こんにちは、生活相談員のtakumaです。
今回は「ケアマネジャーの公正中立性」と「自法人のサービスを勧めること」に関する葛藤について、現場のリアルを交えながら考えてみたいと思います。
takuma
生活相談員(社会福祉士・公認心理師・介護支援専門員)
・Xにほぼ毎日投稿しています。
・職業情報サイトへ生活相談員に関する記事提供実績あります。その他介護情報サイトへ記事提供実績もあり。
・kindle出版で『 対人援助一年目の教科書: 現役のプロが書いた実践で役立つスキルと心構え』発売しています。
詳しい自己紹介はこちら。
「対人援助一年目の教科書」 Kindleにて好評発売中です!

対人援助一年目の教科書: 現役のプロが書いた実践で役立つスキルと心構え
自法人のサービスだからこそ自信を持って勧めたい
単独で運営されている居宅介護支援事業所に勤めているケースは少数派であり、ほとんどのケアマネジャーは医療法人、社会福祉法人、株式会社など、何らかの法人に属してケアマネジメントを行っています。
組織に所属している以上、同じ法人が運営するデイサービスやショートステイ、訪問介護などのサービスを信頼するのはある意味当たり前の感覚です。職員の質やサービスの内容、事業所の雰囲気をよく知っているからこそ、「ぜひこの方に利用してほしい」と思うこともあります。それは、組織人としては当然の感情でしょう。
しかし、ケアマネジャーという職種には“公正中立”という大前提があります。利用者本人やご家族の希望、状況、他の事業所の選択肢を公平に比較しながら提案する必要があるのです。そのため、「自法人のサービスだから」という理由だけで勧めることはNGとされています。
ケアマネジャーに求められる「公正中立」とは?
ケアマネジャーは介護保険制度の要として、利用者とサービス提供事業所との間に立つ存在です。
公正中立であるということは、以下のような姿勢が求められるということです。
-
どの事業所にも偏らず、フラットな視点で情報提供を行う
-
利用者の自己決定を第一に尊重する
-
特定のサービスを強引に勧めない
-
本人の利益にならない支援を避ける
制度上も、居宅介護支援事業所には「特定事業所集中減算」といった仕組みがあり、特定のサービス事業所に偏った紹介が続くと報酬が減らされるようになっています。つまり、ケアマネにとって“中立であること”は、モラルの問題であると同時に、制度的にも求められる責務なのです。
とはいえ…現場では「完全な中立」は難しい
そうはいっても、現実の現場では「完全な中立」は理想論にすぎないと感じる場面も多くあります。
たとえば、法人内のサービスに空きがあるとき。「うちならすぐ受け入れられるし、対応も柔軟にできる」という確信があれば、ついそちらを勧めたくなります。また、連携が取りやすいという理由から、自法人を提案したほうが結果的にスムーズに支援できると感じることもあるでしょう。
ですが、自法人のサービスであっても優先的に勧めてはならないとされています。利用者には公平に事業所を勧めなければならず、選択肢を偏らせることはケアマネジャーの職責に反するとされているのです。
その選択が利用者にとって最善であれば、結果的に問題はありません。ですが、利用者が他の選択肢を知らないまま「それでお願いします」と言ってしまう状況を生み出してしまっては、本来の「自己決定」を損なうおそれがあります。
組織人と専門職、その狭間で揺れるケアマネ
ケアマネジャーとして現場にいると、法人内の事業所を活用してほしいという「上からの圧力」や「暗黙の期待」にさらされることもあるでしょう。
ときには、「どうしてうちに繋げないんだ」と言われるような場面もあります。
誰のためにケアプランを作っているのか?
今の提案は、利用者の選択肢を狭めていないか?
本当に中立な立場に立てているか?
そんな問いを常に自分に投げかけなければならないことが、ケアマネという仕事の難しさではないでしょうか。
◆ 生活相談員の基礎知識はこちら
◆ おすすめ書籍はこちら![]()
◆ さらに深く学ぶなら
・本気で学ぶケアスタッフのための総合オンラインセミナー.『ケアラル』
◆ 介護の資格・転職なら
まとめ
「自法人のサービスだからこそ、自信を持って勧めたい」という気持ちと、「公正中立であらねばならない」という制度上の役割。
その間で揺れ動く葛藤は、多くのケアマネジャーが日々感じていることだと思います。
理想論だけでは片付けられない現実があり、組織に属して働く以上、完全な中立を貫くことの難しさも確かに存在します。
それでも、わたしたちに求められているのは、少しでも利用者にとってベストな支援を模索し続けることではないでしょうか。迷いや揺らぎを感じながらも、誠実に関わっていきたいものです。

