高齢者の転倒は、骨折や頭部外傷など重大なケガにつながるだけでなく、寝たきりや認知症の進行といった生活の質の低下にも直結します。現場で多くの高齢者と接していると、転倒がその方やご家族に与える影響の大きさを改めて実感します。だからこそ、日常生活の中でできるちょっとした工夫がとても大切です。
今回は、介護の現場でも実際に取り組んでいる「高齢者の転倒予防3つのコツ」をわかりやすくご紹介します。ご本人だけでなく、ご家族や支援者の方もぜひ意識してみてください。
takuma
生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)
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かかとのない靴を避ける
高齢者にとって靴選びはとても重要です。スリッパやサンダルなど、かかとのない靴は足元が不安定になりやすく、つまずきやすくなります。特に自宅内では「脱ぎ履きがラクだから」とスリッパを愛用する方が多いですが、歩いているうちに脱げてしまい、バランスを崩して転倒するケースが多発しています。
また、かかとがある靴を履いていても、かかとを踏んで履いてしまうと結局同じように危険です。つまずくだけでなく、靴がずれて体勢を崩しやすくなります。
安全のためには、かかとがしっかり固定される靴を選び、正しく履くことが大切です。 できれば滑りにくい靴底のものを選ぶと、より安心して歩くことができます。最近は高齢者向けの室内履きやリハビリシューズも豊富に販売されているので、こうしたアイテムも上手に活用しましょう。
床に物を置かない
床に物が置いてあるだけで、転倒のリスクは格段に高まります。高齢になると、足の動きが小さくなったり、すり足で歩くことが多くなります。そのため、カーペットのめくれや電気コード、新聞や雑誌、段差など、普段は気にならない小さな障害物につまずいてしまうのです。
特に夜間や暗い場所では、さらに見えにくくなり危険度が増します。動線となる廊下や寝室、トイレまでの道などは、できるだけ物を置かず、床をスッキリ保つことが大切です。定期的に片付けを行い、危険な場所を家族でチェックし合う習慣をつけましょう。
さらに、カーペットの段差や敷居なども要注意です。できるだけフラットな環境に整えたり、必要であれば段差解消のグッズや滑り止めシートを利用するのも有効です。
また、つまずきやすい電気コードは、コードカバーや固定用テープを使って整理することをおすすめします。
内服薬の見直しをする
あまり意識されないかもしれませんが、日常的に服用している薬にも転倒リスクが潜んでいます。高齢になると、複数の薬を服用している方も多く、その中には副作用として「めまい」「ふらつき」「眠気」を引き起こすものがあります。特に睡眠導入剤や安定剤、血圧の薬などは注意が必要です。
薬の影響で足元がふらついたり、注意力が落ちることで、思わぬ転倒につながることも。
「最近ふらつきやすい」「なんとなく眠い」など気になる症状があれば、まずは主治医や薬剤師に相談しましょう。
薬の見直しや飲み合わせの調整、タイミングの変更などで、リスクを下げられる場合もあります。
また、受診時には「転倒しやすくなった気がする」「薬を飲むとぼーっとする」など、日常の変化を積極的に伝えることが大切です。服薬管理が難しい方は、ご家族や訪問看護師、薬剤師など周囲の協力も得ながら、安心して薬を使える環境を整えましょう。
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まとめ
高齢者の転倒予防は、「難しいこと」「専門的なこと」ばかりではありません。
むしろ、靴選びや部屋の整理、服薬のチェックなど、今日から始められる小さな工夫で、大きな事故を未然に防ぐことができます。
ご本人が意識するのはもちろんですが、家族や介護者が一緒に環境を見直したり、声をかけ合うことで、より安全な毎日を送ることができます。「転ばぬ先の杖」として、ぜひこれらのコツを生活の中に取り入れてみてください。
もし具体的な事例やお困りごとがあれば、いつでもご相談ください。皆さんが安心して暮らせるお手伝いができれば幸いです。