「ビジネスケアラー」という言葉をご存じでしょうか?
これは、仕事をしながら家族の介護も担っている人たちを指す言葉です。
高齢化が進む中、こうした“働く介護者”は年々増えており、今やどの家庭にも起こり得る身近な問題となっています。
わたしが働くデイサービスでも、利用者のご家族から「介護と仕事の両立が本当に大変で…」という声を聞く機会が増えました。
中には、「親の体調が悪くなるたびに会社を休むので、クビになりそう」と打ち明けてくれた方もいます。
介護の大変さは、本人だけでなく、支える家族の暮らしや働き方にも大きな影響を与えているのです。
この記事では、デイサービスの現場から見えるビジネスケアラーの苦悩と、これからの支援のあり方について考えてみたいと思います。
takuma
生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)
・Xにほぼ毎日投稿しています。
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働きながら両親を介護する家族の現実
たとえば、うちのデイサービスを利用している方のご家族の中にも、平日は会社勤めをしながらご両親の介護を続けている方がいます。
「平日は毎日デイサービスを利用し、休日は自分が介護」これは多くのご家族が直面している現実です。
その家族の方は、「仕事を休むことが多すぎて、会社をクビになりそうで怖い」と悩みを打ち明けてくれました。利用者さんが体調を崩したり、急なトラブルが起こるたびに会社を早退したり休んだりしなければならず、そのたびに職場で肩身の狭い思いをしているとのことです。
なぜ「ビジネスケアラー」問題は深刻なのか
介護をしながら働くことは、想像以上に大きなストレスを伴います。
・介護と仕事、どちらにも手を抜けないプレッシャー
・突発的な体調不良や介護の手間に振り回される日々
・同僚や上司への申し訳なさ、理解されない孤独感
こうしたストレスが積み重なると、心身ともに疲弊し、仕事も介護も立ち行かなくなってしまう人も少なくありません。最悪の場合、仕事を辞めざるを得なくなり、経済的にも大きな不安を抱えることになります。
デイサービスが果たす役割
デイサービスは、そんなビジネスケアラーを支える重要な存在です。
日中、ご本人を預かることで家族が仕事に集中できる時間を確保できます。また、急な体調変化や介護の負担が大きい場合、介護のプロがすぐにサポートできる環境が整っていることも強みです。
しかし、それでも完全に負担をゼロにできるわけではありません。夜間や休日はどうしても家族が担わなければならず、「デイサービスだけでは限界がある」と感じているご家族も多いのが実情です。
ビジネスケアラーを支援するために必要なこと
これからの時代、仕事をしながら介護をしている人=ビジネスケアラーはますます増えていくといわれています。
そんな中で、わたしたちにできる支え方について、現場から見えてくるポイントを3つご紹介します。
1. 会社や社会の理解がもっと必要
まず大切なのは、「介護しながら働いている人がいる」ということを、もっと多くの人に知ってもらうことです。
職場の上司や同僚がその大変さを理解していないと、介護のために仕事を休んだり早退したりするたびに、肩身の狭い思いをしてしまいます。
介護休暇や在宅勤務など、働き方に柔軟性をもたせる制度を企業側が整えることも、これからますます重要になってくるでしょう。
2. 気軽に相談できる場所が必要
ビジネスケアラーの方は、「こんなことで相談していいのかな…」と遠慮してしまいがちです。
だからこそ、もっと気軽に悩みを話せる場所や、必要な情報をわかりやすく伝えてくれる人の存在が大切です。
たとえば、ケアマネジャーやデイサービス、地域包括支援センターでは、家族の不安や疑問にサポートすることができます。
「ひとりでがんばりすぎないでいいんですよ」と伝えるだけでも、気持ちが楽になることがあります。
3. サービスの使い方を工夫して、負担を分け合う
デイサービスだけでなく、ショートステイや訪問介護など、さまざまな介護サービスを上手に組み合わせることで、家族の負担を減らすことができます。
特に「休みの日も介護で休めない…」というご家族には、土日や夜間の支援も視野に入れることが必要です。
また最近では、オンラインで介護相談ができるサービスや、緊急時に駆けつけてくれる民間サービスも登場しています。
その人の状況に合った方法を一緒に考えていくことが大切です。
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最後に
ビジネスケアラーの問題は、社会全体で考えていかなければなりません。
デイサービス現場で働くわたしたちも、家族の気持ちや苦悩にしっかり寄り添い、できる支援を積み重ねていきたいと思っています。
もし今、仕事と介護の両立に悩んでいる方がいたら、「ひとりで頑張りすぎないでください」と伝えたいです。
支援の輪が少しでも広がり、家族も本人も笑顔で過ごせる毎日になるよう、現場からも発信を続けていきます。