生活相談員として介護現場で働いていると、「えっ、これも自分の仕事?」と感じる場面が何度も訪れます。その中でも、介助ミスによる利用者のケガやトラブルが起きたとき、家族への謝罪や説明対応を任されるのは、まさに生活相談員の“宿命”と言えるでしょう。
takuma
生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)
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介助ミスは、どの現場でも起こりうる
どんなに気をつけていても、介護の現場ではヒューマンエラーは避けられません。利用者の立ち上がり介助の際に手が滑った、移乗のときにバランスを崩した…そんなちょっとしたミスが、大きな事故やケガに繋がることもあります。
現場の介護職員は真剣に仕事に取り組んでいても、100%完璧にはできません。とはいえ、利用者やご家族にとっては「ミスはミス」。特に家族の立場になれば、不安や怒りを感じるのも当然のことです。
謝罪と説明は、生活相談員の「お約束」
では、そうしたミスが発生した場合、誰が矢面に立つのか。
現場の職員も一緒に対応することはありますが、最終的に「ご家族への謝罪・説明」の大役は生活相談員が担うことがほとんどです。
正直、「なんで自分が他人のミスまで謝らなきゃいけないんだ…」と思うこともしばしば。
ですが、生活相談員という立場は「現場とご家族をつなぐパイプ役」であり、「施設全体の顔」として見られている以上、逃げることはできません。
残業での謝罪対応…これも“あるある”です
たとえばある日のこと。
介護職員が移乗介助中にミスをして、利用者の方が転倒し、ケガをされてしまいました。
すぐに看護師が応急処置をしましたが、どうしてもご家族には説明と謝罪が必要。
気づけば、自分の定時はとっくに過ぎているけれど、ご家族の到着を待って事情説明を行うことになりました。
ご家族は最初こそ不安や戸惑いの表情を見せていましたが、誠心誠意説明し、今後の対応についても丁寧にお伝えすることで、「大事に至らなくてよかったです」と言っていただけました。
正直、ホッとしました。
でも心の中では、「なぜ自分が…」というモヤモヤも、やっぱり残ります。
他人の尻拭いをするのは嫌…でも、それも仕事
生活相談員になりたての頃は、こうした“尻拭い”の連続に、正直うんざりしていました。
自分のミスじゃないのに、なぜ自分が謝罪しなきゃいけないのか、と納得できずにいたこともあります。
さらに、当の介護職員は最初こそ「すみません」と謝ってきますが、定時になると悪びれもせずサッと帰って行く…そんな場面に何度も遭遇してきました。
自分は残業して家族対応をしているのに、「何だかなぁ」とやりきれない気持ちになることもあります。
でも、現場経験を重ねるうちに思うのです。
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事故やミスの対応は、誰かがやらなければいけない
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ご家族の信頼を取り戻すのは、日頃から関わっている相談員だからこそできる
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職員を守るため、施設を守るためにも、冷静かつ誠実な対応が求められる
つまり、「他人のミスでも謝る役目」こそが、生活相談員としての大きな責任であり、重要な業務であるのかもしれません。
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まとめ
生活相談員は、時に“便利屋”のような役割を担わされることも多いですが、
利用者・ご家族・職員、それぞれの気持ちを受け止め、現場の“橋渡し”をすることが求められます。
他人のミスで謝るのは理不尽に感じるかもしれません。
ですが、相談員がその場を穏便に収め、ご家族に安心していただけるなら、
それもまた、現場で働く自分たちの“誇り”に変わる瞬間だと思います。
とはいえ、頭でそう理解していても、やはり今でも悶々としながら謝罪対応にあたることはあります。それが本音です。
きっと同じように悩みながら日々働いている相談員の方も多いでしょう。
「それでもやっぱり、この仕事は大切だ」と思えるよう、今日も現場で奮闘しています。

