介護・福祉現場では、日々さまざまな課題や悩みが生まれます。利用者対応、人間関係、業務の進め方、家庭との両立など…。こうした悩みを抱えた職員が最初に頼るのは、多くの場合「直属の上司」です。
ところが、せっかく勇気を出して相談したのに、上司が「それは他の人に言って」と突き返してしまうケースがあります。いわゆる「相談丸投げ上司」です。この対応は、職員の信頼を大きく損なう原因となりかねません。
一方で、相談を受け止め、適切につなぎ、最後まで見届ける「橋渡し上司」は、職員から厚い信頼を得ます。
本記事では、この2つのタイプの違いを具体的に整理し、介護現場における上司の役割を考えていきます。
takuma
生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)
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相談を丸投げする上司の特徴と問題点
1. 丸投げ上司の典型的な対応
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「それは◯◯さんに言って」
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「わたしの担当じゃないから」
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「個人の問題だから自分で解決して」
このように、相談を一度も受け止めずに他者へ流してしまうのが丸投げ上司の特徴です。
2. 職員が受ける印象
丸投げ対応をされた職員は、以下のような気持ちになります。
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見放された気持ちになる:「直属の上司なのに助けてくれない」
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二度手間になる:結局また別の人に相談し直さなければならない
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心理的安全性が損なわれる:次から相談しづらくなる
3. 現場への悪影響
丸投げ対応には、以下のような悪影響が生じます。
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職員のモチベーション低下
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離職意欲の増加
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情報の断絶による業務ミス
つまり、丸投げ対応は「上司が責任を放棄した」と見なされやすく、現場全体の信頼関係を崩す危険があるのです。
橋渡しする上司の特徴と強み
1. 橋渡し上司の行動
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まずは受け止める:「話してくれてありがとう。内容を聞かせて」
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適切な担当へつなぐ:「この件はBさんが詳しいから、わたしからも伝えておくね」
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見届ける:「Bさんに伝えたけど、その後どうなった?」
このように、橋渡しができる上司は相手のことを受け止め、自分だけで解決できないことは責任を持って担当へつなぎ、結果を最後まで見届けます。
2. 職員が受ける印象
橋渡しをしてくれる上司に対して、職員は以下のような気持ちを抱きます。
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安心できる:「この上司に話せば必ず動いてくれる」
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信頼できる:「わたしのことを見捨てない」
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働きやすい:相談しやすい雰囲気が現場全体に広がる
3. 現場への好影響
橋渡しができる上司は、組織に以下のような好影響を与えます。
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情報がスムーズに流れる
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職員のエンゲージメントが高まる
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組織としての信頼性が向上する
このように、橋渡し上司は「相談の入口」として機能しながら、職員の安心感を担保する存在になります。
ケースで考える:A上司とB上司
ある施設でこんなケースがありました。
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職員が直属の上司Aに相談した。
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Aは「その件はBに言って」と返し、自分ではBに伝えなかった。
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結局、職員が自らBに相談し直し、Bが対応した。
このケースでは、Aは相談を丸投げした形になっています。本来Aは、
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まず相談を受け止める
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Bに確実に伝える
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職員に「わたしからも伝えるから安心して」と声をかける
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その後の対応を見届ける
という流れを取るべきでした。そうすることで、職員も上司Bも動きやすくなりますし、チーム全体がうまく機能していきます。それにより、上司Aの評価も高まるでしょう。
介護・福祉現場で上司に求められる役割
介護・福祉現場では、職員が安心して働ける環境を整えることが上司の重要な役割です。特に「相談対応」においては、以下の3つが求められます。
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受け止める
まず話を遮らずに聞き、相談してよかったと思わせる。 -
つなぐ
自分で解決できないことは、責任を持って適切な担当者につなぐ。 -
見届ける
解決までフォローし、職員に安心感を与える。
この流れを徹底できる上司が、現場の信頼を支える存在となります。
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まとめ
介護職員からの相談に対して、上司の対応は2通りあります。
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丸投げする上司:責任を回避し、職員に不信感を与える
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橋渡しする上司:相談を受け止め、つなぎ、見届けることで信頼を得る
介護・福祉現場において、職員が安心して相談できる環境は、利用者へのケアの質にも直結します。直属の上司が「橋渡し上司」として機能することこそ、現場の安定と成長のカギになるのです、

