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支援者が知っておきたいコントロール欲求の正体と介護現場での注意点

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支援の現場で日々利用者やご家族と向き合っていると、「どうしたらもっと良い支援ができるだろう」「相手にとって最善の選択を後押ししたい」と考えることが多いものです。しかし、その一方で「つい自分の考えを押し付けてしまいそうになる」「相手の言動にモヤモヤしてしまう」と感じた経験はありませんか?

こうした心の揺れ動きの背景には、人間誰しもが持っている「コントロール欲求」が深く関わっています。
コントロール欲求は、誰もが持つ「自分の思い通りにしたい」という自然な気持ちですが、うまく付き合わないと支援の質や人間関係に思わぬ影響を及ぼすことがあります。

この記事では、「コントロール欲求とは何か?」を整理したうえで、支援者として現場で気をつけたいポイントや、より良い支援のためのヒントを考えていきます。

 
この記事を書いた人

takuma 生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員) ・Xにほぼ毎日投稿しています。 ・職業情報サイトへ生活相談員に関する記事提供実績あります。その他介護情報サイトへ記事提供実績もあり。 ・kindle出版で『 対人援助一年目の教科書: 現役のプロが書いた実践で役立つスキルと心構え』発売しています。 詳しい自己紹介はこちら

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「生活相談員ラボ」では、「生活相談員×学び」をコンセプトに、介護・福祉に関する情報発信をしています。

 
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コントロール欲求とは?

コントロール欲求?

コントロール欲求とは、「自分の思い通りに物事を動かしたい」「状況や他者を自分の意図に沿って変えたい」と感じる、人間の根源的な欲求のひとつです。
食欲・睡眠欲・性欲と並ぶほど強い心理的欲求と言われ、実際にわたしたちが日々感じている「思い通りにいかないもどかしさ」や「自分で決められる心地よさ」は、まさにこのコントロール欲求に深く関わっています。

コントロール欲求は、自分の感情や行動をコントロールしたいという「内向き」のものと、他人や環境に影響を及ぼしたいという「外向き」の側面があります。
たとえば、「今日は早く寝よう」「怒らずに話そう」というのもコントロール欲求ですし、「子どもにはこうしてほしい」「職場の同僚にはもっと動いてほしい」といった他者への働きかけも同じです。

コントロール欲求の特徴

  • 強い欲求であることが多い
     食欲や睡眠欲などと同じく、コントロールしたいという欲求は強く働きやすいものです。

  • 内向き・外向きの両面がある
     自分の感情や行動をコントロールしたい場合もあれば、他者や状況を思い通りに動かしたい場合もあります。

  • 関係性のトラブルに直結しやすい
     特に支援の現場では、「お互いのコントロール欲求」がぶつかることで、対立やストレスを生みやすくなります。

支援の現場で表れるコントロール欲求

支援者として関わっていると、コントロール欲求はさまざまな場面で顔を出します。
「利用者さんにはこうしてもらったほうが安全」「ご家族にももっと協力してほしい」「現場がスムーズに回るようにスタッフを動かしたい」
こういった想いは、一見すると“善意”や“責任感”に基づくものですが、実は無意識のうちに「自分の思い通りに進めたい」という欲求が隠れていることがあります。

支援者自身だけでなく、利用者さんやご家族もコントロール欲求を持っています。
「このサービスはこう使いたい」「自分のペースを守りたい」「家族にはこうしてほしい」
それぞれが“自分なりの正解”や“譲れない思い”を持っています。

コントロール欲求の効用と注意点

コントロール欲求が満たされることで、人は自信や自己効力感を感じ、モチベーションが高まります。
「自分で選んでいる」「自分の意志で行動できている」という実感は、生活の中での安心感や充実感にもつながります。
この“コントロールできている感覚(コントロール感)”は、自己実現や成長のための大きな原動力になります。

一方で、コントロール欲求が行き過ぎると、さまざまな問題も生じます。
たとえば、
・他者に対して必要以上に指示を出してしまう
・細かな部分まで管理しようとする
・相手の行動や選択を逐一チェックし、監視のようになってしまう
といったケースが支援現場でも見られます。

善意のつもりでも、これでは相手の自由や自立を奪い、信頼関係が崩れる原因になりかねません。
また、本人の“自分で決めたい”という気持ちや意欲をそいでしまい、「やらされ感」や無力感につながることもあります。

さらに、コントロール欲求を逆に抑え込みすぎると、「自分の意見が言えない」「流されやすくなる」といったストレスや不満を抱えることもあります。
つまり、“コントロールしたい”気持ちも、“されたくない”気持ちも、どちらも大切に扱い、バランスよく関わることが重要です。

支援者が気をつけたい3つのポイント

1. 「相手の人生は相手のもの」と心得る

どれだけ善意であっても、相手の選択や行動に“最後の決定権”があることを忘れないようにしたいものです。
アドバイスや提案はできても、決めるのはあくまで本人。
「わたしの意見はこうだけど、あなたはどう思いますか?」というスタンスを意識することで、相手のコントロール欲求も尊重できます。

2. コントロールしたい気持ちに気付く

支援をしていると「もっとこうしてほしい」「この方が絶対いい」と思う場面も多いですが、その気持ちにまず自分自身で気づくことが大切です。
「今、相手のためというより、自分が安心したいだけなのかもしれない」と一歩引いて考えてみる。
その“気づき”が、相手との距離感を適切に保つ第一歩になります。

3. 相手のコントロール欲求にも目を向ける

利用者さんやご家族が強いこだわりや要求を示すとき、それは「自分で決めたい」「自分の生活を自分の手で守りたい」というコントロール欲求の表れかもしれません。
その背景にある思いや不安に目を向け、話を聴くことで、無理に“コントロールし合う”関係から、一緒に考える「協働」の関係に近づけます。

コントロール欲求との健全なつきあい方

わたしたちは支援者である前に、ひとりの人間です。
コントロール欲求を持つのは自然なことですが、他者の自由や自立を奪わないこと、また、自分自身の欲求を抑えすぎてストレスをためないこと、どちらも大切です。

特に支援の現場では、「導くこと」と「見守ること」のバランスが求められます。
ときには手放す勇気も必要ですが、相手が自分らしく生きられるよう、適切な距離感を意識して関わっていきたいものです。

 
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まとめ

コントロール欲求は誰にでもある、自然な気持ちです。
介護現場では、利用者さん・支援者ともにこの欲求が絡み合うことで、思わぬトラブルやストレスにつながることも。

大切なのは、「自分も相手もコントロール欲求がある」と知ったうえで、一方的に押し付けない・押し付けられない関係性をつくること。

「正解」にとらわれすぎず、「その人らしさ」を尊重しながら関わることで、信頼関係が深まり、よりよい支援につながります。