業務スキルとノウハウ

「目の前の一人」を救うべき?介護現場の崩壊を防ぐ「全体最適」の考え方とは

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介護の現場、特にショートステイや入所施設で働いていると、必ず直面するのが「対応の限界」です。

「この利用者さんを受け入れないと、ご家族が共倒れになってしまう」

「ケアマネジャーさんからの必死の依頼を断れない」

対人援助職として「目の前の一人を助けたい」と願うのは当然の心理です。しかし、その一人のために現場が疲弊し、サービス全体が立ち行かなくなってしまっては本末転倒です。

今回は、わたしが実務と経験から学んだ「部分最適」と「全体最適」の視点についてお話しします。

この記事を書いた人

takuma

生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)

デイサービスとショートステイで、利用者・家族・職員の“間”に立ちながら日々奮闘しています。
現場で感じた違和感や気づきを言葉にし、「学び続ける相談員」を目指して情報発信中。

・kindle出版で『対人援助一年目の教科書』『学び続ける生活相談員』発売中。

職業情報サイトへ生活相談員に関する記事提供実績あります。その他介護情報サイトへ記事提供実績もあり。

Xでも発信しています。

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このブログ「生活相談員ラボ」では、「生活相談員×学び」をコンセプトに、現場のリアルと学びをつなぐヒントをお届けします。

 

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現場を疲弊させる「過剰な要望」のリアル

ショートステイの現場では、時として通常の人員配置では対応困難なケースが飛び込んできます。

  • 過度な要求(カスタマーハラスメントに近い要望)

  • 24時間マンツーマン対応が必要な激しい認知症症状

  • スタッフに暴言・暴力を振るってしまう利用者様

ご家族やケアマネジャーにとっては「最後の砦」としてショートステイを頼りにしています。しかし、施設側が無理をして一人にリソースを集中させすぎると、他の利用者様への見守りが疎かになり、転倒事故や誤薬などのリスクが急増します。

これが、「部分最適(一人の救済)」が「全体最適(施設全体の安全)」を壊してしまう瞬間です。

大学生時代の理想と、現場で知った「断る勇気」

わたしは学生の頃、「どんなに難しい方でも受け入れてこそプロだ」と信じていました。しかし、現実はそう単純ではありませんでした。

無理な受け入れを続けた結果、スタッフが次々とメンタルを崩して退職し、最終的には施設自体が閉鎖に追い込まれる……そんな事例は少なくありません。

「一人のために全体を崩壊させない」

この判断は、冷徹に見えて実はもっとも誠実な判断です。なぜなら、今いる他の利用者様の生活と、現場で働くスタッフの人生を守る責任が施設にはあるからです。

「部分」ではなく「全体」で捉える福祉の視点

福祉の仕事は、どうしても目の前の個別の課題に目が向きがちです。しかし、持続可能な支援を行うためには、以下のバランス感覚が不可欠です。

  • 部分最適の罠: 特定の要望に応えすぎることで、組織のルールや人員配置が崩れる。

  • 全体最適の追求: 限られた資源(人・モノ・時間)を適切に分配し、サービスを継続させる。

重箱の隅をつつくような細かいこだわりも大切ですが、それによって「全体としてのサービスレベル」が下がっていないか。常に俯瞰(ふかん)して見ることが、リーダーや専門職には求められます。

弱者を切り捨てないための「ビジネス視点」

「全体最適」を追求しすぎると、単なる効率重視のビジネスのように感じるかもしれません。「手のかかる人は受け入れない」という姿勢が加速すれば、本当の弱者が行き場を失うからです。

だからこそ、わたしたちは悩み続ける必要があります。

  • どうすれば、今の資源で受け入れが可能になるか?

  • 断るにしても、次に繋げるための提案はできないか?

情熱(一人を助けたい)と冷静な計算(資源を守る)。この矛盾する二つを両立させようともがくことこそが、介護という仕事の難しさであり、最高に面白い部分なのだと感じています。

 

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まとめ

もし今、あなたが「これ以上の受け入れは無理だ」「この要望には応えられない」と罪悪感を抱いているなら、こう考えてみてください。

その「お断り」は、今いる他の利用者様とスタッフの日常を守るための決断である。

限られた資源の中で、最大多数の幸せをどう作るか。その「全体最適」の視点を持つことが、結果として長く、質の高い福祉を提供し続ける唯一の道なのです。