介護・福祉情報

【現場レポ】国際福祉機器展2025(H.C.R.)で感じた介護ICTの現在地とこれから

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2025年10月10日(金)、東京ビッグサイトで開催された国際福祉機器展(H.C.R.2025)に行ってきました。

はじめての参加でしたが、想像以上の規模と人の多さに圧倒されました。

この記事では、介護ICTの最新動向と、現場から見た課題・リアルな気づきをまとめます。

 

この記事を書いた人


takuma

生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)

Xにほぼ毎日投稿しています。

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「生活相談員ラボ」では、「生活相談員×学び」をコンセプトに、介護・福祉に関する情報発信をしています。

 

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会場の雰囲気と来場者層の印象

まず感じたのは、「思ったより若い人が多い!」ということ。

制服姿の学生さん、若手の介護職員、さらには車イスユーザーが実際に試乗体験している姿もありました。中には子ども連れのママさんも見かけ、無料で入場できることもあり、幅広い層が訪れていました。

ブースのスタッフさんから声をかけられる機会も多く、チラシや資料をたくさんいただきました。人は多かったものの、長時間並ぶような混雑はなく、じっくりと見て回ることができました。

ちなみに、出展企業は約400社・来場者は10万人超(※主催者発表)という国内最大級の福祉イベント。

広大な会場には、車イス・歩行器・ベッドといった「福祉機器」だけでなく、ICTやシステム関連のブースも多数出展されており、介護現場のデジタル化の波を感じる展示内容でした。

注目したのは「介護ICT・システム関連」

個人的に最も興味を惹かれたのが、ケアプランや介護記録を自動化するシステムです。

ブースでは次のような仕組みが紹介されていました。

  • ケアプランの自動作成
  • ケアプランをもとに、デイサービス・ショートステイなどの計画書を自動生成
  • さらに電子同意まで一括で完結

デモを見ながら思ったのは、「やろうと思えば、ここまで自動化できる時代になっているんだ」という驚きです。現場の書類作成負担を大幅に軽減できる可能性を感じました。

システム導入の課題と、感じた“現場目線のリアル”

一方で、現場で導入を考える立場として見えてきた課題も多くあります。

① データの扱いと標準化

企業ごとに独自のデータ収集を行っているのが現状です。もしLIFE(科学的介護情報システム)などを活用して標準化できれば、より効率的で全国的に共有できる仕組みになるのでは?と感じました。

また、AIやクラウド活用が進む今、個人情報の取り扱いには一層の注意が必要です。インターネットを介してデータを扱う以上、どれほどセキュリティが向上しても、一定の公開リスクは残ります。

さらに、AIがデータを学習する仕組みの中で、利用者の個人情報や機微な記録が意図せず“学習対象”になってしまうリスクも否定できません。

便利さや効率化を追求するほどに、「どの情報をどこまで共有・活用するか」という判断基準が求められます。今後は、国レベルでの統一的なガイドライン整備と、事業所ごとの情報倫理意識の向上が不可欠だと感じました。

② ケアプランの質が前提になる

自動でサービス計画書を作るにしても、もとになるケアプランがしっかりしていなければ機能しません。

いわば“マスタープラン”としてのケアプランの質が大切で、支援方針が曖昧なままだと、結局は自動生成の精度も下がることを実感しました。

③ 電子同意のハードル

電子同意も便利ですが、利用者本人や家族がスマホやタブレットを使えることが前提です。

現状では対象者全員が対応できるわけではなく、他業界に比べ完全移行には時間がかかると感じます。今は“アナログからデジタルへの過渡期”にいるということを、改めて実感しました。

④ 既存システムとの互換性

「いいシステムだ」と思っても、既に導入しているソフトと互換性がない場合、手入力やコピペ作業が残ってしまうという課題もあります。

さらに、導入コストの問題も無視できません。コストに見合ったパフォーマンスを発揮できるかどうかは、現場の運用方法次第となります。

わたしの勤務先でも、タブレット記録や家族連絡システムを導入していますが、「かゆいところに手が届いた部分」もあれば、「届かない部分」もまだ多いのが現実です。

つまり、システム導入は万能ではないということ。選択肢が増えたからこそ、迷いも増えます。介護ICTの分野は今、まさに群雄割拠の状態。多くの企業がそれぞれの強みを生かしたサービスを展開しており、現場は“どれを選ぶか”という判断を迫られています。

選択肢が増えるのは良いことですが、一方で「どれが自分たちの現場に合うのか」という判断の難しさも増しています。

結局のところ、事業所の方針や職員のスキル、利用者層に合わせた選択が求められると感じました。

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これだけ充実した展示・セミナーがすべて無料で参加できるのもH.C.R.の魅力です。

わたしも1つセミナーに参加してみましたが、介護現場と企業が直接つながる場として非常に学びの多い時間でした。「現場の声」と「企業の技術」が交わる、まさに福祉の最前線を体感できるイベントだと思います。

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まとめ

今回のH.C.R.を通して強く感じたのは、テクノロジーの進化は確かにすごいけれど、それをどう活かすかは“人”次第ということです。

ICT化が進む一方で、利用者・家族との“心の距離”を縮めるのは、やはり現場で関わるわたしたち生活相談員や職員のコミュニケーションです。

アナログとデジタルのちょうど真ん中で、「便利」と「温かさ」の両立をどう実現していくか。それが、これからの介護現場に求められる視点だと感じました。