「紹介状がないと大きな病院は高いって本当?」「なんでそんなにお金かかるの?」とご家族から聞かれたことはありませんか?
この「高い初診料」、実は保険外の費用である「選定療養費(せんていりょうようひ)」が関係しています。
この記事では、介護現場で役立つように、「選定療養費とは何か」「なぜかかるのか」「どんな場合にかからないのか」を、わかりやすく解説していきます。
takuma
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選定療養費とは?
「選定療養費」とは、200床以上の大病院で、他の医療機関からの紹介状なしに診療を受けた場合に、自己負担として発生する費用のことです。
この制度は平成28年度から本格的に運用が始まり、現在では多くの大病院で導入されています。
つまり、「紹介状がない状態でいきなり大病院にかかると、診療費以外に追加の費用が発生する」というわけです。
この制度は、病院と診療所の機能分担を進めるために導入されたものであり、医療機関の役割を明確にし、限られた医療資源を有効活用する狙いがあります。
なぜ選定療養費が必要なのか?
医療の世界では、以下のような役割分担が意識されています。
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かかりつけ医・診療所・クリニック:カゼや軽いケガ、慢性疾患など日常的な診療を担当
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大病院・総合病院:より高度で専門的な治療や検査、手術、入院治療などを担当
本来であれば、「まず地域の診療所で診てもらい、必要に応じて大病院を紹介してもらう」という流れが理想です。
しかし、患者さんの中には「不安だから最初から大きな病院に行きたい」「有名な病院の方が安心」といった理由で、大病院を直接受診するケースも少なくありません。
これが過剰になってしまうと、本来大病院で専門的治療を必要とする患者が受診できない、医療提供体制がパンクしてしまう、といった問題が起きるため、紹介状なしでの受診には「選定療養費」という形で抑制がかかっているのです。
選定療養費の金額は?
選定療養費の金額は病院によって異なりますが、多くの場合は以下のような水準です。
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初診:概ね7700円(税込)以上
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再診(患者都合):概ね3800円(税込)以上
これは保険がきかない自由診療扱いとなるため、通常の診療費とは別に、全額自己負担となります。
そのため、「保険証を持っていれば安く済む」と思っている方にとっては、思わぬ出費になってしまう可能性があります。
選定療養費がかからないケースもある
すべてのケースで選定療養費がかかるわけではありません。以下のような場合は免除される可能性があります。
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他院からの紹介状を持っている場合
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救急搬送された場合
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受診後、そのまま入院になった場合
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生活保護受給者で医療扶助が適用される場合
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公費負担医療制度の対象者(更生医療、育成医療、原爆医療など)
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労災保険や交通事故での受診
これらはよく見かけるケースですので、該当するかどうかは事前に確認しておきましょう。
介護現場での対応ポイント
介護現場では、利用者の通院支援や入院の調整を行う中で、以下のような対応が求められます。
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紹介状の有無を確認する
→ 主治医と連携し、紹介状の準備をお願いしましょう。 -
大病院にかかる必要性が本当にあるか確認する
→ まずは地域のかかりつけ医に相談することで、不要な選定療養費を避けられる場合もあります。 -
ご家族へ事前説明をしてトラブルを防ぐ
→ 特に自費負担に敏感な方も多いため、「紹介状がないと追加費用が発生することがあります」と伝えるだけでも印象が違います。
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まとめ
「なぜ大病院の初診料は高いのか?」
その理由には、医療機関同士の役割分担を明確にし、医療資源を適切に使うための選定療養費という仕組みが関係していました。
介護の現場では、利用者さんの通院に関わったり、ご家族から医療費について相談を受けることもあります。
そんなときにこの制度を知っていれば、「紹介状がないと自己負担が増える場合があるんですよ」と一言伝えることができます。
ちょっとした声かけや事前確認が、ご家族の負担軽減やトラブル防止につながることも。
医療と介護の橋渡し役として、こうした知識を持っておくことは、わたしたちの専門性を高めるうえでもとても大切です。
選定療養費のしくみを理解し、これからの支援にぜひ役立ててみてください。