「ベッドから転落して動けない…助けて」
ある日、同僚のケアマネジャーが、担当利用者のご家族からそんな緊迫した電話連絡を受けました。
本来であれば、他サービスにつなぐのがケアマネの役割ですが、利用できるサービスがなく、調整がつかない状態。
結局、やむを得ずケアマネ自身が現地へ駆けつけることに。
「これは本来の業務を超えているのでは?」と思いつつも、現場ではそうせざるを得ない——そんなリアルな葛藤を目の当たりにしました。
takuma
生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)
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居宅介護支援のケアマネジャーの業務分類
厚生労働省はケアマネジャーの業務範囲について、より明確に整理する動きを見せています。
2024年に実施された「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」で厚労省は、居宅介護支援事業所のケアマネジャーの業務を、以下の4つに分類しました。
- 法定業務
- 保険外サービスとして対応し得る業務
- 他機関につなぐべき業務
- 対応困難な業務
| 業務の類型 | 主な事例 | 対応例 |
|---|---|---|
| ① 法定業務 | 利用者の相談対応、関係機関との連絡調整、ケアプラン作成 | ― |
| ② 保険外サービスで対応し得る業務 | 郵便の発送・受取、書類作成・発送、代筆代読、救急搬送の同乗など 部屋の片付け、ゴミ出し、買い物など家事支援 福祉サービスの利用や利用料の手続き、預貯金の引出や振込、財産管理 |
保険外サービスとしてケアマネが対応、他の地域資源につないで対応 自費サービス、NPO、ボランティア団体等 市町村、包括、社協と連携 |
| ③ 他機関につなぐべき業務 | 入院入所中の着替えや必需品の関連、 徘徊時の捜索、 死後事務 |
病院や施設と連携、社協や知人の協力、自費サービス、サポート事業者等 家族、友人知人、近隣住民などに協力を仰ぎ、その後は警察等へ。行政、包括、民生委員と連携。徘徊感知機器や民間のGPS 高齢者終身サポート事業者等 |
| ④ 対応困難な業務 | 医療同意 | ― |
現実は「制度どおりにいかない」ことも多い
制度やガイドライン上は明確な区分がされていても、現場ではどうしても「割り切れない」ケースが起こります。
-
緊急時に誰も動ける人がいない
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利用者や家族がパニック状態で、今すぐ支援が必要
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他に頼れる手段がない
そんなとき、制度を理由に「できません」と言い切れないのが現実です。
今回のようなケースも、まさにその象徴だと思います。
境界線の引き方は、現場ごとの永遠のテーマ
「何でも屋」になってはいけない。
そう頭ではわかっていても、「困っている人が目の前にいる」という状況で、業務範囲だけを盾に行動できる人は多くないはずです。
一方で、全てを“善意”や“自己犠牲”で補ってしまうと、ケアマネ自身の負担増・業務の拡大が止まりません。
「どこまでが業務か」「どこから先は他職種へつなぐべきか」
この境界線の引き方は、現場ごと、ケースごとに揺れ動く永遠のテーマだと感じます。
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まとめ
ケアマネの業務範囲は、厚労省によって整理が進んでいます。
ですが、制度だけではカバーしきれない“現場のリアル”があるのも事実です。
誰かが困っているとき、「本来業務かどうか」だけで割り切れない。支援者として、現場の中でどんな判断を下すのか、日々考えさせられます。
ケアマネの仕事ってどこまで?
その問いに明確な正解はありませんが、現場で起きているギャップや悩みを共有し、今後の働き方につなげていきたいと感じるエピソードでした。

