腕の見せどころであり、この仕事の大きなやりがいでもあります。
単なる書類を、ご本人の毎日を輝かせるための「生きたガイドマップ」に変えていく。そんな丁寧な計画書づくりを通じて、目の前の利用者様へ最大限の安心を届けていきましょう。


