「介護職員処遇改善推進事業」という取り組みがあることを、最近知りました。
これは、自治体が民間事業者に委託し、介護事業所が処遇改善加算を取得するための支援を行う仕組みだそうです。
一見すると、「制度をうまく使えない事業所を支援する良い取り組み」に見えるかもしれません。
しかし、現場で長く働いてきた立場からすると、どうしても素直には受け取れない違和感があります。
それは、「そこまでしなければ取れないほど、制度を複雑にする必要が本当にあるのか?」という疑問です。
takuma
生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)
デイサービスとショートステイで、利用者・家族・職員の“間”に立ちながら日々奮闘しています。
現場で感じた違和感や気づきを言葉にし、「学び続ける相談員」を目指して情報発信中。
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処遇改善加算は「難解すぎる制度」になってしまった
介護職員処遇改善加算は、本来「介護職員の賃金を引き上げ、働き続けられる環境をつくる」という、極めてシンプルで重要な目的を持った制度です。
ところが実際には、
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複数種類の加算(Ⅰ〜Ⅳ、新加算、特定処遇改善など)
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キャリアパス要件
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職場環境等要件
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賃金改善計画書・実績報告書
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配分ルールの細かな制約
などが重なり、現場の管理者でさえ全体像を把握するのが困難な制度になっています。
「書類を読んでもよくわからない」
「解釈が合っているか不安」
「ミスをすると返還になるかもしれない」
こうした不安が、制度活用のハードルを必要以上に高くしています。
「取得支援事業」が必要な時点で、制度設計は失敗している
今回の「介護職員処遇改善推進事業」は、制度が複雑すぎるがゆえに生まれた「周辺制度」だと言えます。
自治体が民間業者に委託し加算取得をサポートするというのは、冷静に考えるとかなり歪な構造です。
本来であれば、制度そのものをシンプルにして誰が見ても理解できる設計にすることが先ではないでしょうか。
「分かりにくいから、専門家を呼んで説明してもらう」
「取れない事業所があるから、別の事業を立ち上げて支援する」
それは、制度の複雑さを前提にした対症療法にすぎません。
その費用、現場に直接回せなかったのか
率直な本音を言えば、この推進事業にかかる費用を、そのまま現場の処遇改善に充てられたら、どれだけ良かっただろうと思ってしまいます。
委託費や事務費、広報費などのコストは、最終的にどこから出ているのか?
突き詰めれば、わたしたちの社会保障費です。
現場では今も、人手不足や賃金の低さ、業務量の多さに悩みながら、ぎりぎりで支援を続けています。
「制度を理解するための制度」よりも、「働き続けられるための賃金」が、今まさに求められているのではないでしょうか。
制度は、現場で使われてこそ意味がある
制度は、正しく使われてこそ意味があります。
しかしその前提として、わかりやすい制度であることが欠かせません。
現場の職員が制度の複雑さに疲弊し、管理者が書類作成に追われ、その結果として「加算を諦める事業所」が出てしまう。
それでは本末転倒です。
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おわりに
介護職員処遇改善推進事業が悪い、と言いたいわけではありません。
ただ、その存在自体が、今の制度設計が、現場から乖離している証拠であることは、見過ごしてはいけないと思います。
いま本当に求められているのは、制度を複雑にして周辺制度を創設することではなく、シンプルで、現場に届く仕組みを作ることなのではないでしょうか。
介護職員の処遇改善は、「制度を理解できる事業所」だけのものではなく、すべての現場で等しく実感できるものであってほしいと思います。


