介護の現場では、日々さまざまなルールに基づいて業務が進められています。
食事の時間、起床のタイミング、排泄や入浴のスケジュール…。
これらのルールは、利用者の生活リズムを整えたり、限られた人員で業務を回すために必要なものです。
ですが、「ルールを守ること」だけが仕事の目的になってしまってはいけないと、わたしは日々感じています。
本当に大切なのは、「なぜそのルールがあるのか」を理解し、状況に応じて柔軟に対応することではないでしょうか?
takuma
生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)
・Xにほぼ毎日投稿しています。
・職業情報サイトへ生活相談員に関する記事提供実績あります。その他介護情報サイトへ記事提供実績もあり。
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ある朝の出来事から考える
ある施設での一コマをご紹介します。
施設では朝食の時間が「午前7時」と決められていました。
ある日、入居者のGさんが寝不足の様子で、「もう少し寝ていたいから朝ごはんは9時にしてほしい」と介護職員のHさんにお願いしました。
このとき、あなたがHさんの立場だったらどう対応しますか?
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「ルールですので、7時に食べてください」と伝える?
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「わかりました。9時に伺います」と受け入れる?
ルールの「意味」を考えてみる
そもそも、なぜ朝食は7時と決められているのでしょうか?
考えられる理由として以下のようなものが挙げられます。
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規則正しい生活を維持するため
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職員が効率的に業務をこなすため
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食事提供の時間を統一し、混乱を防ぐため
たしかに、全員がバラバラの時間に朝食を希望すれば現場は大混乱です。
ですが、「Gさんひとりだけ」「今日だけ」という状況であれば、柔軟に対応できる余地があるのではないでしょうか?
特別対応は「わがまま」ではない
「Gさんだけ特別扱いしたら他の入居者に示しがつかない」
「今後ずっと9時がいいと言われたらどうするのか?」
こうした声もあるかもしれません。
ですが、対応の原則はとてもシンプルです。
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他の方にも同様の要望があれば、同じように対応する
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今後も希望が続くなら、改めて話し合いの場を設ける
つまり、「そのときどきで考えればよい」のです。
頭ごなしにルールを押しつけるのではなく、相手の状況に目を向ける姿勢が大切です。
「ルールを守る」ではなく「ルールを活かす」
もちろん、すべてのルールを自由に変えていいわけではありません。
なかには絶対に守らなければならないルールもあります。
ですが、ルールの背景や目的を理解していると、いざというときに適切な判断ができます。
「そもそもこのルールは何のためにあるのか?」という問いを持つことが、より良い支援につながります。
そして、現状にそぐわないルールがあるなら、見直しや改善を提案することも必要です。
「ただ守るだけ」でなく、「現場に合った形にルールを進化させていく」
そんな柔軟な発想が、利用者の満足度を高め、職員のやりがいにもつながるはずです。
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おわりに
介護の仕事は「人と関わる仕事」です。
マニュアルやルールはあっても、その人その人に合わせた対応が求められます。
ルールを大切にすることは当然ですが、ルールの「本来の目的」を理解して動ける人こそが、信頼される支援者だと思います。
ときには「疑う目」も持ちながら、利用者の声にしっかりと耳を傾ける。
そんな支援者がひとりでも多く増えていくことを、現場で働く者として願っています。