介護施設で働く生活相談員にとって、「傾聴」は日々の業務のなかで欠かせないスキルです。
ご利用者やご家族の本音や気持ちを引き出し、信頼関係を築くためには、漫然と話を“聞く”だけではなく、しっかりと“聴く”姿勢が求められます。
実際、傾聴を意識しながら面談や相談対応をしていると、相手の表情や声色が和らいだり、ふと本音を話してくれたりと、「聴く力」の大切さを実感する場面は多いものです。
今回は、わたし自身が現場で傾聴を実践するなかで、特に大切にしている3つのポイントを紹介します。
takuma
生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)
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自分の意見を言わない
傾聴で最も大切なのは、「相手の話にしっかりと耳を傾け、相手のペースを尊重すること」ではないでしょうか。
つい、自分の意見や考えを言いたくなることもありますが、傾聴の場での主役は「相手」。
たとえ自分なりのアドバイスや考えが頭に浮かんでも、まずはぐっとこらえて「今、相手がどう感じているのか」「何を伝えたいのか」に集中します。
もちろん、相手から意見を求められたときは、素直に自分の考えを伝えてもいいと思います。ただし、その際も「わたしはこう思うけど、どう感じますか?」など、あくまで相手が主体であることを忘れずに。
生活相談員は、まず相手の気持ちや考えを「受け止める」存在であることを意識しています。
否定しない
「いや、そうじゃなくて…」「でも、それは…」といった言葉は、たとえ悪気がなくても相手の話を否定してしまうことになります。
否定されたと感じると、人は本音を話しづらくなったり、「この人にはもう相談したくない」と距離を置いてしまいがちです。
特に、ご利用者やご家族が悩みや不安を話してくれているときは、否定することなく「そう感じるんですね」「大変でしたね」と、まずはその気持ちをそのまま受け止めるように心がけてみましょう。
自分自身、最初のうちはつい「いや、でも…」と返してしまいそうになることがありましたが、相手の立場になって考えると、どんな気持ちにも「正しい・正しくない」はありません。
「受け止めること」と「同意すること」はイコールではありません。
ただ、「あなたの感じたこと、話してくれたことを大事に受け止めていますよ」というメッセージが伝わることで、相手との信頼関係が深まると感じます。
適度に質問する
傾聴というと「ひたすら黙って聞く」イメージがあるかもしれませんが、実際には適度に質問を挟むことで、相手は「自分に関心を持ってもらえている」と感じ、より話しやすくなります。
たとえば、「それはいつごろから感じていますか?」「そのときは、どんな気持ちでしたか?」といった、相手の気持ちや状況をさらに深く知るための問いかけです。
ただし、ここで注意したいのが“誘導しすぎないこと”。
質問が多すぎたり、答えを急かすような聞き方をすると、相手は「本当は自分の考えを言いたいのに、誘導されている」と感じてしまい、自由な会話がしづらくなってしまいます。
「質問すること」と「聴くこと」のバランスを意識しつつ、相手の表情や話しぶりに合わせてペースを調整する。
これが簡単そうでいて、実は一番難しいポイントかもしれません。
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まとめ
傾聴には技術的なコツもありますが、一番大切なのは「この人の話をしっかり受け止めたい」「少しでも気持ちが軽くなればいいな」という、相談員としての「姿勢」だと感じています。
生活相談員は、相談に来る人の「助けてほしい」「聞いてほしい」という気持ちを受け止め、安心して本音を話せる存在でありたいものです。
そのためにも、
-
自分の意見を言いすぎない
-
否定しない
-
適度に質問する
この3つのポイントを日々心がけ、より良い信頼関係を築いていきたいと思います。
傾聴は一朝一夕で身につくものではありません。ですが、意識して続けていくことで、少しずつ本当の気持ちを聴く力がついていくはずです。
同じ生活相談員として、日々の現場で一緒にスキルアップを目指していきましょう。