2025年6月から「ケアプランデータ連携システム」の無料キャンペーンがスタートしました。厚生労働省が推進し、全国の介護現場で導入が期待されているこのシステム。しかし、実際の現場ではどのように受け止められているのでしょうか?今回は、現場目線でシステムの仕組みやメリット・課題、そして導入状況について考察してみます。
takuma
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ケアプランデータ連携システムとは?
ケアプランデータ連携システムは、居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)と介護サービス事業所の間で毎月やり取りされるケアプラン(サービス提供票など)を、オンラインで安全かつ効率的に送受信できる仕組みです。公益社団法人国民健康保険中央会が構築・運用し、厚生労働省主導で普及が進められています。
無料キャンペーンが始まった背景
ケアプランデータ連携システムは、もともと有料で年間21,000円のライセンス料が必要でした。しかし、導入事業所は全国的にも伸び悩み、2023年11月時点で利用率はわずか5%程度という状況。「普及しない」という声が現場から多く上がっていました。
そこで今回、2025年6月から1年間限定で「無料キャンペーン」が実施されることになりました。「これを機に導入を」と国は後押ししていますが、現場ではどのような反応なのでしょうか。
現場の反応と普及が進まない理由
1. 地域でほとんど話題になっていない
実際わたしの働く地域では、この「無料キャンペーン」が始まったという話をほとんど耳にしません。データ上でも、地域内の導入事業所はごくわずか。「様子見」と考えている事業所が大半です。
2. 相手事業所も導入しないと意味がない
このシステムは、自分の事業所だけが導入しても意味がありません。データ連携の相手方(居宅介護支援事業所やサービス事業所)も導入していなければ、結局これまで通り紙やFAXに頼らざるを得ない状況です。
3. 導入コストや手間の壁
キャンペーン中は無料でも、通常は年間21,000円のライセンス料がかかります。さらに、電子証明書(3年間で13,200円)や介護ソフトの利用料なども必要。介護業界にはパソコン操作に不慣れな職員も多いため、「面倒」「難しそう」という声もあります。
システムのメリットと本当の効果
業務効率化
紙やFAXでのやり取りが減り、記載ミス・転記ミスも少なくなるのは大きなメリットです。国の試算では、業務時間が約1/3に削減、コストも1事業所あたり年間約81万円削減できるとされています。
ケアの質向上
事務作業の手間が減る分、利用者支援により多くの時間を割くことができるのもポイントです。
それでも導入が進まない現場の本音
どんなに便利なシステムでも、「使う人・現場が納得できる仕組み」でなければ普及しません。今はまだ、「他の事業所の動きを見てから」という事業所が多いのが実態です。
「無料キャンペーン」は確かに導入のハードルを下げますが、普及のためには「みんなが使っている」という安心感や、システム自体の使いやすさが欠かせません。また、「今さら無料にするなんて」「最初から無料にしていれば、もっと広がったのでは?」と感じている方も多いのではないでしょうか。現場の声をどこまで取り入れるかが、これからの普及のカギとなる気がします。
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まとめ
2025年6月から始まったケアプランデータ連携システムの無料キャンペーンですが、現場ではまだ「様子見」というところが多いのが実情ではないでしょうか。導入を検討している方は、メリット・デメリットをよく見極め、周囲の動向もチェックしながら判断していくのが現実的かもしれません。