業務スキルとノウハウ

新人職員が辞めない職場の共通点|「マニュアルだけ」では人は定着しない

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新人職員が初めて現場に足を踏み入れたとき、あなたの職場はどのような空気で迎えているでしょうか。

介護現場において、新人職員の定着は切実な課題です。高いコストと労力をかけて採用しても、数か月、数週間、ときには数日で去ってしまう。そんな現実に頭を悩ませている施設は少なくありません。

こうした状況に直面すると、わたしたちはつい「仕組み」に解決策を求めてしまいます。 「マニュアルをより詳細に作り込もう」 「指導手順を統一しよう」 「教育担当のメンターを固定しよう」 もちろん、これらは土台として不可欠なものです。しかし、ふと立ち止まって考えてみてほしいのです。

「完璧なマニュアルさえあれば、新人は安心して働き続けられるのでしょうか?」

この記事を書いた人

takuma

生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)

デイサービスとショートステイで、利用者・家族・職員の“間”に立ちながら日々奮闘しています。
現場で感じた違和感や気づきを言葉にし、「学び続ける相談員」を目指して情報発信中。

・kindle出版で『対人援助一年目の教科書』『学び続ける生活相談員』発売中。

職業情報サイトへ生活相談員に関する記事提供実績あります。その他介護情報サイトへ記事提供実績もあり。

Xでの発信もしています。

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マニュアル教育の裏側に潜む「冷たさ」

想像してみてください。もし自分が、全く新しい環境に飛び込んだとしたら。 配属された職場の教え方はとても丁寧で、手順も明確。仕事の内容自体はスムーズに覚えられそうだと感じます。

しかし、そこに必要な会話以外の「音」がなかったらどうでしょう。 挨拶以外に雑談はなく、ふとした瞬間の声かけもない。ただ淡々と、マニュアル通りの業務が流れていく……。

おそらく多くの人が、その環境に「冷たさ」を感じるはずです。新人職員が抱えているのは、スキル不足への不安だけではありません。それ以上に「自分はこの集団に受け入れられているだろうか」という、居場所への根源的な不安を抱えています。その震える心を温めるのは、文字で書かれたマニュアルではなく、隣にいる人の「温度」に他なりません。

メンターが席を外した「空白の時間」に起こること

現場ではよくある光景ですが、実は最も危うい瞬間があります。それは、教育担当のメンターが電話対応や急な呼び出しで、新人のそばを離れたときです。

その数分間、新人職員はぽつんと取り残されます。 周囲の職員が「自分の担当ではないから」と無関心に通り過ぎていく。誰も目を合わせず、我関せずに作業を続ける。そんな静寂の中で、新人の心には「自分は邪魔な存在なのではないか」「ここにいてはいけないのではないか」というネガティブな感情が芽生えてしまいます。

たとえ数分であっても、この孤独感の積み重ねは、新人の心を少しずつ削っていきます。

たった一言が「居場所」を作る

逆に、そんな場面で周囲の誰かが一言、声をかけたらどうなるでしょうか。 「今ちょっと待っててね、大丈夫だよ」 「前の職場ではどんな風に動いていたの?」 「通勤、今日は雨で大変じゃなかった?」

仕事に関係のない世間話でも構いません。その一言があるだけで、職場の温度は一気に上がります。新人は「自分は気にかけてもらえている」「ここにいてもいいんだ」という確信を得ることができます。

「ここで頑張ってみよう」という意欲は、高度な研修制度から生まれるのではなく、こうした日常の些細な関わりから育っていくものなのです。

忙しい現場だからこそ、心の「余白」を

もちろん、現実は過酷です。慢性的な人手不足、追われるような記録業務、予期せぬトラブル対応。 「新人に構っている余裕なんて一秒もない」 そう叫びたくなる気持ちも痛いほど分かります。わたし自身も、忙しさに取り込まれて新人に声をかけられず、一日の終わりに「今日はよくなかったな」と反省することが何度もありました。

しかし、新人にとっての最初の数週間は、その後の数年を左右する「見極め」の期間です。彼らは言葉に出さずとも、静かに、そして鋭く職場の本質を観察しています。 だからこそ、どんなに忙しくても「挨拶にプラス一言」を添えるような、小さな心の余白を持つことが、結果として未来の仲間を守ることにつながります。

教育は「担当者」ではなく「全員」で

新人教育を成功させる秘訣は、ひとつの思い込みを捨てることにあります。それは「教育はメンターの仕事だ」という考え方です。

どれほどメンターが優しく熱心であっても、他の職員が無関心であれば、新人は職場全体に対して違和感を抱きます。新人を迎えるのは特定の誰かではなく、その職場に集う全員であるという共通認識こそが、定着の鍵を握ります。

誰かが忙しければ、別の誰かが声をかける。困っていそうな背中を見かけたら、持ち場が違っても拾い上げる。そんな文化が根付いている職場では、教えられなくても自然と人が育ち、定着していくものです。

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「人」を相手にする仕事の原点

わたしたちが向き合っているのは、利用者様であり、そのご家族であり、そして共に働く仲間です。そのすべてが、感情を持った「人」です。

機械やAIであれば、マニュアル通りにコマンドを入力すれば正しく動くでしょう。しかし人は、安心感や信頼、そして温もりといった「目に見えない要素」がなければ、持てる力を発揮することはできません。

新人職員へのちょっとした声かけは、単なるマナーではありません。それは「あなたを大切に思っている」というメッセージであり、ケアのプロフェッショナルとしての原点でもあります。

特別な制度を整える前に、まずは今日、隣にいる新人に「最近、慣れてきた?」と声をかけてみませんか。その一言が、新しい仲間の心を繋ぎ止める、何より強い絆になるはずです。