介護の仕事をしていると、利用者やご家族からの「ありがとう」という言葉に救われたり、やりがいを感じる瞬間が多々あります。
ですがその一方で、「ありがとう」という感謝の言葉ばかりを求めすぎると、大切なものが見えなくなってしまうこともあるのです。今回は、「ありがとう」に執着するリスクと、たとえ相手から感謝されなくても大切にしたい「自分自身の動機づけ」について考えてみます。
takuma
生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)
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「ありがとう」に執着すると見失うもの
「ありがとう」と言われることで得られる喜びは、介護従事者としての大きなモチベーションになります。しかし、それだけに頼りすぎると、次のような落とし穴にはまることがあります。
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感謝できない利用者を無意識に避けてしまう
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支援の本来の目的が「感謝されること」になってしまう
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「ありがとう」がないと自分の価値を感じにくくなる
本来、介護の仕事は感謝されるためにするものではなく、誰かの生活や人生を支えるために行うものです。「ありがとう」=評価、という図式に自分自身を縛ってしまうと、利用者への接し方や、自分自身の働き方も歪んでしまうことがあります。
「ありがとう」は外発的動機づけ
「ありがとう」という言葉は、「外発的動機づけ」つまり自分の外側から与えられる報酬や評価です。
もちろん、人から認められること、感謝されることは嬉しいですし、それが原動力になる場面も多くあります。ですが、外発的動機づけだけに頼ってしまうと、感謝されないときに「自分には価値がない」「頑張りが認められない」と感じてしまいやすくなります。
介護の仕事で大切にしたい“内発的動機づけ”
「ありがとう」がもらえない日や、感謝されにくい利用者さんの支援にあたるとき、もうひとつ大事なのが自分自身の「内発的動機づけ」です。
内発的動機づけとは、「誰かの役に立ちたい」「支援そのものが好き」「目の前の人の笑顔を見たい」「成長したい」といった自分の内側から生まれるやりがいのことです。
たとえば
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「この人が今日も安心して過ごせてよかった」
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「小さな変化に気づけた自分を褒めたい」
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「支援を通じて自分も少し成長できた気がする」
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「専門職として自分らしい仕事ができた」
こうした気持ちは、誰かに評価されなくても、自分で自分の仕事を認めてあげられる原動力になります。
内発的動機づけがあると、「ありがとう」がもらえないときでも、心が折れにくくなります。
相手に感謝されなくても大切にしたいこと
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相手の背景や気持ちを想像する
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感謝されるためでなく、利用者のためにできることを考える
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小さな成長や変化を自分で認めてあげる
外発的な動機(「ありがとう」と言われること)と内発的な動機(自分のやりがいや成長を感じること)の両方をバランスよく持つことで、介護の仕事はもっと続けやすく、前向きなものになります。
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まとめ
介護の仕事で「ありがとう」をもらうことは、間違いなく励みになります。
ですが、それだけを求めすぎてしまうと、本当に大切なことが見えなくなるかもしれません。
「ありがとう」という外からの評価(外発的動機づけ)と、自分自身の「やりがい」や「成長」(内発的動機づけ)。この両方を大切にしながら、支援の本質を見失わずに働き続けたいものです。
たとえ感謝されない日が続いても、あなたの仕事には意味があります。
「ありがとう」がなくても、自分の内側から湧き上がるやりがいや誇りを大切に、今日も支援者として歩んでいきましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。