介護・福祉情報

介護施設の転倒事故は防げる?「転倒ゼロ」は可能なのか|生活相談員が現場の実情を解説

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「施設に預けているのだから、転ばないのが当たり前」 「プロが見てくれているから、もう安心だ」

ご家族からこのようなお声をいただくことがあります。もちろん、わたしたち施設職員は、大切なご家族の安全を守るために日々心血を注いでいます。

しかし、結論から申し上げます。 介護現場において、転倒を100%防ぐことは不可能です。

なぜ「転倒ゼロ」が現実的に難しいのか。生活相談員の視点から、見えにくい「現場の葛藤」を正直にお伝えします。

 

この記事を書いた人

takuma

生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)

デイサービスとショートステイで、利用者・家族・職員の“間”に立ちながら日々奮闘しています。
現場で感じた違和感や気づきを言葉にし、「学び続ける相談員」を目指して情報発信中。

・kindle出版で『対人援助一年目の教科書』『学び続ける生活相談員』発売中。

職業情報サイトへ生活相談員に関する記事提供実績あります。その他介護情報サイトへ記事提供実績もあり。

Xでの発信もしています。

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このブログ「生活相談員ラボ」では、「生活相談員×学び」をコンセプトに、現場のリアルと学びをつなぐヒントをお届けします。

 

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高齢者にとって「歩く」ことは常にリスクと隣り合わせ

介護施設を利用される方の多くは、筋力の低下やバランス機能の衰えを抱えています。

  • 若い頃なら何でもない数ミリの段差でつまずく

  • 座った状態から立ち上がった瞬間にふらつく

  • 「トイレに行きたい」と急いで歩き出してしまう

高齢者にとって、日常の何気ない動作そのものが、すでに転倒のリスクを孕んでいるのが現実です。

わたしたちが日々行っている「転倒を防ぐための工夫」

もちろん、わたしたちは手をこまねいているわけではありません。施設では以下のような対策を徹底しています。

  • 環境整備: 手すりの設置、床の滑り止め、段差の解消

  • 個別ケア: 立ち上がりや歩行時の見守り・介助

  • 身の回り: 足に合った靴の選定、衣服の裾の調整

  • ケアプラン: リスク評価に基づいた一人ひとりの対策

現場のあらゆる場面に「転ばせないための工夫」を組み込んでいます。

それでも「100%」と言い切れない3つの理由

これほど対策をしても、なぜ事故をゼロにできないのでしょうか。そこには3つの大きな壁があります。

  1. 24時間マンツーマンの限界 施設は集団生活の場です。一人の利用者様に24時間つきっきりでいることは、物理的に不可能です。

  2. 予測不可能な人間の動き 「さっきまで寝ていたのに、一瞬目を離した隙に歩き出された」といった、予測を超えた行動を完全に防ぐ術はありません。

  3. ヒューマンエラーの可能性 人が人を支える以上、どれほど注意していても、一瞬のタイミングのズレや見落としを完全にゼロにすることはできません。

究極の「転倒ゼロ」は、本当の幸せか?

実は、理論上「転倒を100%防ぐ唯一の方法」が存在します。 それは、「ご本人の行動をすべて制限すること」です。

  • ベッドから動けないように柵で囲む

  • 車イスにベルトで固定する

  • 自分の意思での移動を禁止する

しかし、これらは「身体拘束」にあたり、介護の現場では虐待行為として固く禁止されています。

「転倒ゼロ」=「自由を奪うケア」

介護施設では、「安全」を守ることと同じくらい、その人らしく「自由に動く権利」を守ることも大切だと考えています。

施設が本当に目指しているもの

介護施設で日々取り組んでいるのは、「転倒をゼロにする」ことではなく、「リスクを最小限に抑えながら、自由な生活を支える」ことです。

  • リスクを適切に評価し、チームで共有する

  • もし転倒が起きたら、速やかに原因を分析し、再発防止策を講じる

この地道な積み重ねこそが、介護の質だと考えています。

 

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まとめ

転倒事故は、決して「施設の不注意」だけが原因ではありません。 「高齢による身体の限界」「集団生活の制約」「身体拘束の禁止」といった、さまざまな要素が複雑に絡み合っています。

「安全」を守りながら、「自由」も守る。

この難しいパズルに日々向き合う現場の葛藤を、少しでもご理解いただけたら幸いです。ご家族と一緒に、その方にとっての「最善の生活」を考えていけることを願っています。