ひとり暮らしの高齢者が増えるなか、「見守り」という言葉を耳にする機会が増えました。わたしが介護の現場で感じる問いのひとつに、「どこまで踏み込んで見守りをすべきか」というものがあります。
高齢者支援においては、“安心のための見守り”が、時に“監視のような関わり”に変わってしまうことがあります。それは、見守る側のやさしさが、見守られる側にとっての負担になる瞬間です。
takuma
生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)
デイサービスとショートステイで、利用者・家族・職員の“間”に立ちながら日々奮闘しています。
現場で感じた違和感や気づきを言葉にし、「学び続ける相談員」を目指して情報発信中。
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「心配されること」が、時には負担になることもある
デイサービスの現場でひとり暮らしのご利用者から話を伺っていると、こんな言葉を耳にすることがあります。
- 「毎日のように電話してくれる。ありがたいけど、こっちが迷惑かけてるみたいで申し訳なくなるんです。」
- 「元気なのに、“大丈夫?”ばっかり言われると、かえって気をつかうのよ。」
- 「子どもたちが電話でいちいちうるさいのよ。監視されてるみたい。」
家族にとっては「思いやり」のつもりでも、本人にとっては「負担」になることがあります。特に、自立心が強い方ほど「心配されること」がストレスになるのです。
見守りは「監視」ではなく「信頼」からはじまる
生活相談員として感じるのは、見守りとは「何かをすること」ではなく、「何かあったときに気づける関係性をつくること」だということです。
- すぐ連絡が取れなくても安心できる
- そっと見守られていることを負担に感じない
- 自分の生活を尊重してもらえる
こんな「ちょうどいい距離感」こそ、見守りの本質だと思います。心配を伝えるよりも、「信頼して見守る」という姿勢が大切です。
技術が“やさしい見守り”を後押しする時代に
とは言っても、離れて暮らす家族のことはやっぱり心配なものです。
電話をしても出なかったり、元気がなさそうだったりすると、「何かあったのでは」と不安が頭をよぎる。そんな小さな心配の積み重ねが、いつのまにか日常になっているご家族も多いでしょう。
最近は、そうした不安をやわらげるように、テクノロジーを活用した見守りのかたちが広がっています。大切なのは、技術が人を置き換えることではなく、人の思いを支えることです。
たとえば、冷蔵庫のドアの開閉を検知して安否を知らせる「まもりこ」という端末。
これは、見守りの本質をとても上手に形にしています。
- カメラやマイクがないためプライバシーを守れる
- 家族や兄弟など、複数人で共有できる
- Wi-Fi不要で、設置が簡単
監視ではなくそっと寄り添う。さらに導入のハードルが低い。そんな「技術のやさしさ」を感じる仕組みです。
「見守る」とは、「関わり続ける」ということ
見守ることは、一方的に見張ることではありません。相手を尊重しながら、つながり続けることです。
- 見守られる側が「信頼して任せられる」
- 見守る側が「過剰に介入しない」
そんな関係性を築くため、テクノロジーは自転車の補助輪のように働きます。最先端の技術を活用することにより、人の関わりを補い支援の質を高める環境が整い、見守りは「監視」ではなく「支援」へと変わっていくでしょう。
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まとめ
介護保険制度や地域支援の枠を超えて、
「見守ること」は、わたしたち一人ひとりのやさしさの表れです。
何かあったときに気づけること。
何もない日を、安心して過ごせること。
そのどちらもが、見守りのかたち。
そしてそれを支えるのが、家族や地域、そしてわたしたち介護従事者の役割です。
見守りとは、「気づき続けること」でもあります。
日々の小さな変化を見逃さず、声にならないサインを受け止める。その積み重ねが、利用者の安心と自立を支える力になります。
テクノロジーの進歩によって、見守りの方法は多様になりました。
だからこそ、その力をうまく活用して、支援の質を高めていくことが大切です。
機械に任せきるのではなく、データや仕組みを「気づきのきっかけ」として活かしていきたいですね。


