2019年10月より、「介護職員等特定処遇改善加算」が実施されます。
この「介護職員等特定処遇改善加算(以下、特定処遇改善加算)」では、
「経験・技能のある介護職員の給与を年収440万円は確保しよう」
という、勤続10年以上の介護福祉士に対する給与の目安が提示されています。
ここではこの「440万円」という金額について、深掘りしていきたいと思います。
年収440万円って数字はどこから?
この「年収440万円」っていう数字は、いったい何を根拠にした数字なのでしょうか?
実はこの440万円という数字は、
「役職者を除く全産業平均の賃金」
であるとのことです。
「役職者を除く」とありますから、単なる全産業の平均額というわけではなく、要するに「全国の平社員の給与の平均値」ということですね。
「他産業と遜色ない賃金水準を目指す」ために、国がその具体的な水準として勤続10年以上の介護福祉士に提示してきた金額が、この「440万円」という数字なのです。
裏付けとしては、国税庁による「民間給与実態調査」で、平成29年度の給与所得者のの平均給与が「432万円」というデータがありますので、そのあたりのデータから持ってきた数字だと思われます。
公務員の平均給与は686万円ですが?
そういえば公務員の給与も、民間に準じてるんじゃないの?
公務員の給与は、人事院の給与勧告により決められています。
以下、人事院のホームページより抜粋です。
人事院の給与勧告は、労働基本権制約の代償措置として、職員に対し、社会一般の情勢に適応した適正な給与を確保する機能を有するものであり、国家公務員の給与水準を民間企業従業員の給与水準と均衡させること(民間準拠)を基本に勧告を行っています。
つまり、
公務員の給与 = 民間企業従業員の給与水準
ということになりますね。
そして、
人事院による「平成30年度国家公務員給与等実態調査」の結果によりますと、国家公務員の平均年収は
686万円
です。
…
全産業平均の賃金=440万円
民間企業従業員の給与水準=686万円
う~ん…
同じものを基準にしているはずなのに、この差は何だろう…
なんだかモヤモヤしますね…
さすが国家権力
素晴らしき二枚舌
特定処遇改善加算で
「リーダー級の介護職員は年収を全産業平均水準である440万円にして、他産業と遜色なくしよう」
って言っていますが
あれ、これって金額間違ってませんか?
「民間企業従業員の給与水準と均衡させ」
ているはずの、公務員の平均年収は686万円ですよw— takuma@生活相談員 (@takuma3104) 2019年9月8日
介護職員の平均年収は360万円
「平成30年度介護従事者処遇改善等調査結果」のデータによりますと、介護職員の平均給与月額は300,970円となっています。
年収にすると約360万円になります。
あくまでも国の調査によると、です。
民間の調査によってはもっと低い結果も出ていますが、ここでは介護職員の平均年収360万円としておきます。
360万円から440万円へベースアップしたら、年間80万円の給与アップで確かに給与増えた感は得られます。
ですが、介護職員の平均年収がそもそも低すぎる!
平均年収360万円て…
同じ税金で飯食っている公務員は年収686万円ももらっているのに、
介護職員は今回の特定処遇改善加算で年収が80万円増えたとしても、それでやっと世間の平社員の平均値です。
今後の介護業界の冷遇を確定させる加算
国は今回の特定処遇改善加算の説明の中で、
「リーダー級の介護職員について他産業と遜色ない賃金水準を実現」
とうたっています。
ということは、裏を返せば
「リーダー級にならないと他産業の賃金水準と肩を並べられない」
ということであり
「リーダー級の職員以外は他産業の水準以下が今後も確定」
ということにに他ならないわけです。
特定処遇改善加算で
ベテラン介護福祉士の年収を
「役職者を除く全産業平均年収の440万円まで引き上げたい」
って国は言ってるけど
あえて
「役職者を除く」
って入れてるのが
つまりは
「いくら頑張っても所詮世間のヒラ社員並みの給与だからね」
って国から言われてるようにしか思えなくなってきた…— takuma@生活相談員 (@takuma3104) 2019年9月13日
公務員の給与を引き合いに出しましたが、
いっそ、
「介護職員は全員公務員!」
くらいやらないと、処遇改善加算程度の付け焼刃では、抜本的な改善になりませんね。
介護職員も公務員も、同じ「税金」から給与を貰っているのにね…