「この制度、もっと早く知っていれば…」
介護現場で働く生活相談員なら、一度はそんな後悔をしたことがあるのではないでしょうか。
利用者や家族の困りごとに対して、制度を上手に活用することで負担を減らしたり、より良い選択肢を提案したりできる場面は多くあります。けれど、制度を知らなければ支援の幅は狭くなるばかりです。
専門職としての引き出しとなる各種制度について、この記事では、現役生活相談員の視点から、実際に相談業務で役立つ制度を厳選してご紹介します。
takuma
生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)
・Xにほぼ毎日投稿しています。
・職業情報サイトへ生活相談員に関する記事提供実績あります。その他介護情報サイトへ記事提供実績もあり。
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介護保険制度
介護保険制度は、介護の現場における基礎中の基礎です。
要介護認定、サービス内容、支給限度額、自己負担割合(1~3割)など、生活相談員としての業務はすべてここから始まります。
特に新規利用のご家族にとっては、「どこに相談すればいいのか」「何が利用できるのか」がわからないケースがほとんどです。生活相談員は、その道案内人となる生活相談員は、介護保険制度の知識が必要不可欠。業務の土台となる知識ですので、しっかり身につけておきたいですね。
高額介護サービス費制度
介護サービスの自己負担額が1カ月で一定額を超えた場合、超過分が払い戻される制度です。
たとえば、所得に応じて「15,000円」「24,600円」などの月額上限が設定されています。
「通所は週3回くらいに抑えたい」「ショートステイは出費が大きい」など、経済的な事情で利用を控えるご家族もいます。そんなとき、この制度を伝えることで、安心してサービスを利用してもらえることもあります。
医療保険制度
介護保険と同じくらい重要なのが、医療保険制度の理解です。
訪問診療・訪問看護・入退院支援、70〜74歳は原則2割(現役並み所得者は3割)、75歳以上は原則1割となる自己負担割合、さらに公費医療(重度心身障害者医療費助成=マル障、指定難病医療など)まで、多岐にわたる仕組みを押さえておく必要があります。
たとえば、認知症が進行して定期的な内科受診が必要な方に対して、通院負担を軽減できる訪問診療を提案するには、医療保険の制度や適用条件を正しく理解していることが不可欠です。こうした知識があるかどうかで、提案の幅や説得力は大きく変わります。
高額医療費制度
医療費が1ヶ月(同一月・同一世帯)で自己負担限度額を超えた場合、超過分が払い戻されるのが高額療養費制度です。
事前に「限度額適用認定証」を取得しておけば、窓口での支払いが上限額までに抑えられ、払い戻しの手間を省くこともできます。
介護サービスと医療費が同時にかかる高齢者にとって、この制度を知っているかどうかは家計への影響を大きく左右します。
たとえば、「急な入院で医療費が10万円以上かかりそう」という相談の際、限度額適用認定証の申請先や必要書類、後から申請する方法までアドバイスできれば、支援者としてより信頼を得ることができるでしょう。
成年後見制度
判断能力が不十分な方(認知症、知的障害、精神障害など)の契約や財産管理、身上監護を、家庭裁判所が選任した後見人等が行う制度です。
施設入所の契約や通帳管理、預金の払い出しなど、日常生活に必要な法的手続きをサポートします。
注意点として、成年後見制度は身元保証そのものを行う制度ではなく、契約や金銭管理などの法的支援が中心です。身元保証が必要な場合は、別途専門の保証サービスや法人の活用を検討します。
成年後見制度は、「契約ができないからサービスを受けられない」という利用者を救う切り札です。
制度の概要と流れを理解し、必要な場面で即座に提案できる相談員は、現場での存在感も信頼度も格段に上がります。
医療費控除
確定申告時に、1年間で支払った医療費や、条件を満たす介護費用を控除対象として申告できる制度です。
入浴介助・排せつ介助など療養上の世話を伴う通所介護、ショートステイ、訪問介護の一部は、条件を満たせば医療費控除の対象になります。
実際、確定申告の時期になると「このサービスは控除の対象ですか?」という家族からの問い合わせを受けることがあり、利用者本人だけでなく家族支援の観点でも重要な知識といえます。
生活保護制度
生活保護制度は、生活に困窮する高齢者や家族にとっての最後のセーフティネットです。
資産や収入、扶養による支援を受けても生活が維持できない場合に、生活扶助・医療扶助・介護扶助などが支給され、最低限度の生活が保障されます。
現場では、「貯金もなく、年金も少なくて施設に入れない」という相談が年々増加しています。生活保護を受給すると、介護保険の自己負担分や入居費用の一部が公費でまかなわれるため、経済的に施設利用や在宅生活の継続が可能になることがあります。
制度上のルールを正しく理解し、福祉事務所とのやり取りを滞りなく進めること。生活保護制度を“特別なもの”と構えず、日々の業務の一部として自然に組み込める相談員は、現場で頼りにされるはずです。
国民年金制度(老齢・障害・遺族)
多くの高齢者にとって、公的年金は生活の中心的な収入源です。
老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族年金などの種類と、どの年金をどれだけ受給しているのかを把握することは、生活設計や経済的支援の第一歩となります。
相談の中で「夫が亡くなってから生活が苦しい」という声に対しては、遺族年金の有無を確認したり、条件を満たせば障害年金の可能性を探ることもあります。
また、公的年金は偶数月の15日に2か月分が支給されるため、支払いスケジュールや生活費の計画を立てるうえで、年金支給日を理解しておくことも重要です。
高齢者虐待防止制度(高齢者虐待防止法)
高齢者虐待防止法は、家庭内や施設内での虐待を防ぎ、早期発見と対応を行うための制度です。
虐待は5つの類型(身体的・心理的・性的・経済的・介護や世話の放棄=ネグレクト)に分類されます。
介護・医療等の専門職には、虐待を発見または疑った場合、速やかに市町村へ通報する義務があります(確証は不要)。
生活相談員は、日々の関わりの中で利用者や家族の変化に気づける存在です。無理に探す必要はありませんが、「何かおかしい」と感じたら、その感覚を大切にし、ためらわず通報につなげることが重要です。
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